サイレンは鳴り響く
けたたましくサイレンは鳴り続ける。
その場にいる誰もが、状況を理解するまでに少し時間を要した。
「な、何よ! 今度は何!」
逸早く反応したのはソフィア。
この街に長く住んでいる彼女だからこそ最初に状況を呑み込めたのだろうが、それに慣れることは決して無いのだと、その焦り具合が証明している。
空を見上げてキョロキョロする彼女に釣られて僕も上を向いたが、緋色に染まる夕暮れの空に、変わった点は無いように見える。
「まさか、……敵襲? ――皆さん、急いでこっちに! ソフィアちゃんも!」
アスピダは僕とダリアの手を掴み、徐々に速度を上げて走り出した。
そうだ、今は考えてる場合じゃない。
避難しなければ。
足が縺れそうになり、慌てて姿勢を立て直して走り出す。
名前を呼ばれたソフィアも、すぐさま冷静になり、アスピダに並んで走り出した。
廃屋の横を通って、裏側へと回ると、地面に錆びた扉が付いていた。
元の世界でも一度見たことがある。 おそらく、シェルターだ。
アスピダは取っ手に手を掛け、一瞬の躊躇の後、勢いよく扉を開けた。
……そうして、僕たちはシェルターに避難した。
四人ではかなり手狭だが、それでも使える状態だったのがありがたい。
密閉されていたためか、数年間電気が通っていないのにも関わらず、内部には安全な空気が保たれていた。
とはいえ、換気ができないのに変わりはないので、長時間の滞在は難しいだろう。
「どうしてこんなことに……?」
思わず心情が口から漏れてしまった。
タイミングの悪さを憂う意味もあるが、何より情報が全く無いのだ。
誰からの攻撃かも、そもそも攻撃を受けたのかも不明のまま、慌てて逃げ込むことになってしまった。
ダリアとアスピダも静かに頷いていたが、一人だけ怒りを顕にする者がこの空間に居た。
「決まってるじゃない! 敵国よ! きっとまた、どこかの国が卑怯な手で騙し討ちしてきたに違いないわ!」
激するソフィアを、まあまあと宥めるダリア。
アスピダは何か考え込んでいる様子だ。
仮に何の進展もなく、この状況が長く続いたらどうするべきだろうか?
いずれこの場所には居られなくなる。
つまり、外で攻撃を躱しながら移動する手段が必要になるだろう。
魔法攻撃なら、僕とダリアで相殺できなくもないが……、攻撃が魔法とも限らない。
こと戦争に関しては素人なのだから、思い込みで楽観視するのは危険だ。
槍が降ってもおかしくないと考えた方がいい。
でも、それにしては……
「――何だか、やけに静かじゃないですか?」




