13話 俺は覗き魔じゃない!
特訓の後、疲れきった体を癒すために颯太は毎日銭湯に通っている。源泉かけ流しの『ヨクセル大浴場』だ。
「今日もボロボロだな…雪見のやつ、手加減を知らねぇな。」
颯太は一人、露天風呂で目を瞑りながら雪見への愚痴を言いまくっていた。
「くそっ!あいつ神の力なんて与えたらそんなの神じゃないって、悪魔だよ悪魔!!」
雪見をディスる颯太に耳に女湯の方からサリーとジェスと思われる声が聞こえてきた。
(俺も年頃の男だ。ちょっくら行きますか!!)
コソコソと竹でできた柵の近くまでいくと近くにあった岩によじ登る。
(スタンバイOK!!!)
「最近さー、ソータ夜遅くまで帰ってこないよね。」
「はい、少し寂しいですね…、まぁでも頑張ってるんでしょうね、ご飯食べた後はいつも爆睡じゃないですか。」
「結構、私たちのために考えてくれてるみたいだしね。」
(二人ともそんな風に…グスッありがとう…)
目をうるうるさせる颯太
「私、ずっと前から思ってたんですけど、サリーってソータのこと好きですよね?」
「ちょ、いきなり何言うの?もうっ」
軽く照れている様子のサリー
(そ、その話!!もっと詳しく!!!)
柵を挟んですぐの所にいる颯太もソワソワしていた。
「まぁ嫌いって言ったら嘘になるわね。もう、トウキオ出てから三週間か…、あっという間ね。」
「私もリーバスでソータに出会えたおかげで大切な料理の楽しさを思い出すことができました。」
(や、やめろ…俺のピュアなこころをいじてるななぁ!!)
颯太は岩にしがみつきながら号泣してしまった。そして事件は今日も起こってしまった。
(二人の話が聞けてよかった…とりあえず、今日のところは覗きなんて止めときますか)
岩から下りようとする颯太であったが足がすべり、そのまま竹の柵を押すように倒れた。
(やべっ!!しまった!!)
ミシミシミシギィィィ、バタン!!
竹の柵は盛大に折れて散った。ここに男湯と女湯が開通した。
「キャァァァ!!!」
「ち、違うんだ!!ジェス!!」
「ソータ…あなた…何やってるの?」
「ゆ、ゆ、許してくれ!!!サリー!!」
「「しねぇぇぇ!!!」」
「ギャァァァァァ!!!!」
翌日の朝、翔弥が本部へつくとグゥグゥとお腹を鳴らしながら顔をボコボコにされ、うつむく颯太がいた。
「ど、どうしたんだ颯太?」
「昨日…サリーたちと喧嘩して、ボコされた上に夕飯抜きに…」
「それは…気の毒だね。」
翔弥が可哀想な目で颯太をみる。
「今、美香を呼んでくる、待っててくれ。」
「はい。あ、そういえば雪見は?」
「昨日の夜、この町を出ていったよ、修行の旅だとさ…」
「急にかよ…」
「で、お前に伝言だ。『彼女つくるなよ』だとさ。お前、好かれてるな。」
「…!!」
颯太の顔が赤くなる。
「照れるなって、お前もこれから特訓だ。雪見にも勝てるように頑張れよ。」
「はい!」
美香もつれ、三人はコロシアムにやってきた。コロシアムは今日も休みだ。
「私、あんまり勝負とかしたくないんだけど…。」
「12年前の戦争を始めた一人の癖に本当に平和好きだな。」
「私が始めたですって!!まぁ…そうだね。」
(おい、本当かよ!!)
「颯太、お前は今ある力を出しきるんだ。」
「はい、わかりました。」
「それでは、バトル開始!!!」
先に仕掛けたのは颯太だった。
「雷!!」
颯太の目が青く光り、腕がビリビリと電気を帯びる。
「沈め天神!!」
「バリア!!!」
美香がつくりだしたバリアと颯太の電気の拳が激しくぶつかる。バリアは砕けるも美香には一切のダメージもなかった。そして能力で自らに翼をつけ、颯太の頭上で静止した。
「ちぇっ、相変わらずチートじゃねぇか。」
「颯太君も負けてないわよ。次はこっちからいくわ!!」
岩壁が颯太の四方に現れ、閉じ込めようとする。しかし、颯太は壁を飛び越えるようにして避け、再び電気を腕にまとわせた。
「いい反射神経ね、だけどね!!」
突如として地面から現れた牢屋が颯太を閉じ込めた。颯太は必死にそれを破壊しようするが、鉄製の牢屋には電気は効かなかった。
「なるほど…戦争を始めるほどの強さ!!面白れぇじゃねぇか!!」
野獣のように奮い立った颯太が牢屋をこじ開ける。
「あの牢を!?やるじゃない!!」
「電気流星群!!!!」
コロシアムで使った技だ。青白く光る無数の電気玉が流星のように美香の頭上に降り注ぐ。すかさず、美香がバリアをはるが、電気玉は四方八方から狙う。
「全方位バリア展開!!!」
球体のバリアをはり、その中に美香が入ることで攻撃が当たらなくなった。バリアに当たった電気玉ははじけ、煙が立つ。
「なんどやっても同じことよ!!雷の力を持った君でも私には勝てない。」
「うるせぇ!!この羽野郎!!!」
煙でできた資格から、飛び出した颯太の拳がバリアを破り、その拳が美香へと向かう。しかし、
「化け物め!!う…!!!」
その拳を拳の形をしたバリアが受け止め、跳ね返す。地面に叩きつけられた颯太は膝をつく。
「くそっ、正直勝てる気がしねぇ。だが、諦めねぇ……!!」
突然、雷の人格の颯太が苦しみ暴れだす。
「ど、どうした颯太!!」
「や、やめろ…入ってくるな…!!」
何かに必死に耐えている様子の颯太。目の光の色は青と赤を行き来している。
「教えてくれ、雷の颯太。どうした?」
「あいつだ…炎の人格に乗っ取ら…」
そして、青い光が消え、颯太の目が赤く光り始める。
「あ、赤い光!?」
「颯太の他の人格ということ!?」
「雷では勝てないと判断し、私がきた。さぁ相手をしてくれ天神の女よ。私は炎の人格、私がこの体の真の主となる!!」