社会力高そう
「負けるかぁああーー!!」
風魔法による飛翔が最高速度に達した直後、ドラゴンと交わったのはほんの一瞬であった。
正直速すぎて、何があったかいまいち把握しきれない。
だが、剣を握るこの両手には、確かな手応えを感じた。
ドラゴンの首元の、硬い鱗を斬り裂いて、その下の肉を断ち切ったのだ。
風の勢いはそれでも残り、着地できたのは戦闘場所と少し離れた場所だった。
すぐさま振り返ると遠くに、ドラゴンの身体に絡み付いていた鎖が解け始めて、宙に投げ出されると同時に白い煙となって消えるのが見えた。
そして動きを止めたままドラゴンの体は、塵の山が風に飛ばされるかの如く、ゆっくりと崩れ出した。
先程のスライムと同じ様相だ。
つまり……、本当に倒せたということなのか。
「やっ……、やったーーっ!!」
歓喜のあまり体が震える。
自分一人の力だとは微塵も思っていないが、それでもこの世界での最初の目的を達成できた喜びというのは大きく、しばらくその場で達成感を噛み締めていた。
気持ちが落ち着き、小走りで戦闘場所に戻ると、既に師匠が待っていた。
ドラゴンが居たはずの場所には、威圧感される巨体の代わりに、重厚で大ぶりながらもよく澄んだ、綺麗な石が落ちていた。
「戻ってきたか。 お疲れさん、よくやってくれた」
思っていたよりも淡白な反応だが、少し考えてみれば、それもそうだ。
召環者が呼ばれる時期的にも、師匠は既に幾度となく、同じドラゴンが倒される所を見ているのだろう。
僕だったら、……正直、飽きる。
喜びを共感したくもあったが、師匠との温度差を感じ取った僕は、話を変える。
「はい、師匠のおかげです。 それより、この石は?」
何となく分かっているが、頭ほどの大きさがあるそれを指して言った。
「これはお前が倒したドラゴンの魔石だ。 にしても……」
何故かそこで言い淀んで、それを見つめている。
そのまま師匠は屈んで魔石に手を当てて、難しい顔をした。
「えっと……、どうかしましたか?」
沈黙に堪え切れず問いかけると、師匠は首を振った。
「いや、何でもない。 ……言ったってしょうがないし、俺の気の所為かも知れねえ……」
後半は独り言のように呟いていただけだが、そう聞こえた。
「それより、城に帰るとするか。 ちゃんとした歓迎もしてねえしな」
師匠は軽々と魔石を持ち上げて、踵を返し森を歩き始めた。
怪力ぶりに少し驚くが、それよりも師匠の思い込みとやらが気になる。
彼ほどの実力者ならば、尚更の事だった。
無駄な描写を減らす努力はしました。努力は。
改稿(21/03/30)
思い込み→気の所為




