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51.猛攻

「お前らも何ぼさっとしてやがる! 攻撃するんだよ。あの見た目だからって、躊躇(ちゅうちょ)する必要はないぜ。ようやく分かったが、あいつはこのダンジョンのボスだ」


 フォルティスさんが後ろにいる仲間に向かって、とんでもないことを言い出した。


「ちょっと、変なこと言わないでください。私はボスじゃありません!」


 変な噂を立てられては困るので、私は急いで反論した。


「じゃあ、何だって言うんだ。突然最下層に現れて、こんな所でバトルをしかけるなんて、ボスそのものじゃねえか」

「ボスね」

「ボス」


 フォルティスさんに続いて、エルザさんとフェーデちゃんまで私をボス呼ばわりしだした。

 このままでは本当にダンジョンのボスにされてしまいそうなので、もう一度反論しようと口を開こうとしたとき


「お喋りはおしまいだ。次は本気でいくぜ」


 とフォルティスさんが勝手に会話を終わらせてしまった。


 その大きな身体を少し屈め獲物を狙うような雰囲気になった次の瞬間──私の前に剣を振り下ろすフォルティスさんが現れていた。

 剣でその斬撃を防いだとき、フォルティスさんが


暴帝(ぼうてい)狂宴(きょうえん)!」


 と口にすると身体が一瞬赤く輝き、さらにスピードとパワーが増した剣撃が繰り出された。

 それも片手剣並み──いやそれ以上のスピードでグレートソードが迫ってくる。

 上段、袈裟(けさ)逆袈裟(ぎゃくけさ)、横一文字と滅茶苦茶の乱撃。

 さっきの言葉は攻撃系スキルの名称だったのかも。


「これを(さば)きやがるか。化物め! エルザー!」


 フォルティスさんが叫びながら、エルザさんと位置を入れ替えた直後──


 エルザさんが銀に輝く剣身を私に向って振り下ろした。

 それを剣で防いだとき──左肩の付け根辺りを何かで()でられたような感覚がした。

 ちらっと一瞬だけ左肩を見てみると、いつの間にか(そで)の部分が切れていて、そこから肌が(のぞ)いている。


「嘘!? 確かに斬った手応えがあったのに。血も出ていない⋯⋯?」


 エルザさんのその言葉で、剣を防いだのに袖が切れていたのは、何らかのスキルのためだったとわかった。

 でも腕に痛みはなく、動かすにも支障はなかった。



龍殺拳(りゅうさつけん)!」


 ──不意にフェーデちゃんがかわいい顔に似合わず、物騒なことを言いながら殴りかかってきた。

 その小さな拳は黄色い輝きを放っている。でも速くはなかったので、余裕で顔を反らし(かわ)そうとしたら


 ──それができなかった。

 腕で何とかガードしたけどその瞬間、ドンッ! という普通に殴られただけじゃ出ない音がして身体が弾き飛ばされた。

 拳を避けることができなかったのは、顔に飛んできた矢を(かわ)したため。

 こんな絶妙の連携ができるのは、弓の名手のパルティアさんに違いない。


 私は壁に激突する寸前で、足を壁際に向けた。激突音と共に、足元の壁が陥没して蜘蛛(くも)の巣状に亀裂が走る。

 私は壁を軽く蹴って、床に降り立った。足は何の問題もなさそう。

 殴られた左腕を見てみると、袖がボロボロに破けていた。どうしよう⋯⋯ファティから借りた服なんだけど。

 でもこれほどの威力があったパンチにもかかわらず、腕は何ともなかった。


 ──私が服に気を取られていると、風を切るような音が聞こえてきた。

 音のした方に振り向くと、矢が顔に向って飛んできている。

 その矢を剣で斬り落とした──と思ったら、まだ矢が飛んでいた。

 慌てて目と鼻先に迫った矢を顔を(ひね)って躱す。

 床を見ると矢が一本だけ落ちていた。

 多分だけど矢は信じられないことに、ほぼ同時に二本射られていたのだ。

 二本の目の矢が最初に射られた矢の後ろに、ピッタリくっつくような形で。

 パルティアさんの弓スキルだろうか。



 ──影?

 私がそんな考察に(ふけ)っていると、すこし辺りが暗くなったような気がして視線を上に向けた瞬間


「があああぁぁぁっっ!!」


 と野獣の上げるような咆哮(ほいこう)が辺りに(とどろ)いた。

 ()を描く閃光を私が剣で受けとめると、甲高い金属音を上げて激しい火花が飛び散る。

 獣人のセルウィさんが身体ごと落下して、剣の斬撃を放ってきたのだ。

 その姿はすでにライオンのようになっていた。

 さらにそこへフォルティスさんが加わって、グレートソードを私に向かって振り下ろす。

 二人の攻撃を受けて足元の床石がさらに陥没した。


「パルティア! 今だー!」


 フォルティスさんが絶叫するように合図送った。

 パルティアさんを探すと私の前方、約百メートルあたりで弓を構えている姿を発見した。

 (つが)えた矢が燦然(さんぜん)と光輝き、この一矢が尋常じゃないことを伝えてきている。



 ──そしてパルティアさんは矢から指を離した。

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