決意と困惑
城門の前に着いた。
それにしても立派な門だ。
広大な街に相応しく、大きく頑丈そうだ。
「中に入ってからは、余り喋らないように。 今は君のことを公にする訳にはいかないんだ」
兵士は僕にそう言うと、ヘルムを外して門番に近寄り、話し始めた。
何と言うか、西洋系の外国人っぽい。
余り見た事が無いので自信はないが、金髪に碧眼なんて、尤もらしい特徴だ。
まあ、ここは『別世界』らしいので少なくとも西洋人では無いのだろうが。
どうやら彼らの話は終わったようだ。
それから僕は小さなドアのフレームみたいなものに通らされた。
金属探知機のようなものだろうか。
その後ボディーチェックされただけで、早くも門番からゴーサインが出る。
そして兵士達についてくるよう促され、街に入った。
……拍子抜けだ。
もっと厳重な入国審査が待っていると思っていたが。
例の急ぎの用事と関係があるのだろうか。
街の中に通された僕は、辺りを見渡してみる。
建物は基本石造りの二、三階建てで、堅牢にできている。
道も石畳になっていて、全体的に石尽くしだが、形には意匠が凝らされ、装飾もちらほらとあり、決して退屈な街並みにはなっていない。
見事な風景だが、やはり時代が少し遅れている気がする。
建物は古風だし、街灯らしきものも見当たらない。
ここまで発展しているのに街灯がないのは現代では不自然だ。
しかし、それだけでここを『別世界』と認めるのも釈然としない。
僕は元の世界に帰りたい。
帰って、だらだらとゲームをしたい。
僕はゲームをするのが好きなのであって、実際に魔法を使いたい訳では無いのだ。
邪かもしれない決意を他所に、兵士達と僕は街を進み続ける。
そして、巨大な城がいつの間にか視野に入っていた。
この大きな街の建物の数々の中でも一際圧巻で、目を見張る迫力だ。
だがその大きさに似合わず、整った印象があり、左右の対称性もかなり精確だ。
城の周りを囲う水堀に架かった洒落た石橋を渡って、大きな木造の門をくぐる。
城の廊下は、豪華な装飾品や絵画が数多く飾られていた。
そして僕は、広めの個室に通された。
座り心地の良さそうなソファー(恐らく革製)や、ここまで見てきたものよりも高級そうで気品のある骨董品がショーケースに飾られている。
恐らく応接間だろう。
兵士は『例の石』を取り出し、僕に話しかける。
「それでは、私達は団長に報告をしてくる。 その間、動いてもいいが部屋からは出ぬように」
言い終えると彼らは一礼して部屋から出ていった。
ドアが音を立てて閉まる。
「はぁ……」
僕は溜め息をついた。
今までは人前だったから気を強く持てていたが、一人になると頭の中がグルグルする。
『魔術』って何なんだ。
『僕の居た世界じゃない』ってここは何処だ。
どうして僕は『難民』扱いなんだ。
普段通りの日常を送っていただけじゃないか。
僕は、僕は日本に帰れるのか?




