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ゲームの世界は好きだけど転移したいなんて言ってない!  作者: For-rest-one
第一章 悪炎竜『マローガドラコ』
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僕が魔法を使えた理由

「これは一体……?」


 鍛錬場の地面に描かれた紋様を指して僕は言った。

 大きな円の中に重ねられた数多の線は規則的に繚乱(りょうらん)していて、一つの芸術作品でも見ている気分だ。


「こいつは『魔石陣(ペブルサークル)』だ。 要所に設置した魔石を媒体として、強大な魔法が使えるようになる」


 さしずめ魔法陣と差異はなさそうだ。

 しかし、やっぱり良いな、魔法陣って。

 説明し難いが、とても()()()(くすぐ)られる。


「んで、今朝はこれを使って鍛錬を行う。 解析の結果、今日の正午に悪炎竜(マローガドラコ)が再出現するみてえだから、流石にそれまでには終えるぞ」


 今日はどうやら早上がりらしい。

 と言っても、今日がドラゴンとの本番戦である訳で、僕は今朝からかなり戦々恐々としている。

 体を動かしていれば、幾らか気が紛れるだろうから、僕としては鍛錬は望むところだ。


「あ、そうだ。 師匠、昨夜魔法が使えました」


 魔石陣(ペブルサークル)だっけ……? それに気を取られて、すっかり昨日の出来事を忘れていた。


「お? おぉ、やるじゃねぇか! 魔法が使えるのと使えないのとじゃ、雲泥の差だからな! よし、後半の鍛錬メニューは決まりだな……」


 何やらとても喜んでいる。

 それもそうか、ドラゴンへの勝率は、即ちこの大陸の生存率なのだから。

 ――そう考えると、ストレスでお腹が痛くなってきた……。


「にしても、何故急に出来る様になったんだ? 昨日は俺の真似をしても、てんでダメだったのに」


 言われてみればそうだ。

 昨夜は静かな部屋の中で、何度か魔法名を呟いただけだ。

 特別なことは何も……、いや、()()()()あったな。


「魔法を発動する前に、魔法名の意味が分かったんです。 一部の魔法名に、僕の国のそれじゃないけれど、何処かで聞いたような言葉が入ってると気づいて、その意味を思い浮かべました」


 昨日僕は、『カタルシス(浄化)』という言葉に引っかかり、更に『フランマ(火炎)』の意味を予想して魔法を唱えた。

 考えられるのは、これくらいだろう。


「ほう? ()()()()()()()()()()()? 変だな」


 ……何が変なんだ?


「魔法名は、魔法の意味を簡潔に纏めてあるんだがな。 それに、()()()()()()だって?」


 ……何がおかしいんだ?

 確実に、魔法名は横文字ばかりで日本語は無かったはずだ……。


「他言語が混ざるなんざ、翻訳魔法が上手くいってないのか……? いや、前にもこんな事があったな。 確か……」

「ニホン、だったか?」


 男はそう続けた。

 ニホン。

 日本。

 ……僕の元の世界での故郷だ。


「そっから来た奴らも、殆ど魔法が使えてなかったな。 同じ世界で他の国の奴らは特に何も無かったが……」


 さっきから彼はずっと一人で喋っているが、そんなに不思議だったろうか。


 彼の話を纏めると、魔法名は魔法の概要を簡潔に纏めてあり、翻訳魔法を通しても意味は伝わるそうだ。

 しかし、同じ世界でも日本人だけは魔法が殆ど使えず、その(日本人の)一人である僕にとって、翻訳魔法を通した魔法名は知らない横文字を含んでいた。


 ……なんか、何となく理由がわかった気がする。

 恐らく日本語という言語の特徴に全ての原因があるのだろう。


 確かに、外来語や横文字は格好良いから使いたくなる気持ちはわかる。

 それに、他言語から和訳するよりそのまま使う方が的を射る事もある。

 そういった要因が積み重なった結果、翻訳魔法は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そういう事なのだろう。


 僕は、母語の強欲さと難解さに溜め息をついた。

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