硬ってえ植物
冗談としか思えなかった男の発言は、どうやら本当らしい。
斬られた案山子の表面も断面も藁のようだが、試しに叩いてみるととんでもない硬度だった。
どうやって加工したのか不思議な程で、下手すれば隣の金属製より硬い。
「それは鋼藁っつう、この辺では見ねえが、北の方では結構生えてる植物だ。 詳しいことは後に回すが、その硬さは隣の鉄カカシも顔負けだぜ」
って植物かい。
その鋼藁とやらは恐らく、というか十中八九この世界にしかない植物だろう。
しかし鉄という馴染み深い単語が出てきたのは意外だった。
僕のいた世界と共通する物質が幾つもあるのだろうか?
「そうでしたか……、でも、どうして斬れたんでしょうか?」
すぐさま疑問を口にした。
鉄より硬いものを、鉄を斬れなかった僕が斬ったのだ。
当然何らかの理由があるのだろう。
「ああ。 それは、意志の強さだ」
意志?
「お前が対象を斬ろうという思いが強いほど、その剣は斬れ味を増す。 そしてまた逆も然りってわけさ」
なんだそれは。
まるで僕の苦手な根性論じゃないか。
やれば出来ると言ったところで、世界は変わらない。
なんて胡散臭い……。
「おっ、その目、信じてないな?」
言われなくとも疑う。
僕のいた世界では、そんなの有り得ないのだから。
……そう、僕のいた世界では。
「実際、お前は最初『できっこない』とか思ったろ? だから剣は斬れ味を落としたんだ」
言われてみればその通りだ。
二度目の挑戦の時は、『行けそう』と思いながら剣を振り下ろした。
それにそもそも、ここは別世界だ。
ここでのみ通用することもあるのだろう……、と強引に納得して、話を続けた。
「このカカシは見てくれだけ弱っちいからな。 召環者への実践を踏まえての説明にお誂え向きって訳よ」
確かに、この見た目なら誰だって脅威に感じない。
要は、鉄の方も行けると思えば行けるってことか。
「勿論、その性質は無敵って訳じゃねえ。 今のお前が幾ら気を強く持ったところで、斬れるものはたかが知れてる。 今日の所はもう一つ、というかこっちがメインだが、ドラゴンを倒すために必要な知識を習得してもらおうか」
ドラゴンを倒すための知識……。
「一体何の知識ですか?」
「ああ。 取り敢えず、基礎魔法を使ってみてくれ。 種類は問わん」
……。
「えっと……、基礎魔法、と言うのは?」
「おっと、そこからか。 魔法がない世界からの召環者は久々だな」
どうやら魔法がある世界がメジャーのようだ。
……って、そうじゃない。
「……魔法。 そんなモノ、本当にあるんですか?」
ドラゴン。 離れない剣。 言葉が通じる石。
ここまで見てきたものはそれぞれ生物学、心理学、機械工学での説明の余地があり、タチの悪いドッキリだなんて思い込めたが、魔法なんて来れば一つの詭弁すら出なくなるだろう。
故に、それを見てしまえば、僕は思わざるを得なくなる。
「ああ、ここは本当に違う世界なのだな」と。
忙しさで抑えられていた不安が湧き上がってしまう。
理解することが出来ず頭が混乱してしまうかもしれない。
それでも、もしドラゴンを倒さないと帰れないのならば。
その為に魔法を覚える必要があるならば、知らなくてはいけないのだろう。
「ああ、あるとも。 お前の世界には無かったようだがな」
男は平然と口にした。
その言葉は、僕を沈黙させるのに十分だったが、男は続けた。
「試しに、簡単なやつを見せてやろう」
そう言って男は片手を前に出し、静かに呟き出した。
その殆どが聞き取れなかったが、言葉の所々には古めかしい表現が入っている。
やがて男は叫んだ。
「炎魔法『フランマ・カタルシス』!」
言った傍から投稿が遅れてしまいました。
遅くとも一週間に一度は投稿するようにします。
さもなくば死んだと思ってください……。




