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八月頭。噂をすれば何とやら、で。『王都キョウト』から大規模な移民が『領都マツエ』に向かって行われることになった。その主体がプレイヤー『異邦人』でなくNPC『ヤマト人』なことから、『王都キョウト』がプレイヤーの手に落ちたことを察しつつ、何度も村に滞在する、細かなグループに分かれた移民達に村の仲間達がアカマツの炭や魚の干物を売りつけ、私は村の警護に当たる。本当なら今頃お金儲けになることが出来ていたのになあ。
そんな中、珍しいお願いをとある移民の二人組からされた。
「あの、この村からダンジョンに潜っても良いですか?」
どうも、この二人組はプレイヤーの兄妹らしく、元いた世界では小学生だったのだとか。王都キョウトで起きた異邦人とヤマト人の間での闘争とその後の治安悪化から、王都キョウトを離れた方が良いと判断し、今回の大規模移民に参加したものの、路銀がもう尽きそうなんだとか。
村長のヨシオカの許可を取り、私は二人を連れて、二人のレベル帯的に一番稼げる『練習ダンジョン:森』へ潜る。馬鹿だけど優しい兄『カズマ』と、しっかり者の妹『リナ』の二人組は、すぐ戦いたがるカズマを抑えつつ木の枝を拾わせ続け、たまの戦闘で固まるリナを守りと中々大変なダンジョンアタックになった。
それでも結局路銀には届かなかったようで、暗い顔をする二人に、村長の奥さんのサナがこう言った。
「うちの子になりなさい」
遠慮する兄妹を、サナは強引に口説き落としたサナと嬉しげなヨシオカに尋ねる。
「食料は大丈夫なの?」
「団栗の量からして、あと二人はいけるなあ。あと、移民から栗の苗木を貰ったから、防砂林の拡張に合わせて栗園を造るし、まあ大丈夫だろう」
結局、半月続いた移民の列が過ぎた後、村には子供が四人増えていた。