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『サンイン地方』の冬は汚い。定期的に雪に覆われ、それが溶けたり凍ったりしたものが点々と散らばっているのだ。
そんな光景の中、私は新入り組のカズマとリナ、カケルとシィを連れて『練習ダンジョン:森』へと通う毎日を送っていた。まあ、他にも暇を持て余した村の仲間も着いてくるのだけれど。カズマとカケルは『剣士』、リナは『薬師』、シィは『漁師』のジョブを持っているため、練習ダンジョンなら戦えるのだ。いや、『剣士』のカズマとカケルなら、鍛えればもっと難しいダンジョンにも行けるようになるだろう。
『練習ダンジョン:森』の敵は『レッサーウッドパペット』と言う雑魚だけで、木の棒で適当に殴っていたら倒せる。なので、ここで教えるのは、ダンジョンでの歩き方だ。モンスターとの戦い方は? 罠はどんなところにある? モンスターはどのようなものがいる? アイテムの使い方は? そのような基本を叩き込んでいく。何かあった時、ダンジョンに潜れるのは強味になるのだ。
その傍らで、薪を拾い、薬草を摘み、たまにキノコを採る。ジョブがあれば、ダンジョン内のアイテムがどのようなものなのか分かるのは強い。
そして、村に帰れば、薬師のキョウコに簡単な薬の作り方や応急手当を教わる。村長のヨシオカが『領都マツエ』で見聞きした情報によると、『王都キョウト』だけでなく『貿易都市サカイ』『港町コウベ』でも異邦人とヤマト人の間で闘争があり、春になれば『港町コウベ』と『地方都市ヒメジ』からの難民が『イクノ峠』を越えて『サンイン地方』にやって来そうなのだとか。そうなれば、薬や薪、食料はいくらあっても足りなくなる。
例え食い出のないキノコでも、あればあるほど状況は良くなるのだ。