25話 総統は普通、優しくない!
無事に神ゴール同盟との協定を結ぶことに成功した俺たちは一週間かけ、ようやくモンジル教団の本部があるヨクセルへと帰ってきた。モンスターの攻撃や広大な教団領の周りを覆うジャングルのせいで余計に時間をつかってしまった。町につくと俺たちはすぐに地面に膝をおとした。
「この世界にモンスターいたのかよ…しかもチョー強かったし…てかなんだよこのジャングル!!」
「行きは問題なかったのに帰ってくるときは瞬間移動魔法使えないとか、ケチじゃないの!!」
疲れたことに自分の存在価値が低くなったことが相まって機嫌が悪いサリーをジェスが歩みより、慰める。
「サリーの魔法のおかげでモンスターを何体も倒せたじゃないですか。あそこにいる男二人なんかよりサリーの方が尊敬できます。」
「おいおい、その二人とは俺とゲリヤのことか?確かに俺たちは、モンスターとの戦闘を避けた。しかし、それはモンスターも一つの生命を持つ者として退いてやってだけだ。そうだよな、ゲリヤ?」
「うむ、間違いない。」
俺の横で頷くゲリヤ、それをみたジェスは捌いてやろうかと言わんばかりの怒りの表情で俺たちを睨んでくる。
「お、俺たちは本部にいるパールたちに報告に行ってくるから、先に家に帰ってていいぞ。」
「で、では!!」
俺たちは逃げるように本部へ向かった。本部につくと、入口には美香さんと翔弥さんが立ってくれていた。
「お帰りなさい、颯太君。どうだった?」
「無事、成立しましたよ。」
「はぁ???」
翔弥さんが驚いた様子で俺に歩み寄ってきた。
「いつも断ってばかりの内面クソジジイがか!?お前、どんな手を?」
言い寄られた俺は総統が自分のじいちゃんだったことを話した。
「なるほど、それで数秒で判子を押してくれたと……俺が行ったときは3日待てとまで言って結局断ってきたあのジジイが、相手が孫となれば話し合いすらしないだと!!!余計にムシャクシャする!!」
数ヵ月前に一週間出張したのってこのためか…
「それと!!お前が向こうに行ってる間の仕事、俺がやらされたんだからな!!もちろんお土産はあるんだろうな?」
「ありますよ、『総統煎餅』。」
俺はじいちゃんの顔がパッケージされている煎餅を翔弥に差し出した。翔弥はそれを手のひらに乗すると、炎を帯びた拳で焼き割った。煎餅の残骸を見るとスッキリしたのか、俺に煎餅をもう一枚要求し、普通に食べ始めた。その様子を見て美香さんとゲリヤは結構引いていた、ちなみに俺も。美香さんは俺の方に向き直り
「パールちゃんたちが待ってるわよ。」
「「はい。」」
仕事部屋にいくと、書類が山積みになった机で帰ったきた俺たちに気付かないほど集中して仕事をするパールと頭を縦にユサユサしながら書類を整理するゼロスがいた。
「ただいま…大丈夫?」
「…!!や、やっと帰ってきた…」
「待たせたみたいだな、おいゼロス、しっかりしろ!!」
帰ってきた俺たちを見ると安心したようにゼロスは目を閉じた。
「ぜ、ゼロスぅっっっ!!!!」
なんだこの茶番。
「ゼロスはここ二日くらい一睡もしてないから、寝かせてあげて。颯太の仕事は翔弥先輩にやって貰ってたから私達二人でゲリヤの仕事を分担してやってたんだけど、私はモンジル祭の仕事が入ったせいで途中から手伝えなくて…」
「モンジル祭?」
「おい司教、まさか知らないとは言わないよな?」
「えっと…」
「はぁ、なんでこいつが司教になったのか、民も見る目がないね。」
「前にさすが司教に選ばれた男って誉めてくれたじゃないか。要するにあれだろ?なんかの記念日を年に一度祝うってとこだろ?」
「まぁ正解ね、モンジル教団が発足した日よ。さぁさぁ帰ってきたばかりだからって休ませないわ、すぐに席について!!ゲリヤもゼロスを休眠部屋に寝かしたらすぐにゼロスの仕事の残りを終わらせて!!」
「「はい…」」
モンジル教団が神ゴール同盟と協定を結んだことでローブ帝国が直接モンジルに対し、戦争中止の申し出をし、要塞の建設を中止したため、例年通り祭りを行えることになったらしい。この話を聞いて、つくづく総統がじいちゃんでよかったと思った。
「それにしても、ローブ帝国には俺達が帰るより早く協定に関しての知らせが届いたってことだよな?」
ゼロスを休眠部屋に寝かせてきたゲリヤが戻ってくる。
「俺もそれについては少し疑問だった。」
「本当か?」
「本当だよ!ていうのはさ、12年前の戦争中にレイトとローブが協定を結ぶっていう情報が神ゴールに漏れたらしいんだ。今回と前回、両方ともかなりの機密情報だ、そう簡単に漏洩されてたまるか。」
「『神の力を持つ者』…」
「あぁ、たぶんそんなことができる奴がいる。」
俺たちはその情報を漏洩させている犯人のことを頭の片隅に置きながら、祭りの準備にあたった。予算や出店数、清掃から何まで全て司教と司教補佐官が決めなければならない。俺とパールは連日睡眠3時間という過酷な日々を送っていた。
そして、そんな辛い日々も今日で終わる。泊まり込みで仕事をしていた俺は目覚めると、本部の窓からヨクセルの町をみた。
「ふぁぁぁっっ!!」
本部から町の入り口までズラッと伸びた出店、色とりどりに飾られた家々、それはもう懐かしい日本の祭りの景色だった。よくよく考えれば美香さんと翔弥さんが始めたんだから当然のことなんだが、俺はその景色に見いってしまった。
「朝起きていきなり『ファー』って何よ?」
「う、うるせぇな!!あれ?ゼロスとゲリヤはどこいったんだ?」
ちなみに最近暇な防衛大臣と外務大臣は俺たちの仕事を手伝っていた。よってアイツらも3時間睡眠だ。
「防衛大臣さんは祭りで浮かれているところを他国にやられないように軍隊を指揮してるわ。外務大臣は神ゴール同盟の方々を出迎えてるそうよ。」
「じいちゃんたち来てるの!?」
「うん。」
「どこにいる?」
「さぁ?あなたの家とかじゃないの?」
「一様行ってくる!」
「正午には戻ってきてねー」
「了解っ!!」
じいちゃんが総統だった事アイツらに言ってないから面倒くさいことに会わせたくないんだよな…それに…
家の前につくと目の前の道を通る人たちが笑いながら俺の家の方を見ていた。そして、それが何故かすぐにわかった。
「はっはっはっ!!!!!」
家の周りにも聞こえるでっかい声が響き渡った。くそっ…遅かったか。俺はドアを開け、家に突入した。




