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21.少女と不審者

 転移魔法陣のある倉庫に向かって路地裏を歩いていると、突然私の前を少女が横切った。

 普通であればなんでもないことで、すぐに忘れてしまったと思う。


 その横切った少女が必死の顔で走っていて、その後ろから数人の男女が追っていなければ。

 少女は建物の間に入って行ったので、その姿が見えなくなった。


「ファティ、ごめん。ちょっと行ってくる」


 私はそう断って、少女に追いつこうと駆け出した。



 勢いよく少女の入っていった建物の間に飛び込んだけど、すでに少女の姿も怪しい男女の姿も見えなかった。

 道も入り組んでいるので、どっちに向かったかわからない。

 困った⋯⋯と思っていたら

 

「キョーコ様。こちらを真っ直ぐ進んだところでございます」


 と追いついてきたファティが教えてくれた。 


「ありがとう」


 私はお礼を言ってから再び走り出す。

 


 

 路地裏をそれほど進まないうちに、さっきの少女が五人ほどの男女に囲まれているのが見えた。


「騒ぐな! 声を出せば殺す」


 少女は男に剣を突きつけられながら恫喝(どうかつ)されて、青褪(あおざ)めていた。

 私はさらに走る速度を上げると(またた)く間に男たちを飛び越え、少女の側に着地した。

 ファティもすぐに追いつき、私の側に華麗に着地する。



「な、なんだ。お前等は! 邪魔をするな!」


 男のひとりが、口から泡を飛ばす勢いで叫んだ。

 今なら相対しているので、その顔をよく見ることができた。

 男三人に女二人という構成だった。


「少女が不審者に囲まれていたら、助けに入るのは当然でしょ!」


 私を(にら)んでくる不審者の男に向かって言い放った。


「ちっ!」


 男が舌打ちをすると、目線で仲間に合図したのがわかった。

 すると不審者たちが問答無用とばかりに私とファティに斬りかかってくる。


 でもどうやら剣の腕はガイウスさん以下のようだ。

 剣速があまりにも遅い。

 私は背後に少女を(かば)っていたので、大きな動きをして剣が少女に届いてしまわないように気を付けた。


 まず斬りかかってきた男の右手を蹴り上げ、続いて女の(ふところ)に入って、上段から剣を振り下ろす直前にその腕を(つか)んだ。

 手を私に蹴られた男は、よろよろと後ろに下がって、右手首を左手で押さえながら脂汗を流していた。

 手首の骨が折れたかもしれない。

 ちょっとやりすぎちゃったかなと思ったけど、いきなり襲いかかってきたんだし、しょうがないと思うことにした。


 男が取り落としていた剣は近くにあったので、使われないように踏み折る。

 右手首をつかまれている女は、痛いのか苦しそうな声を出した。

 そんなに強く握っているつもりはなかったので、私は慌てて手を離す。

 すると拘束(こうそく)から自由になった女は逃げて距離をとった。


 ファティが気になったので見ると、その足元に二人の不審者が地べたに倒れていた。

 ファティは容赦(ようしゃ)なく反撃したらしい。

 ガイウスさん達に襲われた時も、普通に反撃してたし⋯⋯でも手加減はしてくれていると思う。

 これで動ける不審者は残り三人だけ。

 まあ、一人は手首が折れてまともに戦えないと思うけど。


 ここで女が剣を(さや)にしまうと、かわりに棒の様なものを取り出した。

 棒の先端には赤い宝石のようなものが()め込まれていた。まるでゲームに出てくる、魔法のロッドみたいだ。



「街中での攻撃魔法は重罪でございますよ」


 女はファティの忠告を無視して、魔法のロッドを私たちに向けて構えた。


「イフリートの火矢!」

「愚かなことを」


 女が魔法名らしきものを口にしたとき、ファティは冷ややかな口調で応じた。

 魔法を使った女の周囲の空間に、燃えている矢のような形をしたものが無数に出現する。

 (かわ)しきれない数ではないと思うけど、後ろに(かば)っている少女に当たってしまう可能性がある。


 どうすれば⋯⋯と悩んでいると、少女の身体が(あわ)い金色の光に包まれた。


「これでこの方の心配はございません」


 ファティが少女に防御魔法をかけてくれた。

 安心した私はイフリートの火矢とかいう魔法を使った女に向かって駆け出した。


 古代級地龍(エンシェントドラゴン)熱線(ブレス)にも無傷だった私には、イフリートの火矢に何の脅威(きょうい)も感じない。

 火矢のスピードもそれほどではないので、(かわ)しながら女の前まできたとき


「な、なんでよけれるのよ!」


 と動揺しながら私に向かってロッドを振り下ろしてきた。

 私はロッドを(てのひら)で受け止めると、(ひね)って女の手から奪い取った。


「あっ!」

「抵抗しないでください。これ以上何かしようとしたら、大怪我をするかもしれません。まだ手加減が苦手なので」


 私は女にロッドを突きつけながら警告した。


「わ、わかった。抵抗はしないわ」


 女は両手を上げて素直に従ってくれた。


「ちっ、引くぞ!」


 一番後ろに下がって様子を見ていた男が命令を下した。

 この男がリーダーなのかな。

 三人の不審者は気絶している仲間二人をそのままにして、走って逃げてしまった。


 仲間おいて行っちゃったよ⋯⋯

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