50話 子供の要求は優しくない!
「全員ふせろっ!攻撃が来るぞ!」
サーリスさんの声と同時に進軍する泥棒チームを巨大な魔法弾が襲った。魔法弾は町の中心にそびえていたバリアを突き抜け、一直線にいくつもの建物を破壊した。
魔法弾の発射地点は警察側のフィールドの端。そこには銀髪の男と燕尾服を着た男がいた。銀髪の男は銃口から煙の出ている二メートルほどの銃を肩に担ぎ、燕尾服の男は双眼鏡で魔法弾の着弾地点を見ていた。
「どうだ。何人倒れた?」
「7…8人程度でしょうか、着弾する直前に全体が回避行動をとっています。先頭のサーリス・フレーアの指示かと。」
「ほぉ、さすがは大陸トップ魔法使い、並みならぬ判断力だ。セバスチャン、魔力が溜まり次第、次の攻撃を実行する。敵の動向を随時報告しろ。」
「はっ、了解いたしました、シルバード様。」
「ケホッ…ケホッ…おい…今の攻撃…一体なんなんだよ…?」
「し…知らないわよ。急に敵側の奥の方から飛んできたように見えたけど…どっちにしろ、被害は最悪よ。」
サーリスさんの指示でなんとか魔法弾を避けることができたが、辺りには破壊された家々の瓦礫が散乱し、土煙によって視界が塞がれている。
「二人とも怪我はないか?」
「サーリスさん!無事だったんですね?俺達は大丈夫です。他の人たちは?」
「何人か魔法弾に当たって負傷している。どうやら敵には広範囲攻撃を易々と遠距離で放てる奴がいるらしい。なんとなく、誰だが予想はついているが、まずは怪我人の手当てが最優先だ。全員で固まって動くのも危険だ。だから防御魔法を使える者を中心に半数を教会に撤退させる。俺はこのまま進むがお前たちはどうする?」
ここから先に進もうが、教会に残ろうが、さっきの超威力の魔法の射程範囲内ってことか。どっちにしろ逃げ道はないって事か…
「体を張るっていうのはキャラじゃないですけど、教会に戻ってもできること何もないですし、俺も戦いますよ。」
まー後、どんな魔法使いがいるのか気になるしな。隣の大陸様が攻めてきたときの想定訓練と思えば良い経験だ。
「ありがとう、心強いよ。サリーは?」
「行かないと怒るでしょ?良いわよ私も行くわ。七年もヨクセルで魔法の修行したんだし、その成果を確かめる良い機会かもね。」
「うぅ…我が妹ながらなんと勇ましいこと…」
「ちょっと!恥ずかしいから泣かないでよ!」
結局、泥棒チームは半数以上が教会に撤退し、ヤンドル村の選手全員に各村の精鋭が数人ずつ足される形となり、残った人数は20人に満たなかった。
「思ってたより少ないな…ヤンドル村がほとんどじゃないか。良いんですか、サーリスさん?皆、結構ビビってる感じでしたよ。」
「そんなもんだろう。うちは普段から狩猟を家業としている族だ。普段、普通に町で生活している彼等からしたら、この状況による精神的ストレスは相当大きいはずだ。ヤンドル以外の残った者もギルドに所属する戦闘に長けた冒険者だけだ。つまり、この人数でなんとかしなきゃいけないんだ。」
「えーでも…ヤンドル村にはサルヤ君もいるじゃないですか?子供も戦っているのに、大人が引き下がるなんて…」
「子供って言うな!その辺の大人なんかより、俺の方が何倍も強い!」
割と静かだったサルヤが目を鋭く光らせ、俺を睨んでいる。こいつにもフレーア家の血が流れていることを改めて実感した。
「ご…ごめんな。いやでも…亀の甲より年の功っていうことわざもあるし。」
「ソータ君がそう言うのもわからなくはないな…よし。サルヤ、お前は教会にいる人達を守ってくれ。」
「えぇ!なんで!俺は戦いたいんだよ!肉屋のおじさんより俺の方が強いし!」
「シクシク……そんなにはっきり言わないでくれ…今にも逃げたくなる…」
「すまない六代目。あまり気にするな、悪気はないんだ。」
涙を袖で拭く肉屋のおじさんをサーリスさんがそっと擁護する。泣かせた張本人はまだプリプリとまだまだ文句ありげな表情だ。
「いいかサルヤ。これはお前を天才魔法使いと見越しての判断だ。まぁ別に強制はしないが、それはお前がそれまでの男だということだ。」
「パパ……今なんて?」
おっと…さすがはサーリスさん、子供の扱い方をよく理解している。
「わかったよ。その頼みを聞いてあげるよ!その代わり帰ったら!『魔法戦隊マジックジャー』のオモチャ買ってよね!」
おっと…さすがはサーリスさんの息子、大人の財布の使い方をよく理解している。それにしても、そんな特撮ヒーローがいるのか。ヨクセルに帰ったら見てみよう。
「い、いいだろう!パパの財布をなめるな!約束しよう!」
「約束だよ!」
なんと末恐ろしい子供なんだろう。




