巡り合い
「った…」
目を開けると私の部屋。
私は警官を殺して気絶したんだっけ。
記憶が曖昧なまま身体を起こす。
『あ、嬢ちゃん身体は大丈夫か?』
あの時の人だ。
宮辻さんの友達かな。
「身体…?平気。宮辻さんは?」
『買い物に行ったよ。宮辻は』
「あの…ご迷惑をかけてしまいすいませんでした」
『いいよ。それより、嬢ちゃんさ兄貴が呼んでるから』
腕を掴まれてベッドから降りる。
この屋敷って他にも人が居るのかな。
「此処って何人の人が加入していているんですか?」
『俺と兄貴と宮辻と嬢ちゃんは含めれば4人。後は定期に顔出しに来る仲間かな』
「そうなんですか」
『兄貴、連れて来ましたぜ』
『ソイツだけ置いて行け』
『了解。お嬢ちゃん、また後でな』
それだけを言うと宮辻さんの友達みたいな人は何処かに行った。
『早く入れ』
驚くほどに冷たい声。
一瞬、血の気が引いたが部屋のドアを開けて中に入る。
その瞬間、息を飲んだ。
長髪で銀髪の人。
冷酷な目付きでまるで、人殺しの目を持っている人だった。
ソファーで足を組み月明かりの下読書をしてたらしい。
『俺の顔見て怯えているとかまだ、餓鬼だな』
「餓鬼…そうですか」
『こっち来い』
睨まれて何も言い返せなくなる。
ソファーに近づくと眼帯を取られた。
『どっかで見た事がある顔だな』
怖い。
あの人達とは違う目付き。
顎を掴まれて私は怯えるばかり。
「離してっ!」
『生意気な餓鬼だな。異能を使ったらお前の命はないぞ。過去に親を殺した哀れな娘』
「私に会いたかった理由って…何」
絞り出した言葉は震えていた。
『お前は俺の事を覚えているか?』
「知らないっ!」
そう言うと銀髪の人は立ち上がり、私の首を絞める。
床から足が浮いてしまう。
「うぐっ…ああっ…離せ…あぐっ…」
『さっきまでの威勢はどうしたんだい?麗奈』
なんで…私の名前を?
「名前っ…んぐっ…」
呼吸が出来ない。
その時、床に投げ飛ばされた。
「はぁはぁ…ゲホッゴホッ…ゴホッ…」
乱れた呼吸を整えながら視線を上げる。
『俺はお前の名前を知っている。お前は記憶を失っているんだろ』
記憶を失っているの?
私って。
でも、思い出せない事も沢山ある。
『もういい、出て行け』
部屋を出て行くと目の前には宮辻さん。
『此処に居ると聞いてな。晩飯にしよう』
「…あの人神代って言うの?」
『偽名じゃ。本名は知らんの』
「そうなの」
リビングに私達は向かった。
3人で食卓を囲むって意外。
そう言えば私は、3日間何も食べてなかったな。
「…凄い、豪華だ」
『嬢ちゃん、凄いだろ?これ全部、俺と宮辻とで作った』
テーブルの上には、ローストビーフ、サラダ、フランスパン、ビーフシチュー。
美味しそう。
『兄貴の分は気にしなくていいぞ。性格が他の奴とは違うから』
「いただきます」
いろんな会話をして食事を楽しんだ。
お腹一杯食べる事ができるって幸せ。
「シャワー室ありますか?」
『あるよ。リビングを出た右側の奥の場所だよ。ね?宮辻』
『この間取りに詳しくなりおって…。そろそろ、燐が買物を終えて来ると思うんじゃが』
「買物?」
『来てからの楽しみじゃ』
あ、今のうちだ。
「あのっ…名前まだ、来てない…」
『俺は芥川真守。な?宮辻』
『そうじゃな。神代だけじゃ、偽名は』
「私は、伯東麗奈です。よろしくお願いします」
皆の能力はいつか聞こう。
今は聞かなくても損はしないだろうし。
『たっだいま~。貴方が話に聞いていた伯東麗奈ちゃんね!よろしく!』
モデル体型に金髪をなびかせて私に抱きついて来る。
『私は、空原日向よ。拳銃の密輸と現金引き渡しの仕事をしているわ』
テンションが高い。
「あのっ…よろしく…お願いします」
『シャワー室行こうね?』
「はい」
シャワー室は広々としていた。
『貴方の下着に日頃から着るであろう服を奮発しました!』
「っ…ありがとう」
『部屋に置いて来るから、今日はこれね』
「はい」
シャワーを浴びて体を洗う。
身体を洗い終えて浴槽に浸かる。
「…記憶ってなんだろう」
ぶくぶくと音を立てて顔まで浸かる。
「ぷはっ…上がろう」
タオルで身体を拭いてワンピースに袖を通す。
「あの人の趣味?」
白いワンピース。
背中が紐で結んであるタイプの。
「可愛い…。美咲の為に洋服作ろう」
シャワー室を出て長い廊下を歩く。
お腹一杯食べれて幸せだし、シャワーも浴びて綺麗になった。
その時、曲がり角から誰かとぶつかった。
「うわっ…」
尻餅をついて目線を上げる。
嘘でしょ…?
なんで、この人なの。
『また、お前かよ』
「すいません」
って、なんで私が謝らないとなのっ!?
『チッ…ほらよ』
手を差し出してくれて、その手を握る。
身体を起こすと囁かれた言葉に私は驚いた。