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俺は「エロ神」じゃない!   作者: 柳原テツロウ
二章 魔法世界編
39/60

38話 最強魔法使いは大人気ない!

 村へ戻るとなんやら、村の入口に人だかりができていた。なんの騒ぎと近づき、人だかりの中心を見る。


「し、しまった…」


急に青ざめた俺に横を歩く三人が首を傾げるが、俺は説明せずにその場を立ち去るぞジェスチャーをした。が


「エロ神様、どうしたんですか?」


「何から逃げようとしてるんだ?」


「さすがエロ神様!」


「ちょ、声がでかい!」


特に最後のキジールの声が致命的だった。人だかりの中心から一人の女の声が響いた。


「そこにいるのかぁ!!」


そして、人々をどかすようにズカズカと人だかりを抜け出し、俺を睨んだ。


「や、やぁサリー。えっと…何かな?」


「ほぉ?しらを切るのね?いい度胸じゃない。」


サリーが両手を広げ、両方の手のひらに青い炎を灯す。いつもハンバーグを焼くときに便利な魔法に初めて恐怖を感じた瞬間だった。


「い、いいのか?俺が神の力を使えば魔法なんて軽い軽い。」


本当は体力が切れて力は使えないが、ここはごり押しだ!!


「魔法が軽いか、フフフ、じゃあ食らってみる?さぁさぁみんな下がった下がった。」


人々を村の方に引き換えさせ、俺の横にいた三人にも自分の後ろに下がるように指示した。


「あのお姉さん何するんでしょうか?」


「物理魔法でこの変丸ごと吹き飛ばすとか?」


「さすがサルラ!」


なんやら恐ろしいことを言ってるが、この会話がまんざらでないことは数秒後にわかった。


「今、この天神によって裁きを受けよ!」


「は!?」


両手を広げ、サリーがそう唱える。


「美香さんの神魔法じゃねぇか。お前じゃ使えないだろ?ハラハラさせるなって、冗談だろ?」


「空と地面見てみなよ。」


「!?」


いつのまにか上空と足元に巨大な魔方陣が張られていた。そして、ビリビリと閃光のようなもなが飛び散っている。もう魔法発射の用意は整っているらしい。


「ご、ご、ご、ごめんなさい!!!!勝手に何も言わずに先に行ったことを許してください!」


「何?聞こえないんですけど、別にこんな魔法くらい神の力で余裕で防げるんでしょ?」


「あぁ…」


ダメだ…完全にキレてる…。一日に二回も死を覚悟するなんて、しかも片方は仲間からっていう…


「おい、なんの騒ぎだ?お…これまたデカイ魔方陣だな…」


そう言って現れたのはサリーのお兄さん、サーリスさんだった。どうやら、救われたようだ。サーリスさんは二つの魔方陣に挟まれている俺を見ると、ため息を漏らしながらサリーの方に顔を向けた。


「サリー、これはお前の仕業か?今すぐ魔法を解除しろ。」


サーリスさんの厳しい顔はかなり恐かったが、今は俺にとっての救世主だ。


「兄さんが来ちゃったから今回は許してあげる。」


「ほ…」


「だけど、次はないよ?」


「はい…」


ブツブツと文句を言いながらサリーが村へと戻っていく。その様子を遠くから苦笑いしながら村人達が見ていた。なんか色々と面倒くさいことになってるがこの村に来たんだ、こんなイベントは想定内だ。


「妹がすまないなソータ君。」


「いえ、悪いのは俺です。自分勝手に行動してサリーに迷惑を…あんなに怒るんですねアイツ。」


「俺もあんな感じのサリーは始めて見たけどな。」


「え?」


「昔はオットリした性格だった筈なんだけどな。ヨクセルで君たちと生活する間に少し凶暴になったんじゃないか?」


まぁ思い当たる節はなくはない。ジェスやパールみたいな気の強い奴等や美香さんや翔弥さんみたいな変な人達と過ごしてたきたんだ、それは性格も変わるだろう。


「なんか、すいません。」


「な、なんで謝るの!?」



結局、その日はサーリスさんの家に泊まることになった。魔法使いかどうかの検査については村長の家を訪ねたが明日こいと言われ、やることも泊まるところもなかった俺にサーリスさんが声を掛けてくれた。ちなみに村人にボゴされたジャストも一緒に泊めてくれた。本当に良い人だ。


「コラ!サルヤ!野菜を残すな!」


「そうよ、ちゃんと食べないと大きくなれないわよ。」


「嫌だ!俺は肉しか食べない!それにほら、おばさんだって残してるじゃねぇか!」


「そんなバカな話あるわけ…おいサリー。」


「あ、後で食べるわよ…ハハハ」


俺は今、サーリスさんの一家と共に夕飯を食べている。さっきのガキ三人のうちの一人が俺が出産に立ち会ったサーリスさんの息子だったことには驚いたが、俺が最初に力を使ったのはサーリスさんの奥さんにだから、そりゃあそうだ。


「あの、司教様?随分と騒がしい食卓ですね。」


「いいじゃねぇか、楽しくて。」


隣に座るなんか色々とボロボロのジャストが頬杖をつきながら、フォークで目の前の皿の肉を食べる。するとその様子をみたサーリスが


「サルヤ、あの男を見ろ。あーやって肉ばっかり食ってるから弱いんだ。強い魔法使いは野菜と肉をバランス良く食べねばならない!」


「おいそのセリフは聞き捨てならねぇな?お前の言ってることが正しけりゃお前は俺より野菜を食べてないってことになるぞ?」


「は?何を言っているのだ君は?それではまるで俺が君より弱いみたいではないか?昔よりは冗談がうまくなったな若造。」


「くぅ…!!ムカつく!!表でろ!!今すぐぶちのめしてやる!このアホ親!!」


「なんだと!?力の差を教えてやる!!チャラ男!!!」


この大陸の最強の魔法使い二人が何をやっているのかと突っ込みたくなるが、俺もいつ子供の教育素材にされるかわからない。ここは静かにバランス良く食事をしよう。

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