1 幼なじみは雪女でした
❄️️( '-' ❄️️ )ユキチャン
幼なじみの可愛い女の子に朝起こされる……なんて素敵なイベントは大抵2次元の中だけだろう。とはいえ何事にも例外はある。俺なんかは朝本当に弱くて毎朝幼なじみに起こして貰っていたのだが………それはそんないつも通りの朝のことだった。
「圭くん起きてー」
「うぅん……もう朝? 『ガチャリ』 って、え?ガチャ……?」
伸びをしようと手を上げようとすると何故か聞こえた鎖の音。恐る恐るみると何故か両手両足が鎖に繋がれていたのだった。いや、なんで?俺は別に禁断症状で寝てる間に全身を掻きむしったりするから鎖で繋がれる癖はないのだけど………というか
「あの……雪麗さん?何故本日は和服なのでしょうか?」
俺の幼なじみの吹雪雪麗、彼女は和服が似合う黒髪の美人さんなのだが……朝学校のために起こしにきたにしてはなんかおかしな格好のような………?
というか、部屋も俺の部屋じゃなくて見知らぬ場所だし外なんか小窓から見るとめっちゃ吹雪いてるし何処なのここ?
「だって、こっちの方が落ち着くんだもん」
「そっか………ところで学校に行きたいから拘束を解いて貰えると助かるというか………」
「むり♪」
可愛い笑みで断られた。
はぁ、おk。まだ慌てる時間じゃない俺。まずは状況を整理しよう。俺、村雨圭は普通の高校生だ。可愛い幼なじみと多少仲良くしてる程度の普通の高校生。まあ、家庭環境は若干変わってるとはいえ、その程度だ。
そして幼なじみの吹雪雪麗。彼女とは小学生の頃からの付き合いで、毎朝起こしに来て貰ってるのだが………今朝は何故か見知らぬ場所に拉致監禁されている。これでおk?
………うん、やっぱり意味がわからない。
「あのね圭くん。私の秘密知りたい?」
「聞かせて貰えるなら」
「実はね……私、雪女なの」
そう言うと同時に髪が雪のように真白くなる雪麗。はは、心做しかなんか冷えてるなぁ……
「そっか、道理で美人さんだと思ったよ」
「ふふ、信じてくれるんだね」
「まあ、可愛い幼なじみが嘘をつくとは思わないからね。それで?この鎖もそれに関係するの?」
「あのね……雪女は本来気に入った男の子を氷漬けにして自分のものにするの」
………そんな妖怪だっけ?俺の知る限りだと別のがあった気がするけど………まあ、事実なんて案外違うものか。
「それはつまり、俺はこれから氷漬けにされるの?」
「うん……でも、圭くんのこと大好きだからそんなこと出来ない。だけどこれ以上圭くんが他の女の子と仲良くするのを黙って見てられなかったの」
「なるほど……愛情の鎖ってわけだ」
なんとも嬉しくなるものだ。初恋の女の子がここまで自分のことを想ってるとは。
「ねぇ、圭くん。このまま私のモノになって」
そっと頬に手を触れる雪麗。その手はいつもよりひんやりしてたけど、気持ち良かった。
「分かった。俺も雪麗のこと大好きだからね」
「……いいの?」
「そりゃ、ここまで情熱的に迫られたらね。ただ、出来れば鎖は外して欲しいかな。雪麗を抱きしめることが出来ないし」
「ふふ、後でね」
ぎゅっーと抱きついてくる幼なじみの女の子。ひんやりしててなんとも心地よく思いながら俺は自分の緩さに呆れてしまっていた。拉致監禁されているのにこの緩さ……愛って怖いなぁ。そんなわけで………幼なじみは雪女でした。