瘡蓋
「あ、れ……?」
目を覚ますと、あたしはベッドの上だった。
どうやら、いつの間にか気を失っていたらしい。
それより、あたしは外に居たはずなのに、どうして――?
整然とした見知らぬ部屋と、静まり返った街が妙な非現実感を醸し、もしかして全部夢だったんじゃないかと、的外れな期待を抱く。
目は覚めたが、頭が冴えない。
あたしの脳が、考えることを拒んでいるようだ。
まだ微かに明るい窓の外を眺めて呆けていると、どこからか足音が聞こえてきて、扉の前で止まった。
ガチャリと静かに扉を開き、様子を伺うように顔を覗かせた人影は、上体を起こしたあたしを見て声を上げた。
「あ、アスピダ姉! やっと起きたのね!」
足音の主の正体に、あたしは驚いた。
「え? ソフィアちゃん……?」
部屋に入って来たのは、去年仲良くなった、あの女の子だった。
ということは……、ここはこの子の家なのか?
「よかった……。 ずっと寝てたから、心配したのよ」
あたしの元まで歩み寄ったソフィアは、傍にある椅子に座り込んだ。
そこで初めて、ベッド横のテーブルに簡素な食事が用意されていたことに気が付いた。
心から安堵した様子の少女に、あたしは尋ねた。
「えっと……、ソフィアちゃんがあたしを運んでくれたの?」
少女は首を振って答えた。
「いいえ、アリシアがアスピダ姉を連れ帰って来たのよ」
そう言われて、先程の出来事を全て思い出す。
――そうだ、意識を失う直前、あたしを引っ張る誰かが、先生と話しているのが聞こえた。
それがアリシアさんだとしたら、火球の雨の中、彼女があたしを安全な場所まで運んでくれたのだろう。
そうでなければ、あたしも攻撃に巻き込まれていた。
「そう、だったんだね……。 ソフィアちゃんも、心配してくれてありがとう」
程なくして、アリシアさんもあたしの様子を見に来てくれた。
その日から、あたしは数年の間、ソフィアちゃんとアリシアさんにお世話になることになった。
あたしの家は無くなってしまったし、お父さんともお母さんとも連絡が取れない。
行く当てが無いのならと、アリシアさんがあたしのために取り計らってくれたのだ。
後から聞くと、あたしが居たのはソフィアちゃんが住む屋敷の客室だったみたいで、そのままそこに住まわせてもらうことになった。
そして、ソフィアにお母さんは居ないことと、お父さんも滅多に屋敷に帰って来ないことを話してくれた。
彼女にその意図があったのかは分からないが、似た痛みを共有して、あたしの心の傷はちょっとだけ、それでも確実に癒えた。
屋敷のメイドや使用人、一番の執事のアリシア、それからソフィア。
彼女たちと過ごす内に、少しずつ笑顔でいられる時間が増えた。
そうして数年が経ち、あたしが冒険者を志す切欠となる出来事が起きる。
書くのが難しくなってきており、大遅刻です…
使用人の中には魔道士の者も居るため、屋敷は無事になっています。
改稿(24/4/24)
・もしかして全部~現実感を醸し出す。
→整然とした~期待を抱く。




