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87.遠征

 ファティとメアリはカーラさんの馬車で、学院から教会まで迎えに来てくれていた。

 まあ、歩いてすぐ来れるような距離じゃないしね。

 メアリは私が早退して、()()()()()でなにをしていたのか、詳しく聞いてくることはなかった。

 知りたいとは思っているかもしれないけど。もし聞かれていたら、うまく答えられなかったと思う。

 話すとなると、色々明かさなくてはならなくなるし。

 実は私って霊盃(れいはい)巫女(みこ)なんだよって今さら言いづらい。この国で祭られている存在だし⋯⋯言わない方がいい気がする。

 まあ、いつか話す時もくるかもしれないし、今は棚上げにしておこう。



 ヴェスタル宮殿に帰ると、巫女(みこ)様から


「今日、早退したのは何かあったのか」


 と聞かれたので焦った。巫女様にもはっきり言えないので


「ちょっと、急用が出来まして⋯⋯でも、メアリを危険に(さら)すようなことはしていません」


 と答えた。


「そうか」


 巫女様はそう一言口にしただけだった。

 信頼されているのかな。



 翌日、私たちは普段通りレクス貴学院に通った。

 学院ではスキエンティア先生から


「昨日の急用とは一体何だったのですか」

 

 と言われた。まあ、詳しく言っていないので、確認してくるのは当然だけど。

 

「すみません、急用としか答えられないです」

 

 スキエンティア先生は溜息をつくと


「そうですか⋯⋯」


 と言って教壇に向ってしまった。 

 フレデリカとは普通に朝の挨拶を交わしただけで、早退のことを聞かれることはなかった。


 それからすぐスキエンティア先生の朝礼が始まり、その中の


「皆さん、華暖期(かだんき)にいよいよ最後の遠征(えんせい)が行われます」


 という言葉の一部が気になった。

 華暖期(かだんき)のことは本から得た知識で知っている。

 以前の世界でいえば三月頃のことで、今から約二ヶ月後。

 それよりも遠征って、周りの様子を見るとみんな知っている雰囲気で、どうやら知らないのは私だけらしい。


「──準備を怠らないようお願いします。それでは講義に移ります」


 スキエンティア先生の話は、遠征の内容には触れずに終わってしまった。

 多分、学院生なら遠征の内容は知っているのが当然だから、知らない人がいるなんて思ってもいなかったのだろう。まあ、お昼になったら聞けばいっか。



 講義は問題なく進行してゆき、やがてお昼休憩になった。

 食堂では席を探している途中、カテリナちゃんが同学年らしき子たちと、仲良くお昼を食べている姿を目にした。


「皆さま!」


 カテリナちゃんは私たちに気付くと、慌てた様子で立ち上がった。周りに座っていた子も一斉に立ち上がる。


「今、場所をお空けしますので、どうぞこちらにお掛けにください」

「座って、座って、私たちは別のところで食べるから」


 カテリナちゃんが食器を片付け始めたので、慌てて止めた。


「またね。カテリナちゃん」


 私たちは申し訳なさそうな顔をしたカテリナちゃんを残して、その場から移動する。


 そのあとたいして時間もかからずに、座れる席を見つけることができた。

 食堂のメイドさんに料理を頼んで、持ってきてくれるまでの間に


「朝、スキエンティア先生が遠征をするって言ってたけど、何をするの?」


 と聞いてみた。


「ああ、そう言えばキョーコはまだ、遠征をしたことがなかったっけ。でもレクス貴学院の遠征は有名だから、知ってそうなのに」

「フレデリカ、キョーコ様は遠い異国から、この国にいらっしゃっているのよ」

「そうだっけ。失念していたよ」


 フレデリカは自分の隣に座っていたメアリの指摘(してき)に、屈託(くったく)のない笑みを浮かべた。


「それなら知らないのも不思議じゃないか。遠征というのは、簡単に言うとダンジョンに(もぐ)りにいくことだよ」

「それは本当に簡単な説明過ぎて、キョーコ様だってよく分からないでしょ」

「あははっ。そうか」

「レクス貴学院では一年に二度ほど、ダンジョンがどういうところか知るために、実際に中に入って、体験するという学習が行われているんです」


 メアリがフレデリカに代わって、説明してくれた。


「へーそんなことしてるんだ」

「はい。神都レクスから馬車に乗って西に約一日ほど進むと、マルゴーという都市があるのですが、そこに私たちが遠征する第一ダンジョンと呼ばれている場所があります」

「なんでもウェルバ様が歴史上初めて発見したダンジョンと言われていて、それがきっかけとなって世界各地にダンジョンが発見されるようになったらしいよ」


 私は何気なく隣に座っていたファティを見た。するとファティは私にその青い双眸(そうぼう)を向けると、微笑して(うなず)いた。

 どうやらフレデリカの語った情報は正しいらしい。


「あれ? ダンジョンに潜るには許可証が必要だったはずだけど、遠征に行くみんなは持っているの」

「第一ダンジョンは許可証がなくても入れるダンジョンなんです」

「そうそう」


 メアリの言葉にフレデリカが相槌(あいづち)を打った。


「えっ!? そんなダンジョンがあったの」

「まあ、初心者向けのダンジョンだからね。大昔にお宝も強いモンスターも、取り()くされ、狩り尽くされて、攻略済みとなっているから、もう価値がほとんどないんだよ」


 どの世界でも同じだけど、価値のあるものは早い者勝ちらしい。

 と思っているとメイドさんが料理を運んで来てくれたので、会話を中断して昼食タイムになった。

 食事の途中で食堂を歩くルクレツィアちゃんと目が合ったけど、話しかけて来ることなかった。

 寝込んでいたそうだけど、見た感じ元気そうだ。



 午後の講義のあとは毎回剣の練習で、フレデリカは飽きもせず続けていた。

 その成果もあるのか、最初のころよりすぐにバテるということもない。

 剣速も上がっていて、それでも私にかすりもしないので悔しがってた。練習は無理はしないようにしているので、適度に切り上げ、学院を後にした。

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