51話 俺は魔法が使えない!
「こっちだ!早くしろ!」
「はぁ…はぁ……わかりました!」
サーリスさんを先頭に警察チームの陣地へと突入したが、すぐに敵の一斉射撃が始まりここ数分間、攻撃の手が緩むことはなかった。家の影に隠れながらゆっくりとは前進しているが、次第に家も倒壊して行き、後がなくなりつつある。
「兄さん、何か手はないの?このまま隠れててもらちがあかない。」
「まぁ焦るなサリー。今までの攻撃で敵の中枢部隊の見当がついた。さっきの特大魔法弾を撃った奴がそこにいるかはわからないが、まずはそこを叩く。」
「叩くって…この人数でですか?無理ですよ、敵が終結しているんですよ?対してこちらは十二人です。戦力差は歴然じゃ…」
「そう心配するな司教様。かつて『ストラシアの軍師』と呼ばれたこの俺が突破口を開いてやろう。」
凄く不安だ…
それから俺達は二手に別れた、北へ向かう班と南に向かう班に。北へ向かう班には精鋭を集めることとなり、サーリスさん、サリー、そして………俺だ。
「な、なんでですか!?」
「え?なんでって司教である君が居れば戦力として心強いと思って。何か問題が?」
「問題ですよ!大問題っ!この際、言っておきますけど!魔法使いだっていう自覚をもったの今朝ですからね!魔法なんて一切使えないですし、ましてや魔法使いの戦闘なんて全く知らないんですよ!」
「え、ソータ君?」
「え、ソータ?」
二人はキョトンとした目で見つめた後にすぐに現実を知り、ムンクの叫び顔負けの顔で驚愕した。
「そ…それは本当か?でも…だってさっきもなんか強者を匂わせるような雰囲気を漂わせていたではないか!」
「そんな事言われても…」
「魔法が使えないのに参加したの!?はい!?バッカじゃないの!?死にたいの!?」
「いや、そんなツンデレヒロインみたいなセリフを返されても…。黙っててすいません、できる限り戦おうとは思いますが、命が惜しいのでいざという時は逃げさせてもらいます。」
「ソータ君、この際しょうがない。神の力を使ってしまえ、うまくやればきっとバレないだろう。ククク…」
サーリスさん目の下に影を作り不気味に笑う。悪い大人の顔である。はぁ……なんでヤンドルの人は皆、不正行為を平気でしようとするのだろう…
「ま、不正行為をするのもいいが!それだとバレた時の始末が面倒だ。それにこの作戦には魔法は不要だ。いいか?俺達が今からやるのは『囮作戦』だ。」
「囮…ですか?あの…それは…危険な作戦でしょうか?」
「大丈夫!よく見て避ければ問題ない!」
凄く不安だ…(二回目)
そして…作戦が始まる。初手はサーリスさんだ。道の真ん中に立つと、フィールド全体に聞こえるようなでかい声で叫んだ。
「おーいっ!警察チームのアホ共!俺はストラシア大陸最強の男、サーリスだ!君らみたいな雑魚がまとめてこようがノミ程度の障害にしか過ぎない!さぁ誰でもいい、今ならいつでも相手してやるからかかってこい!」
何だこの小学生レベルのからかい方は…さすがにこれにのる奴はいないだろ…
「なんだとゴラァ!?もっかい言ってみろ?」
「なめた口聞いてっと、のめすぞ?」
「姉貴、こいつぶっ殺してやりましょうよ!」
家の屋根の裏から数人の男が現れた。全員、黒い革ジャンを着ていて、髪は金や赤に染まっている。見ての通り、THE不良集団だ。
ていうか、こいつら普通にのってきたな…




