ドラゴンとマジック
壁沿いに走っていたが、やはりというか、あのドラゴンは夜目が効く様で、すぐに追いかけてきた。
だんだんと重々しい足音が近づいてくる。
暗闇の中ではどの程度移動したのか殆ど分からない。
それしても結構な距離を走ってきたが未だ別の壁が見えないとは、どれだけ広い空間なのだろう。
そろそろ追撃が来る頃だろうか。
とはいえこの視界の悪さでは、攻撃の種類もタイミングも分かりやしない。
僕に出来る事は逃げ続けることだけだろう。
ところが、不意に後ろから聞こえていた足音が止んだ。
僕の足音だけが響いていたが、他に何の音沙汰もないので不自然に思い足を止めた。
辺りが静まり返る。
振り返ると、遠くに仄かな灯りがあった。
恐らくはドラゴンに燃やされた松明であろう。
しかし、当のドラゴンが居ないのだ。
まるで、白昼夢でも見ていたかの様だ。
必死に逃げていた僕を嘲る様に、ドラゴンは姿を消した。
広い空間とは言え、ここはあくまで室内だ。
音も反響しやすいし、同じ部屋に居れば気配がするはずだ。
別の場所に移動したのか? あの巨体が音もなく?
まるで手品か何かだ。
いないならいないで、一安心できるのだが……。
とにかく、先に進もう。
突如消えたということは、突如現れることもあるかもしれないということだ。
再び遭遇すれば、逃げ切れる自信はない。
早いとこ次の道を見つけよう。
壁を手探りで探していたら、意外にすぐ通路が見つかった。
材質は相変わらず石の通路だが、入ってきた通路より横幅が長い。
地上に通じるかは定かではないが、同じ通路では無いのは明らかだ。
まずはこの先から見て行くとしよう。
真っ暗闇の中慎重に進んでいくと、つま先が何かに触れた。
確認すると、ここは段差になっているようだ。
何となく怪しく感じ、迂回しようとも思ったが、通路を塞ぐように段差があった。
塞ぐよう、と言っても、その高さは踝ほどしかない。
試しに乗り上げてみると、そのすぐ奥に再び段差があった。
どうやら階段らしい。
地上への道のりはどれほど長いのか分からないが、近づいて来ているのは確かだ。
視界の悪い中見つけた階段を、一歩一歩慎重に登って行った。
怠けて遅れました。