14話 この体はお前の物じゃない!
「いきなり偉そうなのが出てきたと思えば、炎の人格か、一度勝負したいとは思っていた。」
「あいにくだが私が出てきたのは、この天神を倒すためだ。私が求めるのはより強い者との勝負、貴様などと戦うつもりはない。」
「なんだと!!貴様、あまり調子にのるなよ?」
「落ち着いて翔弥。炎の人格、あなた今、この体の主となるって言ったわね?」
「あぁ、そう言ったが?」
「そんなこと本当にできるの?」
「そうだ、他の人格はすぐに消えるではないか。」
「あいつらのような弱い人格と一緒にするな。奴等では私の足元にも到底及ばない。」
「確かにあなたにはそう言うほどの力を感じるわ。でもね、颯太君をとられるのは困るのよ。」
「さて、どうする?」
「いいわ、私が勝ったら颯太を返して。もし、私が負ければあなたが自由にしていいわ。」
「美香!!そんな簡単に…」
「よかろう、その勝負のろう。火之神よ、明日もこのコロシアムは空いているか?」
「空いている。」
「それはよかった。明日の正午、場所はここだ。そうだな、町の者たちにも観戦してもらおう。」
「どういうことだ?」
「私が町の者たちに見せてやるのだ、この司教である天神がこの私の前に無様に倒れる姿を!!」
「き、貴様ぁ!!」
「いいわ。」
「いいわっておい!もし負けたらお前の司教としての信頼が!!」
「どうせ、そこで負けるくらいなら信者たちを守れない。もしあなたが勝てばこのモンジル教団司教の座もあなたに譲るわ。」
「美香!!」
「これは話が早い、さすがは司教というところだな。では、明日の正午また会おう。」
エンジンのように炎を噴射し、上空にのぼり、飛び去っていく颯太。炎の煙が雲一つない空を汚すかのように伸びていく。
「まさか…颯太の人格の中にこんな奴がいたなんて…お前がどんなに強いとはいえ、炎の人格の力は見ただけでも他の人格たちとは次元が違う。」
焦っている翔弥のお腹を軽くパンチする美香。
「あんまり心配しないで、こっちまで心配が移るわよ。それに何言ってるのよ、私が負けるわけないでしょ。」
「美香…あぁ、そうだな。お前が負けるわけないよな。俺は何を心配していたんだ。」
「さぁ、今日は明日のために早く寝るわよ!」
「ちなみにまだ朝の9:00だからな。仕事はたっぷりあるぞ。」
「そんなぁ…明日は大切な日なのよ…。」
「俺たちはどんなことがあっても教団を守り続けなければならない。仕事をするということはそういうことでもあるんだからな!」
「はいはい…」
炎の人格のまま行方不明となった颯太のことを伝えに翔弥はサリーとジェスがいる宿へとやって来た。翔弥は今日の出来事を全て話した。
「それで私たちも明日の大会にと?」
「あぁ、もしかするとだが、君達の助けが必要かもしれない。」
「炎の人格ですか…なんかショーヤさんとキャラク被りますね。」
「被んない!!あんなキザな野郎と一緒にしないでほしいでもらいたい。」
「あなたも十分キザですよ。」
常にスーツを着ている翔弥に突っ込むジェス。
「まぁでもソータはそう簡単に炎なんかに負けませんよ。」
翔弥はそう言うサリーに不思議そうに聞きよる。
「なんてったて、ソータには『エロ』っていう、誰にも負けない力があるじゃない。」
「そうですね、最近も銭湯で色々とありましたし!」
(なんだコイツら…てか、『エロ』の力ってなんだよ…)
「明日は美香の応援を頼むぞ二人とも。」
「「はい!!任せてください!!」」
そしてその頃、ジャングルの木の上で深い眠りについていた。颯太の心の中で6つの人格による討論が始まっていた。
『おい、炎てめぇ。いきなり何しやがる?』
『お前の弱さに呆れたものでな。』
『てめぇ…殺すぞカッコつけ』
『黙れチンピラが』
どうやら《炎》と《雷》が言い争ってるらしい。バチバチとした感じで睨み合う二人に《性》(ピンクの目のときの人格)が静止をかける。
『少し《雷》は落ちついてください。』
『く…』
『それにしてもなぜ《炎》は体を奪おうなんて?』
『悪いが質問で返させてもらう、何故最も強い者が体を持つことを許されないのだ?』
『なるほど、あくまでも自分が最強と?』
『そうだ。』
『まぁ確かに君の能力は私たちの中では格別です…。しかし、』
『《性》君無理だよ、《炎》君の性格じゃ仕方ないよねー。まぁ、でも本人もいるんだし、聞いてみれば?』
『ありがと《光》。直接、お前らと話すのは初めてだな。』
『もうお前は必要のない存在だ消えろ。』
『お前さっきから黙ってたら偉そうにしやがって!!何が《炎》だよ。俺の体返せ!!』
『嫌だな、この体は私がいただく、それは確定事項だ。』
『くそっ!!ムカつく!!いいか、お前は美香さんに倒される!!それで終わりだ!!』
『あの天神に私が負ける?この《炎》がか?』
『みんなそう思うよな?』
『はい』
『もちろんっ』
『あぁ、コイツじゃ勝てねぇよ。』
『…』
《風》は喋らない。
『どいつもこいつも揃って私を愚弄するか。ならば、良い。この勝負で私が勝利した瞬間から貴様らは全員、私が死ぬまでこのタマシイの世界にいてもらおう。』
『なんだと!?』
『大丈夫なんだろ?天神が勝つと信じているのだろ?』
(もう信じるしかない!頼む、美香さん!!)
翌日の正午、コロシアムには3万人をこえる観客が集まった。コロシアムの東側に美香、西側には《炎》の颯太が立つ。
「もうすぐしたらこの信者たち全員が自分のものになると思うと…あぁなんといい気分だ。」
「モンジル教団はあなたには渡さない!そして、颯太も返してもらうわ!!」
『お互い、構え!!!それでは、ばしめぇぇぇ!!!』
今ここに一人の体と、一宗教団体をかけたバトル開始のゴングがなった。