黒の剣士
暗雲はその形を変えることでダリアの攻撃を躱して、元の形に戻ると同時に反撃を始める。
暗雲は一際激しく蠢き、その体内からバスケットボール大の黒い球を数個、こちらに向けて撃ち出した。
それぞれの球の視認性は悪いが、ダリアの攻撃が躱された時点で身構えていた僕は、僕に当たりそうな球の軌道を読んで躱し切る。
魔法使用直後だったダリアも難なく回避できていることを確認し、敵の動向を探る。
……次の攻撃はまだ来ない。
どうやら今の攻撃は、ダリアが闇を消し始める前から準備していたものだったようだ。
あの暗闇の中で今の見えづらい攻撃をやりきれたかと思うと、全く自信が無い。
先に闇を払ってもらって正解だった。
今、遠距離戦に関してはこちらに分があるだろう。
それをあちらも理解したのか、暗雲は宙に揺蕩うことを止め、僕たちの前方の床にゆっくり降りて来た。
そしてその不定形な体を一箇所に纏め、何かの形を象った。
……剣士だ。
顔も含めて全身が黒一色で、身に纏うものや、手と剣の境目さえも判別できないが、それは確かに剣士の佇まいだった。
一箇所に纏まったことで闇の密度は濃くなり、向こう側が透けることもなくなっている。
黒い剣士がこちらに駆け出す。
迎撃のためダリアの横から前方に躍り出て、前衛の役目を果たす。
剣士が到着するまで、あと数秒ほどだ。
剣同士での戦いは初めてではないが、その経験は余りにも浅い。
故に、斬り結ぶのではなく、攻撃を避けて敵を斬る……、それが理想だった。
「『ウェントゥス・ジアヴロシィ』。 ……っ!」
黒い骸骨の時のように、ダリアは相手の得物を無力化しようと試みる。
しかし、剣士の剣は無傷だった。
ダリアの支援が受けられないまま、黒い剣士は僕の間合いに飛び込んで来た。
そしてその勢いのまま、低い位置で剣を横に振り抜いてくる。
露骨な足狙い。
僕は後退を余儀なくされた。
剣士は僕を攻撃するために足を止めたが、戻るでもなく中段に剣を構えたままじりじりと躙り寄って来る。
後ろにスペースはまだ残っているが、防戦一方ではダリアが危ない。
正直剣戟に自信は無いが、そうも言ってられないだろう。
震える手で剣を強く握り直し、目の前の黒い剣士へと剣先を向けて構え直した。
黒の剣士(厨二病感)。
僕も剣戟描写には自信がありませんね…
改稿(22/4/25)
・動作の主体を分かりやすく書き直し
改稿(22/5/10)
・僕達→僕たち
・無力化を試みる→無力化しようと試みる
修正(24/5/29)
・二重鉤括弧の数を修正




