34話 ここはスタ○じゃない!
「颯太、こんなのどう?」
「それお酒入ってるから、双子が食べれないぞ。」
「あ、本当だ。」
ここは超文明都市トウキオ、高層ビルが立ち並び、空を車が飛び交っている。俺達は高層ビル最上階の高級店で双子やジェス、パールへのお土産を選んでいた。
「美味しそうだし、ジェスとパール用に買ってくか。シオンとレオンにはこっちのフルーツゼリーにするよ。」
商品をかごに入れ、レジに出すと女の店員が俺の顔をジロジロと見てきた。
「あの、何か?」
「い、いえ。モンジル教団の司教様に似ていらっしゃるなと思いまして。」
さすがにこっちでも顔は知れてるかぁ。そういえば道を歩いててすれ違うとみんな振り返るし、さっきから他の客からも見られてる気がする。
「よく言われるんですよ。僕はただの会社員です。しかし彼みたいな天才に間違えられるなんて光栄な事です。」
と若干自分の株も上げながら、人違いだと告げた。俺を見てた他の客たちもなんだ別人かという感じで視線を商品に戻した。
会計を終え店を出てエレベーターに乗り込むと、サリーが耳打ちしてきた。
「なんで嘘ついたの?別に隠す必要もないでしょ。」
「それがそうでもないんだよ。モンジル教団の存在に気が食わない者達がいたとしたら?」
「そ、そんな人達がいるの!?」
サリーは思わず声を張り上げた。
「シィーッ、声がデケェよ。例えばの話だよ。まぁでも、ほぼ確実にいると思う。権力を持つ者には少なからず敵はいるものだからな。」
「さっきの店員さんとの会話聞いてても思ったけど、自分のこと超天才政治家だとか思ってない?」
「…まぁ…ちょっとだけ。おい、なんでため息をついた?」
「あんたが司教になれたのは、努力の成果よ。選挙前、数週間のね。」
「それは聞き捨てならないな。俺が司教になってから、モンジル教団は経済的にも軍事的にも発達し、大陸だけじゃなく、世界からも注目されているんだぞ!」
「経済はパール、軍事はゼロス。あんたの担当じゃないわ。それに最近じゃ外交も美香さんと翔弥さん、ゲリヤに任せっぱなし。書類整理しかしない司教の癖に自分の努力とかほざくな!!」
この野郎、間違ってないのが腹立つ。
「じゃあそこのムスッとしてる司教様はその変でお散歩でもしてて、私は久々にホテルに行ってくるから。」
「へいへい。」
エレベーターから降り、ムカつく魔法使いが去ったところでお土産の入った袋を持ちながら、俺は大通りを歩き始めた。正直、この町のことは全くわからない。それに俺は有名だ。下手に歩いても良いことはない。
「その辺でコーヒーでも啜りながら、時間潰すか。」
電子掲示板で町の地図を確認し、ちょうど近くにあった喫茶店に向かった。途中、行き行く人々にチラチラ見られたが無事目的地に到着した。
「ここか、『スターピックス本店』」
ビルの一階に堂々と構えたパクり店。店の様子やロゴの色も似てる所を見ると転生者が関係してるのは間違いないが、今日はとりあえずスルーしておこう。
店の前に立つと自動ドアが開く、一瞬ここが異世界であることを忘れてしまうような懐かしさを感じたが、とりあえず空いているカウンター席をとり、列に並んだ。そして、アイスコーヒーを頼もうとレジに立つ店員をみて俺は
「うごっ!?」
店員も
「ふぇっ!?」
俺の前にいたのはいつぞや会ったジャストという雪見の旅仲間だった。この時点でこの店の経営者が雪見であることを察することができた。
「し、司教様!?」
「ちょ!シィーッ!あーもう、後で俺の席にこい。」
「は、はい。」
席に戻り、俺はアイスコーヒーを飲みながら置いてあったパクり商品だらけのメニュー表を眺めた。本当に酷いメニュー表だ。しばらくして、店員達に挨拶されながらレジ奥から雪見が出てきた。数秒遅れて小走りでジャストも出てきた。
「久しぶり!」
「改めてお久しぶりです、司きょ…先輩。」
コイツなりの周りにバレないように気づかった呼び方らしいが、違和感が凄い。二人は俺の左右の席に座った。
「3年ぶりだな、それにしてもお前らなにやってんだ?」
二人は神ゴール同盟に所属しているのだが、3年前に修行の旅に出ると言い、ヨクセルまで挨拶をしに来たのだ。
「旅はどうした?」
「一年はしたんだけど、どうも飽きちゃって。」
「おい」
「僕の実家の店の経営回復をしてもらったんです。」
「おい」
「そうなのよ、そして成功しちゃってさ、今では私が社長なの。既に大陸中に店舗が15ヵ所あって、来週また新たに新店舗がオープンするの!」
もうどこから突っ込んでいいかわからないが、とりあえずサリーが帰ってくるまでの時間は潰せそうだ。
「スタ○をパクったな?優等生である筈のお前がスタ○だけは学校帰りにやたらと寄ってたからな。」
「な、なんでそれを知ってるの!?」
「クラスでは結構有名だったぞ、定期的にお前が美味そうにカプチーノ飲んでる写真がツイートされてたぞ。」
「嘘…私のキャラが…」
机に突っ伏した社長に苦笑しながらジャストが俺に聞いた。
「先輩は何しにトウキオへ?」
「サリーが、アイツのホテルの様子を久々に見たいって言うから付いてきたあげたっとこかな。」
俺がサリーのホテルの話をした瞬間、隣の社長が机に突っ伏していた顔を勢い良く上げ
「サリーホテルね!この店がホテルの二階に入ってるわ。それにそれに…」
「おいジャスト、コイツがこうなった責任はお前にもあるからな。」
「ホント、すいません。」




