5話 俺は戦争家じゃない!
午後になると3人はリーバスの町を後にし、近くの村へと向かった。
「結局ギルドの奴等、誰も仲間になってくれなかったな。」
「ギルドに追われていた奴を仲間にしますなんて報告すればそうなるよね。」
「なんか、すいません。」
「いいのよ。まだまだ時間はあるわ。仲間もゆっくり探せばいいのよ。」
「あの、これからは敬語でいかせて貰います。そっちの方が読者にはわかりやすいので。」
「いい配慮だね…素晴らしいよ。で、サリー、次いく村は?」
「よくぞ聞いてくれたわね!今からいくのは私の故郷!ヤンドル村よ!」
「病んでるのかその村?」
「ち、違うわよ!!ヤンドルよヤンドル!」
「出身はトウキオじゃないのか?」
「トウキオに住み始めたのは5年前よ、それまでは村にいたの。」
「へぇー。旅の前に家族に報告ってとこか?」
「それもあるけど、もうすぐ兄さんに子供が産まれるの。だから、色々あると思うから手伝いにいきたいの。」
「そういうことなら、いくしかないな。」
瞬間移動の魔法は体力を使いすぎ、一日一回が限度となるため村までの移動は馬車を使った。ジェスは車酔いでぐったりとしていた。
「大丈夫?」
サリーが魔法でジェスの酔いを緩和する。
「ありがとうございます…助かりま…ウェ…《自主規制》」
「なんで幽霊なのに酔うんだよ。」
「それはこっちが聞きたいですよ…」
「できるだけ魔法で軽くしてあげるわ。」
「そういえば、お前の兄さんも魔法使いなのか?」
「そうよ。ヤンドル村は全員が魔法使いなの。」
「全員魔法使いかー、強いのか?」
「えぇヤンドルの魔法使いは強いわよ。特にうちの兄さんは大陸でも名の通る天才魔法使いよ!」
「ブラコンかって」
「さて、そろそろ見えてきたわよ!」
草原の中の300人規模の村『ヤンドル村』。その村の入口には何十人もの人々が立っていた。
「おかえりサリー!!」
「ただいま!みんな!」
「その子達は友達かい?」
「うん、私の新しい仲間よ。」
「颯太です、よろしくお願いします。」
「じぇ…ジェスです。よろし…ウェ!《自主規制》」
「私の魔法じゃ治んなくて…大丈夫かな…」
そこへ一人の男が現れ、ジェスに手を近付ける。するとだんだんとジェスの顔色が良くなっていった。
「か、軽くなった…ありがとうございます!」
「サリーもまだまだだな。後で回復魔法を教えてやろう。」
「ありがとサーリス兄さん…ただいま。」
「おかえり。で、君達がサリーの友達か。いつも世話になってるようだな、感謝するよ。俺はサーリス・フレーア。今日は俺の家に泊まるといいよ。」
「ありがとうございます、お兄さん。」
サーリスの家にいくとお腹の膨らんだ女性が玄関に出てきた。
「サリーちゃんお帰りなさい。」
「お姉さん、動いちゃダメですよ!安静にしてなきゃ。」
「大丈夫よ。予定日は5日後よ。」
「もう…」
その日の夕方、彼女の陣痛が始まった。安定の流れである。
「医者を呼べ!今すぐ!」
「ダメだ、医者がいる町はここから10キロも離れている!間に合わない!」
村の者たちが慌てるなか、颯太は自分の体に大きな力を感じていた。
(なんだろう、急に頭が冴えたような…)
颯太の目がピンク色に光り始める。それを見た者たちが驚きながら颯太を見つめる。
「みんな俺に任せろ。」
「そ、ソータ!?め、目が!」
「奥さん、まずは深呼吸して。」
「フゥ…ンン!!…」
颯太が彼女のお腹に手を当てる。すると手から出たピンクの光りがお腹に入っていく。
その様子をサーリスが見守っている。
「な、何だ…あの光。ま、まさか…」
苦しそうな顔がだんだんと和らいでいく。
「これで痛みはかなり緩和されたはずだよ。さぁこのままいくよ。」
20分後、颯太に一人の赤ん坊が抱えられた。
「元気な男の子です。おめでとうございます。」
颯太が部屋から出るとそこにサリーとジェスが待っていた。
「ソータ!あなた助産師だったのですか!?」
「見直したわ!」
「え、俺…なんでだ…。」
(なんであんな気持ち悪いセリフ言えた!!そもそも俺に助産なんてできるわけねぇだろ!!)
颯太は自分が何故、助産をできたのか全く理解できていなかった。
「おい!ソータ君!君は一体何者だ?」
「お、お兄さん…。」
「さっき、お前が妻の陣痛を和らげたくれるために現れた光はなんだ?」
「まぁ隠していても仕方がないし…いずれか話さなければならないと思っていた。」
「ソータ?」
「俺は『神の力』を持つ者だ!」
「う…嘘でしょ?…」
「やはりそうか。あんなことができるのは奴等だけだ。」
「だが、俺は奴等とは違う!!戦争なんて…」
「誰しも大いなる力に溺れてしまうのじゃ。」
家に一人の老人が入ってきた。
「村長、彼は『神の力』を持つ者です。」
「村に入ってきた時からわかっておるよ。」
「お、俺はそもそも自分の能力を知らないんだ!!さっきだって無意識に!」
「なるほど…自らの力を理解していないという訳じゃな。」
「お前に本当に戦争をしないと言い切れるのか?」
「そ、それは…。」
颯太が受け答えに迷った時、突然、颯太のポケット中が光り始め、箱が現れた。
「は、箱?」
「急に箱が…魔法ではない大いなる力と同じものを感じるわい。」
箱の中には一通の手紙と金のペンダントが入っていた。手紙にはこう書かれていた。
『元気にしておられますか?先日、あなたの能力を伝えるのを忘れてしまいましたのでここに遅れて申し上げます。ソラより。』
(なんて嫌なタイミングで送ってきやがる…そもそもどんなシステムだよ。)
颯太が箱からペンダント出し、ぶら下げながら見る。
「なんだこれ?」
「そ、そのペンダントは…間違いない。」
ペンダントについていた蓋が開いた。蓋が開いたペンダントにはこう書いてあった。
『エロ神』
「それが主の神の力の名じゃ。!そのペンダントは神の力を持つ者の証!」
「え…エロだとぉぉ!?なんだよ!それ!!」
「エロとはまた、ホホホ…。」
「笑うな!!!くそっ!なんでこんなことに!!」
「まぁ良い。貴様が本当に自分の力に関して知らなかったことを証明することができたのは、事実であろう。今日はゆっくりと寝なさい。」
「あぁ、そうするよ…。トホホ…まぁありがとう村長…」
借りた部屋に向かうソータの元にサリーとジェスがかけよった。
「まさかあなたが『神の力を持つ者』だったとは。なんで黙ってたの?」
「お前がソイツらを恨んでいることを知ってたから…言い出せなかった。」
「全くそんなことか…。あなたとはまだ会ったばかりだけど…なんていうか…」
「あなたはいい仲間です。私はあなたを信じます!」
「私のセリフとらないでよー!」
「ふ、二人とも…ありがとう!」
「それにしても…え…エロ神とか!ハハハッ!!」
「ジェス!!この野郎!!」
颯太の神の力、『エロ神』。その力の実態はまだわからない。だが、颯太は自分が神の力を持つということを自覚、さらに仲間との絆を深めた。




