魔石はどうやって出来るの?
「お前はそいつの攻撃に気を取られて、そいつの隙に気づいてない。 そもそもお前は腰が引けてるし、スライムも軟らけえんだから、今のお前に空中で斬れるはずないだろ」
言われてみれば確かに、スライムの接触攻撃が思いの外痛く、少し体が竦んでいた節がある。
それに、飛び掛りに合わせて攻撃した方が有効と思い剣を振るっていたが、地上なら力を受け流しづらいだろう。
しかし、隙なんてあっただろうか……?
訝しみながらスライムの方に目をやると、丁度飛び掛ってくる所だった。
「うわっ! ……と」
流石に剣を構える暇もなく、焦って体を捻らせて衝突を回避すると、漸くある事に気付く。
こいつ、踏み込みの動作がかなり遅い。
いや、軟らかい体を縮ませ、その弾力で跳ぶことを踏み込みというかは分からないが……。
ともかく、追撃を恐れて直ぐに振り返ったけれど、再び来るまで相当の時間があった。
今まではカウンターに重点を置いていたので、攻撃が来るまでのクールタイムは考えていなかった。 けれど、そここそが師匠の言う隙だろう。
再三、スライムは攻撃を仕掛けてきたので、先程までと同じ様に去なすと、スライムに大きな隙ができるのを見た。
行ける――。
勢いよく剣を振り下ろすと、刀身はスライムの形を歪ませながら入っていく。
しかしその途中、一瞬だけ、手応えが変わった気がした。
ゼリーの中に寒天があったと言うか、そんな些細な変化だったが、そこを刃が通過した途端、暴れていたスライムの動きがピタリと止まった。
やったのか……?
少しの間、停止したスライムをじっと見ていると、突如霧となって消え始めた。
「えっ……、急になんで……?」
またもや目前でよく分からないことが起きた。
霧散していく様子を見守っていると、後にはピンポン玉ほどの小さな石が残った。
それは丁度、翻訳魔法の魔石のようだったが、翡翠色のあちらと違い、こちらは紫水晶に近く、綺麗に透き通っていた。
「あの、師匠。 今――」
「やっと倒したか。 そんじゃ、次はーっと」
聞く耳がない。
時間を無駄にしている場合ではないかもしれないがどうしても気になる。
「……今、二つくらい目新しい事が起きましたよね?」
「おっと、それも言ってなかったな」
何とか説明に漕ぎ着けた。
勿体ぶる割には説明を忘れていることが多いな……。
「まず、多くのモンスターは絶命すると、体が崩壊して消える。 モンスターというのは魔素の塊で、魔法によって構造を維持しているから、命が絶えりゃあ魔法を構築する魔力もなくなり、魔素に戻る」
魔ばかりでややこしいが、何となくわかった。
敢えて例えるなら生分解がめっちゃ早いって感じか。
「その時、内側の魔素は散らばらずに纏まり、結晶となる。 これが魔石だ。 魔力が濃く、大きい程に大きな魔石が出来んだ」
スライムから出た魔石を拾い、矯めつ眇めつ、よく観察する。
これが『魔素』か……。
「無駄話は終わりだ。 次のバトルは――」
師匠の特訓は、それから数時間に及んだ。
夏ですね




