不発
静寂が訪れる。
僕も男も僕の掌に注目していたが、特に変化も起きない。
あんなに大仰にやっといて何も起きないのでは、醜態もいいところだ。
「――出ませんね、炎……」
沈黙に耐えきれず口を開く。
「お、おう。 俺も今のでいいと思ったんだがな……」
ならば何がダメだったのか。
やはり魔法を扱うのは一筋縄では行かないという事なのか。
「ひょっとすると『属性相性』が良くないのかもしれねえな」
”属性”?
またそれっぽいのが出てきた。
「えっと、つまり?」
「お前に炎属性の魔法の素質がないってこった。 しっかし、大体の奴らは上手いって訳じゃねえが使えるもんなんだがな……」
なんじゃそりゃ。
別に使いたい訳では無いが、こういう設定はゲーマーとして興味が湧く。
「素質がないって……、生まれ持った才能みたいな感じですか?」
こういう世界観にありがちの、『個人の属性』的なのを想像した。
「んー、まあ、大体そうだ。 後天的に素質を伸ばす方法も無い訳では無いが……、今は時間がねえな」
やっぱりそういうやつか。
非現実的な話だが、ゲームっぽい設定に思わず胸が高鳴ってしまう。
「んじゃ、別の属性でも試してみっか。 俺は炎以外の基礎魔法は二種類しか素質がねえから、いくつかは手本を見せれねえがな」
炎以外に二種類……。 一個人が持つにしては多めに聞こえる。
大体こういうのは一人一種類と相場が決まっていそうだが……。
もしかしてこの男、適当な割に実は凄いやつでは?
「別の属性って、どのくらいあるんですか?」
男は即答した。
「聞いた話によると、確か今は十とちょっとくらいだったはずだぞ」
意外に種類はあるようだ。
まあ、ゲームによっては水と氷の様に似たり寄ったりのものを別に数える場合もあるから、この世界もそういう感じなのかもしれない。
ゲームをしていたおかげと言うべきか、思いの外この世界のことをすんなり呑み込めている。
とはいえここが現実とは思えない。 まるで意識がはっきりした夢の中を彷徨っているかのようだ。
「そいじゃ、今度は土属性のやってみっか。 炎属性が使えねえやつって、こっちは得意なのが多いんだ。
成る程、土属性が得意だから炎属性が疎かになる……、という感じか。
しかしそれなら、干渉することがある属性を三種類も持ってるというのは、やはり只者では無さそうだ。
けれど、僕みたいな”召環者”を今まで何人も鍛えてきた人材だからこそなのかもしれない。
「まずは手本を見せよう。 土魔法『テッラ・パイモス』」
言うと同時に、彼の周りの地面が円上に盛り上がり、腰ほどの高さまで土が隆起した。
「見たか? 言っておくが今までと同じく種も仕掛けもねえ。 これが魔法ってやつなんだぜ」
魔法の名前考えてたら三十分経ってました。




