11話 噂の氷女は他人じゃない!②
ガチガチに凍った颯太の部屋にて
しばらくして両方が落ち着くと、颯太と雪見はベッドに座って話し始めた。
「お前死んだんだな?何で死んだの?」
「だ、誰が言うもんか!」
「え、そんな恥ずかしい死に方をしたのか?」
「ち、違う!!もういい!」
「まぁいいや。色々と教えてくれ。」
「わかった。私は一週間前、この大陸中央部の最北端の町ホッカイデーへ転生した。」
「俺が来た次の日だな。で、何故ここに?」
「ホッカイデーで色々と情報集めてみて、ここが平和に一番近い場所だと思ったから。」
「なるほどな、俺らと考えは一緒だな。」
「普通野郎のあんたが私と同じ思考回路を?」
「うちのサリーの考えだよ。あいつはお前並みに頭がきれる。」
「道理で気が合うわけね。」
笑顔を見せる雪見。
「お前、少し静かになったな?」
「そう見える?」
「いや、どっちかっていうと疲れてるって感じだな。力のコントロールできないのか?」
「うん…ホッカイデーにいた時も町の人たちに迷惑ばかりかけちゃって…」
涙を堪えるように歯を食い縛る雪見に颯太が横に座り、優しい口調で言う。
「俺もだよ…全然使いこなせなくてさ、勝手に発動しちゃうことも多いんだ。でも、仲間は信じて慕ってくれる。お前も探せよそんな仲間を。」
(俺、なんて良いセリフを!!我ながら感動!!)
「颯太…変わったねあんたも。」
(よくぞ、ご存じで)
「そうか?」
「うん、ちょっと頼もしくなったわ。」
(聞くまでもない)
「ハハ、ありがと!」
「で、あなたの能力は?」
「エロ」
「今なんて?」
「エロと言いましたが?」
「え…ろ」
部屋全体を覆っていた氷が一瞬で溶ける。氷が溶けた場所には蒸気がたつ。そして、雪見はベッドから立ち上がる。
「な、何を怒っている!!!ちょ、待て待て。」
焦る颯太の胸ぐらを掴み、顔を近づける雪見。
「昔から言ってるよね?颯太君。エロいこととか一切するなって」
「は、はい!!いや実はこれはちょっとした手違いがありまして…!!」
「言い訳をするんだ?偉くなったものだね。」
「ひぃぃっ!!てか、この部屋暑くなってねぇか!?お、お前の能力は『雪』とかじゃないのかよ!!」
「黙れ小僧!!」
「ギョエェェェェッッッ!!!!」
10分後
今までのこと全てを話し、やっと雪見の怒りがおさまった。
「なるほど、それで『エロ神』になっちゃったと。」
「そ、そうだ…わかってもらえて、よかっ…た…」
干からびた颯太がベッドに床に倒れる。
「死んだか?」
「死んでねぇよ!」
そしてまたすぐ起き上がる。
「てかお前。力、コントロールできてんじゃん。」
「そ、そういえば。」
部屋はいつもと変わらない状況へと戻っていた。
「ソラからは温度変化と聞いていたが」
「感情がキーだったみたいだな。悲しみで寒く、怒りで暑く。でもなんでそんな地味な能力を希望したんだ?」
「希望なんてしてないわよ。あんなあやしい紙なんてすぐ捨てたわよ。」
「さすがは優等生…で、これからどうするんだ?」
「あんたと一緒よ。平和な世界をつくるのよ!!」
「おぉ!!では、是非うちのパーティーへ。」
(見るところこいつの能力は強い!!うちのパーティーに更なる強化が期待できる!!まぁでも)
「ごめんね、私は自分の仲間は自分で探すわ。」
「そう言うと思ってたよ。」
「さすが。」
「だてに幼なじみやってませんよ。よし、今日は泊まってけよ。それにまだ夕飯もまだだろ?うちのジェスの料理は最高だぞ。」
「ありがと、颯太!」
部屋を出て、リビングに向かうと雪見の温度変化によって干からびたサリーとジェスが倒れていた。
「二人ともし、し、しっかり!!!」
颯太が必死に二人を起こそうとする。
「はぁ…また…やっちゃった…。」
そして、雪見が悲しんだことでまた部屋が凍りつく。落ち込む雪見を見ながら颯太も凍りついていく。
(もうっ!!めちゃめちゃだぁぁぁっー!!)