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ゲームの世界は好きだけど転移したいなんて言ってない!  作者: For-rest-one
第一章 悪炎竜『マローガドラコ』
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対峙

 僕らは森に着いた。

 先程までの喧騒が嘘のように、今や森は静まり返っていた。

 外から見ても変わった様子はない。

 だが、ここに悪炎竜(マローガドラコ)が現れたのは間違いない筈だ。

 それを証明するかの如く、ヘルムをしたボロボロの兵士が、怯えた様子で森から出てきた。


「――、――――!」


「なんだと?!」


 翻訳魔石を手にしていない兵士の言葉はわからなかったが、焦った口振りに、師匠の応答も鑑みると、およそ穏やかな話ではない。


「―――、――――――」


「ああ、分かった。 ……案内してくれるか?」


「……、――!」


 兵士は師匠の言葉に頷き、今来た道を戻りだした。

 師匠も僕も、何も言わずに兵士に続いた。



 暫く歩くと、景色が一変してきた。

 ()げた臭いが辺りに充満し、よく見ると木の表面が炙られている。

 それだけではない。

 この一帯だけ、空気が()()


 僕が初めて悪炎竜(マローガドラコ)と遭遇した時も、”ファイアブレス”なんて僕が呼ぶ程の攻撃をしてきたのを思い出した。

 この熱気も、木の焦げも全て奴に起因する可能性が高い。

 師匠も、周囲の様子を見て警戒している。


「―――――、――――」


 兵士が小声で前方を指した。

 木々の隙間から、森に穴が空いたかのように焼け野原が広がっている。

 焼き焦げたテントのようなものが点々とあり、まさか人だろうか。

 その荒んだ土地の中央付近。

 紅い竜が居た。


 佇む竜は、圧倒的な存在感と、凶悪な見た目を除けば、蜥蜴(トカゲ)に似ていた。

 その巨体は真っ赤な鱗に覆われていて、背には膜が張った二対の大きな翼がある。


 ――僕が地下で見た()()()()()()に違いない。


 不意に、頭部の深紅に輝く瞳がこちらを捉えた。

 気配を察知したという感じではない。 まるで、僕が来るのを知っていたかのように、何のきっかけもなくドラゴンは振り向いた。


「おい、お前は逃げろ! 風魔法『ウェルテク(旋風)ス・エピタキン(加速)シ』!」


 師匠が兵士に向かって叫び、詠唱すると、命令を呑んで走り出した兵士の足が突然速くなり、やがて姿が見えなくなった。


 その間ドラゴンはというと、いつの間にか距離を詰め、僕と師匠の前まで来ていた。


「――っ!」


 咄嗟に師匠は距離をとるが、しかしドラゴンに動きは無く、目線さえ動かさない。

 それよりも、僕の方が見つめられている気さえする。


「ヴゥォオア゙ァァァッ!!」


 凄まじい咆哮が浴びさせられる。

 近くだと尚一層、迫力がすごい……!


「おっと、いつも通り狙いは()()か。 なら動き易いってもんだ!」


 師匠は何かに気付いた様子で後ろに下がり、ドラゴンと対峙している僕に呼びかけた。


「おい、……ああ! 名前聞いてねえ! まあいい、召環者、奴の狙いはお前の剣だ!」


 手元の剣を一瞥する。

 この呪いの剣が……?

 剣を放り投げて逃げれるなら話は早いが、この手から離れない剣では無理だ。

 そもそも、逃げたところでドラゴンが暴れ出すだろう。 それでは駄目だ。


 それはそうと、試しにドラゴンの前で剣を左右に(かざ)してみると……、めっちゃ食いついてる。

 剣の動きに合わせて首を振ってくるのだ。

 しばらく遊んでいると、突然前足を振り上げてきた。

 咄嗟に横に飛んで攻撃を躱す。

 ……スライムとの戦いが()()()というのか。


「何してんだお前……、とにかく俺は、攻撃が通らねえから、お前の補助しかできない。 だから、さっさとぶちのめしちまえ!」


 相変わらず無茶振りだ。

 それでもやるしかない。 僕がそう決めたのだ。

 目の前の悪炎竜(マローガドラコ)が、鋭く僕を睨みつけた。

兵士、何言ってんだろう?


修正 (20/10/06)

ウォルテクス→ウェルテクス

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