言葉には気を付けよう
今日は朝から忙しい。
起きて早々に部屋の扉が叩かれ、開くと師匠が魔石を持ちながら口を開いた。
朝食を摂り次第、直ぐにでも鍛錬を再開するとの事だった。
その後、部屋に用意してあったパンとスープを食べ、急ぎ鍛錬所へ向かうと、師匠はそこにいた。
彼は片手に大きな袋を持ちながら、場の整備に集中していて、まだこちらに気づいていない様だ。
声を掛けようと思うが、何を言うべきか迷う。
しかしどうせ魔石が無ければ通じないことに気づく。 ならば、何を言おうがこちらに気づいてもらえればいいのだ――。
「脳筋傍若無人さん」
やたら体力と元気があり、人の事情も知らず突っ走る彼を上手く表していると思っ――
「おう、召環しゃ……って、今なんつった?!」
予想外にも師匠は驚いたように荒々しく反応した。
まるで言葉の意味が伝わってるみたいに……。
……よく見ると、師匠の手元には例の魔石が握られている。
墓穴を掘ってしまったみたいだ……。
「あ、えーっと、言葉の綾ですよ、綾。 それか、翻訳が上手くいってないんじゃないですかね!」
とても不味い。 誤魔化しきれるか……。
「そ、そうか……。 悪いな、怒鳴ったりして」
良心が痛むが、致し方ない。
だって、聞こえてるなんて思わなかったんだ。
「いえ、気にしないでください。 ところで、鍛錬は準備中ですか?」
話題を逸らす。
この間にも、脳筋傍若無人はしきりに手中の袋から何かを取り出し、鍛錬場の地面に置いている。
見ると、その『何か』は彼が今持っている――魔石と、色は全く違うが、とても似ている。
「おうよ。 もう少しで終わるから、待っててくれ」
そう言って師匠は全体を見渡し始めた。
数々の魔石は、規則性を持って並べられているようにも見える。
少しして師匠は軽く頷き、懐から別の袋を取り出した。
袋からは白色の粉末が零れ、師匠はそれで魔石同士を、点と点を線で結ぶ様に、白い粉末のラインで繋ぎ出した。
一体何をしているのだろうか?
遠目に見ると、何らかの図形を描いているように捉えることもできる。
外周は大きく曲線を描いていて、円の様な形だが、その内側は幾つもの直線が引かれ交錯している。
なんだか、馴染み深い感覚を覚える。
いや、実際見た事はないかもしれない。 ただ、知らないものではない感じがするのだ。
「よし、完成だ」
最後に直線を一本、円上に引き終わって師匠は言った。
「師匠、これは一体……?」
書き始めたの昨日の23時でした。危ねぇ……




