33.試験結果
個室の中はテーブルがあるくらいで、他に特に目につくものはなかった。
セレンさんに促されて、私はテーブルの前の椅子に座る。
ファティにも座るようにセレンさんが勧めてくれたんだけど、自分はメイドという理由で座ろうとしない。
私も無理に座らせようとせずに、その意思を尊重した。
セレンさんがおもむろに机の上に、小さな四角い金属片のようなものを置く。
「おめでとうございます。合格です」
──合格⋯⋯よかった。私は振り返ってファティを見ると、微笑んでくれていた。
私は前に向き直ると
「ありがとうございます!」
とセレンさんにお礼を述べた。
「このカードは迷宮探索者の証ですので、無くさないようにしてください。再発行はできません」
「もし無くした場合はどうなるんですか」
「迷宮探索者の資格を失います。もう一度、資格を得るためには試験を受け直していただくことになります。その場合、仮にランク10であったとしても、ランク1からになりますのでお気をつけください」
「わかりました」
結構シビアだ。無くさないようにしよう。
「それでは詳しいご説明をしたいと思います。ご存知のとおり迷宮探索者はランク制となっており、ランクは1から最高10まであります。ランク数でダンジョンの下りられる階数が決まっていますので、ご注意ください」
ランクで下りられるダンジョンの階数って決まってたんだ⋯⋯知らなかった。
「──ランクアップするためには、各ダンジョンに棲息する、あるモンスターが落とす魔石を入手して、ギルドまで持ってきていただくことです。モンスターにはランクが設定されており、そのランクに合わせてランクがアップします」
ランクアップの仕方はシンプルでわかりやすくていいかも。巫女の神域以外のダンジョンのことも、あとで本で調べてみようかな。
「倒すモンスターは教えてもらえるんですか」
「いえ、それは自分で見つけなければなりません。情報収集の能力もランクアップに必要な条件ですので。情報を集める方法は何でも構いません、誰かに聞いてもいいですし、本で調べても問題ありません」
「わかりました」
ネットがあればすぐに分かりそうだけど、地道に本で調べたり人に聞いたりして、情報収集するしかなさそう。
ファティは知ってるだろうけど、聞くのはつまらないし、どうしてもわからなかった時にだけ、アドバイスを聞くようにしようかな。
「またランクアップに必要な魔石も、どのような方法で入手しても構いません。誰かと協力したり、譲ってもらったり」
「それでは簡単にランクアップ出来ちゃいませんか」
「それはそれで構いません。その者にそれだけの能力があったということですから。しかしランクが上がれば上がるほど、ランクアップは容易ではなくなります。ランク4までは比較的に早く上がりますが、ランク5に上がるには十年かかると言われています」
「十年!」
「ランク5は一流のダンジョンサーチャーの目安で、年で一千万は稼ぐといわれています」
「一千万!」
迷宮探索者ってそんなに稼げるの?
「でも迷宮探索者は死亡率も高いので、キョーコさん。無理はしないでくださいね」
「はい。無理はしないようにします」
私の返事にセレンさんは微笑んだ。
「以上で説明を終わります。何かご質問はありますか?」
「いえ、ありません」
「それではキョーコさんは今から迷宮探索者です。頑張ってくださいね」
「はい。ありがとうございます」
私は迷宮探索者のカードをセレンさんから受け取ったとき、その軽さに驚いた。羽のように軽かったのだ。
見た目は金属片だったので、多少の重さがあると思ったけど。しかもすごく薄くて、紙よりちょっと厚いくらい。
これじゃ丁寧に扱わないと、すぐに折れてしまいそうだった。
話はすべて終わったようなので、私はカードを収納魔道具にしまって椅子から立ち上がった。
セレンさんも椅子から立ち上がると
「実はキョーコさんは期待のルーキーなんですよ」
と思いもよらないことを口にした。
期待されるようなことをした覚えはないけど。
「私が期待のルーキーですか?」
「そうです。あのガイウスとの模擬戦は、素晴らしいものでした。ランク7のガイウスに、手も足も出させなかったのですから」
そういえばガイウスさん、ランク7だった。一流の迷宮探索者だったんだね。
それなら期待されちゃうのも無理はないか。
「期待に応えられるように頑張ります⋯⋯」
「キョーコさんは成功します。いろんな迷宮探索者を見てきた私の勘が、そう告げるんです」
「あはは、勘ですか」
「勘も馬鹿にできませんよ。私の勘、結構当たるんですから」
「それは頼もしいです。私もセレンさんの勘が外れないように頑張ります」
セレンさんと別れて、迷宮探索者ギルドを後にした。
さっそくダンジョンに、と思ったけど許可証一枚では私だけしか潜ることが出来ない。なのでファティにも試験を受けて欲しいことを伝えた。二人で行きたいし。
するとファティは試験を受けることを了承してくれた。
試験はファティの魔法で、あっという間にガイウスさんがやられてしまって終了する。手加減はしたようで怪我はしていない。
後日、当然の結果のように、ファティは許可証をもらうことが出来た。
これで改めて一緒にダンジョンに潜りに行ける。




