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俺は「エロ神」じゃない!   作者: 柳原テツロウ
一章 異世界転生編
31/60

31話 ジムでのパールはパールじゃない!

 ジムに入った俺は直ぐ様、戦闘体制に入る。筋肉ムキムキの数十人のタンクトップの男達が汗を滴ながら、ダンベルやランニングマシーンなどに似た魔道具使い、トレーニングをしていた。ちらほら女性のような人もいるが、この光景はどうみても格闘漫画のワンシーンである。


「おいパール、帰ってもいいか?」


「つい数秒前にお邪魔するとかカッコつけてたのに…。見学でもいいからさ、これも司教の役目だと思ってよ。」


もうやや震え気味の俺にそんなに攻め立てないで欲しい。


「皆さんこんにちは。」


「よぉパール、新入り連れてきたのか?」


「新入りって…よく見ろ!司教様だ!!」


「司教様!?」


「本物だ!!」


俺を見つけたマッチョたちがゾロゾロと集まってきた。凄まじい威圧に俺は思わずたじろいだ。数人のマッチョの中でも一番強そうな男が野太い声で話しかけてきた。


「司教様、どうしてジムへ?」


「今日はパールの紹介で…」


「体験ですか、なんて嬉しいことだ。司教様はお強いと聞いたので是非手合わせをしたいものです。」


「きょ、今日は見学にして、また今度暇な時に来ようと思うよ。」


「そうですか。では、その時に手合わせをお願いいたします。」


まずは一安心と俺が近くの椅子に座ろうとすると


「このジムに、一足踏み入れたのならば、もうあなたも我らの同士!見学なんてさせませんぞ!!」


60歳前後の空手に似た白い道着をきた男が奥の方から俺に声をかけてきた。その声を聞いた瞬間、他の者たちはすぐにトレーニングに戻った。隣にいたパールも軽く挨拶をする。どうやら、この人がコーチらしい。


「司教様ですね、あなたが強いということは十分に承知しています。ですから、彼らへのトレーニングの一貫として勝負をしていただけませんか?」


「な、なんの勝負ですか?」


「決まっているではないですか、レスリングですよ。このモンジル教団の国技であるレスリングで彼らと戦ってほしいのです。」


いやぁー、ムリムリ。レスリング?そんなの出来るわけないって…。てか、国技ってどういうことだよ。あの大司教達は日本人だろ?なんでレスリングなんだよ、相撲にしろよ!!

ルールは大体わかるけど、そもそも神の力がないと俺勝てないし。


「お、俺なんかで良いんですか?」


「『俺なんか』なんておっしゃらないでください。さぁ、コートに立ってください。」


「ちょ…ま…」


俺は二三人のマッチョに押され、マットが敷かれたコートに連れていかれてしまった。


「颯太がんばってー!」


パールもいるし、ここはやるしかない…。俺だって色んな強敵と戦ってきたんだ!司教として、ここはしっかり勝たせて貰う!!

俺は覚悟を決め、身構えた


「よしお前ら、司教様に一人ずつ掛かっていけ、前の奴が倒れたら、次の奴がすぐに出ろ。いいな?」


「「「「はい」」」」


「え、」


嘘だろぉぉぉっっ!!!全員連続!?


「お願いします!」


一人目のマッチョが前屈みになり、スタートの体制になる。後ろには20人くらいのマッチョたちが並んでいた。

くっそぉ!!!


「《風》!!!」



その日俺がジムを出れたのは夕方頃だった。次々にやってくるジム会員のマッチョたちが、休む暇なく俺に掛かってきた。《風》の力で体を軽くし、避けながら相手の体力を消耗させ、最後に上から飛び乗って風を纏わせた足で肩を押さえるという作戦で切り抜けた。


「あれ現実世界のルールだと絶対反則になる気がするけど…まぁいっか。」


体力の限界まで動いた俺は軽く足を引きずりながらパールと一緒にハイリーの通りを歩いていた。


「筋肉見た感じ普通だけど、凄いじゃん颯太。コーチもまた来てって言ってたよ。」


「またはこねぇよ…。あ!、普通言うな!!軽くコンプレックスなんだよ!!」


神の力の詳しいことについては、転生者とサリーとジェスにしか話してないし。それにきっと、力を使ってたことが知れたら最低野郎って思われてしまう…


「どうしたの颯太?そんなに普通って言われたのが嫌だった?」


「なんでもねぇよ。てか、実はお前強かったんだな。」


「私なんて全然よ。それよりも、颯太とも勝負してみたいんだけど。」


「止めておくよ…」


こいつの強さは以上だ。俺がいた隣のコートで他のムキムキの男達を投げ飛ばし、聞けばジム最強と言われているらしい。正直能力を使ってた俺よりも強いかもしれない。


「今から近くで夕飯済ませるんだけど、一緒に食べてく?」


「いいや、ジェスが飯つくって待っててくれてると思うから今日は帰るよ。」


俺がそう言うとパールは少し寂しそうな顔をした。


「やっぱりいいなー、私にも家族が欲しい。」


「仲間だよ仲間!……でも確かに、家族みたいなもんだな。いつもジェスが飯を作ってくれて、サリーも掃除とかやってくれる。仕事忙しくて帰りが遅くなっても二人は眠い中起きててくれるしな。」


「え、何それ…。理想家族像じゃん!」


「そうか?…お前の家族は?」


「家族に関する記憶がないの、私が一歳の時にどこかに行っちゃってそれっきり。私にとっての親は父方の祖父母だった。でも、二人とも戦争で死んじゃってさ…今は私一人。」


サリーとジェスと同じ、12年前の大戦の被害者…俺は平和のために神の力を使うと決めているけど、この力は人々を何人も殺すことができてしまう。俺はそのためにも他の人が武力として力を使うことを阻止しなければならない。


「よし、お前。俺んちにこい。」


「颯太の家?」


「そこそこ広いから部屋も何個か余ってるし、二人もパールなら歓迎してくれるよ。」


「う…ぅぅ…」


「あーもう泣くなって。」


「アリガド…ゾーダ…」


「鼻水更けよ。で、ジェスの飯は食ってくか?」


俺の問いに号泣しながらパールが頷いた。

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