42話 狸と狐の喧嘩は見たくない!
「はぁ…はぁ…」
サーリスさんから貰った仮面、暑いし呼吸しずらいし最悪だ。結局、手で顎の部分に隙間を開けて歩くことにした。
2分くらい歩いてやっと審査員席につくと、村長が隣の老人と強い口調で何やら話していた。
「今年も優勝はヤンドルが頂いた。毎年毎年、負けるとわかっていて何故挑んでくるんじゃ?おとなしく競技場の端で草むしりでもしてたらどうじゃ?」
「笑わせるなヤンドルのアホ狸、三年連続勝った程度で調子に乗るな。」
「なんじゃと!?このバカ狐が!!お前の心を読んでやる!!!ドレドレ……なるほど、本当に勝てると思ってる用じゃな、真のバカめ。」
「くぅぅっ!…ムカつく狸め!!!」
「今年のヤンドルにはサーリスの息子に加え、強大な力を持ったスケットが入った。」
多分、俺の事だ。
「この過去最高の布陣に貴様らワープラ村の連中がなすすべなく叩き潰される様子が目に浮かぶわい!」
「残念だが、今年はこちらにもスケットが入ったんじゃ!ホレ、ワシの心を読んで見てみろ?」
「ほぉ?……な!?こ、これは!?」
「『頂魔四天王』の一人!!『龍槍のジンスラ!!!』」
「や、奴は北の大陸の魔法使いだ!何故、この大会にいる!?」
「この大会は魔法使いであれば条件なく誰でも参加できるんじゃ。奴がストラシアでの旅をしている時、ワシの村のもんが偶然出くわして、この大会の事を教えたら是非出たいと向こうから言ってきた。」
「そ、それはチートじゃ!!!違反行為じゃ!」
「チート!?大会規約には何も書いておらんわ!!!」
「んぐぅっ…!」
「さて、これ以上の口論は無駄じゃ。今年審判の仕事は回ってこなかったから観客席からゆっくり応援させてもらおうとしよう。おっと、お前は一日中ここで審判か、こんな所にも地位の差があるみたいじゃな。せいぜい審判頑張れよ、アホ狸。」
そう吐き捨てると老人は椅子から立ち上がり、俺とすれ違う形で審査員席から離れていった。
さて俺は今、村長になんと声を掛ければいいのだろう。
「エロ神、そんな所にいないでこちらへ来ないか。」
「は、はい!」
こっちは仮面を着けていたのに声を掛けられ少し焦ったが、それよりもここにいたことがバレていた事への気まずさが沸いてきた。
「あの…」
「あんなやつの話に流されたりなんぞしない、安心せい。」
よかった…
「おい、エロ神。」
「なんでしょうか?」
「この大会、負けは許されないっ!!!奴等が我等に喧嘩を二度と売れない様に徹底的に叩き潰せっ!!」
あ…
「………すまない取り乱した。」
そして、しばらく間が開いて
「無事到着できた様じゃな、ジャストには後で礼を言うのじゃぞ。」
「本当に全部お見通しなんですね…こっちとしては隠し事も出来ないんでかなり怖いんですけど。」
「隠し事なんぞするもんじゃないぞ、隠すという行為はストレスが溜まるんじゃ。まぁ、ワシ自身としては相手の隠し事を透視魔法で覗き見するのが楽しくて仕方ないがな!!」
この人もやっぱ癖強いな…
「あ、さっきの強大なスケットって、俺の事ですよね?」
「無論。」
「俺、まだ一つも魔法使えないですけど、いいんですか?」
「あ」
「え」
「言われて見ればそうか…どうすればよいのじゃ?」
「そんなの聞かれてもわからないですよ!!」
てっきり魔法の使い方とか教えてくれるのかと思ってたけど…これって…詰みだよな?
「開会式まで後何分じゃ!!!」
俺は近くの時計を見つめ、さらに焦った。
「10分…10分です…」
「10分…」
そもそも魔法は普通に生活していて急に発現するものであり、今の俺はその段階にすら達していない。それを10分でなんとかするなんて不可能な話だ。辞退しようにも300万サルトが邪魔をする。よって俺ができる事は、
「魔法なしで挑む‥.ってことですよね?」
「それしかない…」
「嫌ですよ!!!絶対ムリ!!!なんで魔法使いの大会で魔法使わないんですか!?ムリですムリムリ!!!」
「ムリムリ星人かお前は?」
「そんな星ないですよ!!」
あぁ…どうせトーナメントで戦闘みたいなのがあるんだろ…。そんな所で魔法なし状態で戦える訳あるか!魔法使いの炎やら何やらでなぶり殺しにされるわ!!
「村長おぉぉぉっっ!!!ダズゲデェェッ!」
「鼻水をつけるなっ!!わ、わ、わ、わかったから落ち着けっ!!わ、ワシがなんとかしてやるから!!」
「ほ、ホンドウデスガァ!?」
「うまくいく保証はないが…あの方法でなんとかして見せる。いや、きっとお前なら成功する…と祈りたい…」
「なんか自信無さげじゃないですか?」
「あ、安心せい!!開会式までの10分でお前を立派な魔法使いにしてやる!!!」
「そ、村長っ!!!」




