魔法を使おう
兎にも角にもと、鍛錬が始まった。
剣の鍛錬は魔法を一通り覚えてから行うようだ。
「まずは、お前の魔法素質を確認したい。 さっき挙げた四つで一番簡単なのは……、炎魔法だ。 やってみろ」
彼は軽く言うが、そもそも僕は剣の性質くらいしか教わっていない。
「えっと……、どうやるんでしょうか?」
彼は思い出した、というふうに目を見開いた。
「おっと、俺としたことが言うのを忘れていたな。 わりぃわりぃ」
ようやく第二段階に移れる……。
そう思ったが。
「なんつぅか、まずは心をボワーッて感じにして、魔法名を言って、手からボーン、みてぇな?」
唖然とした。 説明に擬音を持ち出すのは、大体説明が下手なのだ。
「”みてぇな?” じゃないですよ! もっと具体的に言ってください」
「つっても、これが全てなんだが……。 いいか、魔法は理論じゃねえ、心で使うんだ!」
なんか、この世界、適当すぎないか。
そもそも、それで出来たら元の世界でだって魔法が使えるんじゃないか……?
「理論じゃねえってのは冗談だが、フィーリングで使うのは本当だ。 あんたの世界の――、『自転車』だったか? それも似たようなもんなんだろ」
ただでさえ冗談みたいなものを扱うというのに更に冗談を重ねられては……。
って、今『自転車』と言ったか?
「ちょっと待ってください、『自転車』がこの世界にもあるんですか?」
「ん? ああ。 いやな、昔召環者としてここに来たやつが魔法を使いこなせるようになったとき、『こんなに嬉しいの、私が初めて自転車に乗れた時以来だ!』なんてはしゃいでたんだよ。 それで気になって訊いたんだ。 もしかしたらお前と同じ世界から来たのかもな?」
なろほど、と相槌は打ったが、そんな簡単に習得できるものなのか?
取り敢えずやってみようか。
難しいことは後回しに、ものは試しだ。
「えっと……、心をボワーッとして、手から出すイメージで……」
目を瞑り、手を前に出して、意識を胸の奥から掌に集中させる。
「おっ、伝わったのか。 いやぁ、今までの奴ら『何だそれ!』っていちゃもんつけて来たからな。 てっきり俺の説明が悪いのかと……」
完全に伝わった訳では無いと、否定したくなる声が聞こえてきたが、したところで改善しなさそうなので聞かなかったことにしよう。
「……魔法名はなんですか」
「おう。 んー、基礎の炎魔法『フランマ・ケオ』から行くか」
準備は整った。
説明が雑な男の言葉を推察するに、まずは心の中に火を灯すイメージをする。
――暗く、広く、何も無い場所に、火は、ポツンと揺らめいていた。
弱々しく今にも消え入りそうだった火は、何が無しにゆっくりと勢いを増し出す。
焚き火程の大きさから、遂には全てを焼き付くさんとする業火へと成長した。
燃え盛る猛火から放たれた大きな火の粉が空を駆け、火玉へと成長していくと共に、体中を巡り、腕を過ぎて掌から迸る……!
「――炎魔法『フランマ・ケオ』っ!」
遅ればせながら
改稿
魔法の能力 → 魔法素質
(20/06/16)
主人公の魔法詠唱のルビを削除
(20/07/14)
何故そんなこと知ってるんですか?→この世界にも『自転車』があるんですか?
それを受けた師匠の台詞も一部変更
(22/04/05)




