13Chain.ワープできる祠があった
氷の領域を解放したオレとレオンハートさん━━というか実質オレ一人の成果だが━━が王都ウルフロアに帰還すると。
すでに変化に気づき、オレたちが魔物の親玉を倒したことを理解した民衆や騎士団、城の関係者なんかが大勢出迎えてくれて、なんだかちょっとした祭りみたいになっていた。
群衆の中から出てきたぽみえが歩み寄ってきて、目の前に立つ。
「まずは最初の地域を解放したねー。おめでとう、そしてありがとねー。実際どーだった、タクマさん? 難儀はしたのかなー?」
「いいいぃや、らっく、らくらく楽勝だたーよぉ!」
嘘じゃなく、本当に楽勝だったからオレは事実のみを伝える。なんの苦労もなく、もちろん怪我一つ負っていない。
「いやー、そうかそうかー。やっぱりもう、タクマさんに敵はなさそうだねー。もう、街のみんなはタクマさんにホの字で、本物の英雄が現れたって大騒ぎなんだよー」
まあ、ぽみえがそう言ってる間にも歓声がすごいんで、わかってるんだけど━━いやほんと実感しにくいというか、まさに夢見心地というか。なにしろ英雄どころか全校生徒の奴隷、みんなの下僕として生きていたオレだから、マジでこの状況は現実離れしている。異世界に来たって時点で現実からは離れたようなものかもしれないが、それでも、今はこれがオレの生きる現実だ。いずれは慣れなくちゃいけない。
慣れっかなー。自信ないなー。
「それはそうと、もう言ってある通り、解放してほしい地域はまだまだ世界中にあるんだけど━━タクマさん、どんな感じのペースで行こうか?」
ぽみえなりの気遣いと、最終確認なのだろう。オレはそう理解した。
とりあえず一つの地域を解放したことで、ぽみえはもうオレなら可能だということは確信したはずだ。オレにしかできないということも併せてな。
だからこそ、確認してくれたのだ。
が、オレの答えは決まっている。これももう、考えてあった通り。方針を変えることはない。
「すすぐっすんぐ、ぐっすんおよ、すぐに次の、の、次の地域に行きますぅ……休まなくても、いけますぅぅぅ。あ、メタタ、メタル化化化してればですけど、しし、しますぅ」
メタル化した。オレとしたことが抜けていたものだが、休みなしで次に行こうとするのなら、ずっとメタル化してなくちゃいけない。生身の時間━━スキルを解除している間は普通に疲労していくし、腹も減る。だから、なるべくずっとメタルボディでいるべきだった。
さすがに魔物を倒したことで、達成感があったから……つい解除したまま来てしまった。
「ほんとに休まなくていいの? まあ、こっちとしてはありがたいけど。別にそんな慌てなくったって、生き残ってる人の数なんて、この期に及んでたいして増減しないからねぇ」
ぽみえ、わりとテキトーなやつかも。ほんとにこの世界を救いたいんだかどうなんだか、わからんくなるわ。
「騎士団長は戻っちゃったけど、連れて━━来なくていいよね?」
「あ、あい、だいじょーびだ。ですっ!」
逆にいないほうが気楽だしな。
こっから先は、オレの仕事だ。メタルボディの神となったオレだけがなせる仕事なんだ。
「ほんじゃ移動用の祠にいこっか。世界各地の主要な場所に簡単に移動ができるよ。もちろん、移動先は安全な場所だからね。とりあえず祠の説明と、あとは世界地図だね。魔王の配下が支配している場所をマークして渡すね。それを参考に、片っ端からやっつけちゃっていーからねー」
なるほど。テレビゲームでもないのに祠から祠に移動できるなんて、さすがは異世界といったところか。ともあれ歩いて行かなくていいってのは助かるかな。いくら疲労しないって言っても、世界中を歩くとなれば気持ち的にしんどいからな。しかも、どんくらい広い世界なのかもわかんないのに。
で、ぽみえに渡された世界地図を広げて見ても、いまいちよくわかんなかった。
オレの元いた世界と同じようでもあるし、それより広くも狭くも感じる。つまり、まったくわからない。縮尺もわかんない。まったくなにもわかんない。ただ、祠の位置関係と、魔王の配下が支配しているとされる地域だけははっきりわかった。わかりやすい。わかりやすく薄い赤色の塗料でテキトーに塗りたくってあるから……。まあ、だいたいその辺りを探せってことだな。よし、行き当たりばったりでやろう!
移動用の祠とかいうやつは、城下町の中に普通にあった。ただし、厳重に施錠されていて、誰でも気軽に利用できるものではないらしい。
中に入り、ぽみえから説明を受けた。
文字みたいな記号みたいな、そんな模様の書いてあるパネル状の石がある。文字は百以上の数がありそうなほど、いっぱいある。数えるのは、今はめんどくさいからやらない。その一つ一つが押し込めるようになっていて、その組み合わせで移動先を指定できるように作られているらしい。右下のリセットボタン的なやつを押せば、押し込んだものがすべて戻るそうな。
「簡単でしょ、覚えたね。もう覚えたね。ほんじゃさっきの地図見てー。ね、そこに書いてある記号を全部押し込めば、その祠に移動できるよ。言ってもあれだから、実際にやってみよーか。まずは……この辺でいいかなー。けっこうヤバい針金モンスターがいる地域だけど、タクマさんには関係ないからねー。ほい、ほい、ほいっと。これで行き先の指定はできたよ。できたら最後にこっちのレバーをガチャリと引くとぉ━━」
のわっ!
密閉空間な祠の中に光が満ちて……なんも見えない!
そんでなんか温い……なんか温いし……あっ、気持ち悪ぃ……身体が溶けるみたいな、捻れるみたいなぁ、視界がうねってぇ━━あ、意識飛んじゃう。逝くぅ~ん……。
━━オレはまだ心の準備もしてなかったのに、ぽみえは瞬間移動ワープ装置を起動させやがり、オレと一緒にかなーり遠くの地域にまで、一瞬にして移動したのだった。




