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終章 優しい世界

 「トオルー早く準備しなさい! 学校おくれるわよー!」


 「わかってる! 今行くよ!!」


 急いで学ランを着ながら階段を駆け下りる、途中でカバンを忘れていたことに気が付き取りに戻ってもう一度階段を駆け下りる。


 「ほれ」


 そんな息子にサンドイッチを渡してやる。


 「あんがと、いっふぇふぃまーす!!」


 「もー、パパお行儀悪いことさせないで!」


 「アイツ昨日夜遅くまでファンタで挑んできたので、ムキになっちゃってさ。ごめんよサオリ」


 「んっ……もう、それはずるい。」


 「ははは、じゃぁ行ってくる!」


 サオリの足元では「ごちそうさまだニャ」と一匹の猫がスリスリしていた。


 


 新しい世界ができてから20年ほどがたった。

 最初の頃は少し混乱もあったけど、勇者たちはゆっくりとこの世界にも慣れていった。


 『内閣総理大臣 香川 雅功 君』


 テレビから国会中継が流れてくる。

 この世界にファンタの世界が組み込まれてから10年もすると世界は劇的に変化を見せた。

 ファンタの世界の中は貧困もなく死も訪れない、どんどん発達していくシステムによって欲求も多くが満たされる。

 もちろん実世界には持ち込めないが、簡単にいえばストレス発散や争い事を解決しやすいシステムになっている。

 国家間の問題も、オメー文句あるならファンタで勝負だ! みたいな漫画のノリが現実になっているんだ。

 おかげで国によるギルドが存在したりする。

 もともと大手ギルドのギルマスだった香川さんも今ではすっかり偉くなった。

 向こうの世界では俺のほうが強いけどね。

 子供に誇れる小さな自慢の一つだ。

 さすがにあのステータスは異様なのでダミー用のステータスを絶対神様に作ってもらった。それでもかなり強いけど、あのチート能力は別の用途で使用してる。


 ダイチさんとヒマワリちゃんも結婚して二人共優秀なプレイヤーなので公務員としてファンタの中で頑張っている。

 トシアキさんとアンリさんはうちから3駅くらいのところでレストランを一緒にやっている。すっかり料理にハマったらしい。

 いくら向こうで食事を食べてもこっちではお腹が減るからね。

 たまにバイトで国家間のギルド戦にも参加している。

 向こうでの友人たちはだいたい家族ぐるみの付き合いをしている。

 トオルなんかはダイチさんとこのマイちゃんが最近気になっているし、

 トシアキさんの息子のラク君はうちのナオミのことが好きらしい、

 お父さんは絶対に許さないけどね! 娘と付き合いたいならファンタで俺を倒してみろ! って言ったらサオリに大人気ないと怒られた、それでもパパは許さないぞ!


 俺とサオリはそういう戦いには参加していない。

 どうしても許せない時は謎の戦士としてこっそり参加しているのは秘密だ。

 もう一つの秘密は、こっちの世界でも度を越した悪行に対して、一人の黒衣の男とネコが成敗するというヒーロー伝説があったりもする。

 向こうでの能力をこっちの世界で出せる人間なんて、ねぇ……イルハズナイヨネ?


 サオリとはこっちの世界に戻ってきて俺が20の時に結婚した。

 俺はオリンピックで金メダルを取ったり、向こうの世界の強さからいろんな国を絡めた現実世界でのいざこざに巻き込まれそうにもなったけど、

 なんだかんだあって今は普通の会社員として働いている。

 ファンタの書類上の運営会社の一社員、それが今の俺とサオリの立場だ。

 サオリは今お腹の子のための産休中、福利厚生がしっかりしているのがこの会社のいいところ。

 もちろん会社の中身は絶対神様のNPCと俺とサオリ、ペーパー会社だ。

 ゲームの内容なんかも絶対神の3人とわいわいと話し合う大切なお仕事もある。

 あの3人も義体でこの世界に戸籍を持っている。

 この世界はあの人達にとっては始まりも始まり、ほんの数秒だ。

 それでもゆったりと世界に関わると今までよりも遥かに濃厚に世界を知ることが出来て楽しくて仕方ないらしい。


 絶対神様達は言ってみれば未来人のような方々だった。

 技術によって全てのことを得ることが出来る。

 飢えることもなく、欲するものも全て手に入る、他人と比べる意味もない。

 そういう中で、制限されることに楽しみを見出し、世界を作る、

 まぁ、ゲームが大流行していた。

 様々なプログラミングによって千差万別する登場キャラクター、

 好きなように、でもいろいろな要素を組み込んで様々な変化をする世界。

 時に自分の予想通りにならないことがこんなに面白いことだとは、

 全てを満たされている絶対神様たちは知らなかった。

 俺たちはその絶対神様の作ったゲームの登場人物だった。

 でも、今はどうでもいい。

 

俺達の事を愛してくれて、世界を愛してくれる優しい絶対神様のもとに生まれることが出来た俺達は。幸せだ。


 前の世界に比べれば犯罪率も減って、戦争も極小さな紛争くらい。

 いまだに宗教による対立、貧富の差、一部の凶悪犯罪は0にはなっていない。

 それでも、この世界は優しい世界だ。


 俺はもう少し、この生命が終えるその日まで、サオリと家族と、友人とこの世界で精一杯生きていこうと思う。


 時にはみんながそれなりな幸せなストーリーがあってもいいと思う。


 あるゲームの、一人のNPCの人生の話はこれくらいで幕引きです。


 僕達の世界が幸せで優しい世界で在り続けるように、祈ってほしいな。








 おしまい。

いろいろな人の素晴らしい作品に触れて、

自分でもなんか書きたいな。


その程度の想いで書き始めました。

そして、文を書くことのむずかしさ、ストーリーを作る凄さを

改めて知ることが出来ました。

他の人の各ストーリーをさらに楽しく、そして敬意を持って読むことが出来るようになったり、

様々な設定をきちんと活かす難しさ、それを見事にやっている作品に

この作品を作る前よりも遥かに楽しめるようになりました。

それだけでもこの作品を書いてよかったと今はそう感じています。


このようなつたない文章を読んでくださった人がいることに

どれだけ応援されたかわかりません。

結局あんまり中身の無いスカスカで盛り上がりもなく、

いわゆる敵もいない 山なしオチ無し意味なし な作品になったような気もしますが

のんびりおだやかに平和に終わる話があってもいいかなーなんて思って書き始めているので、今の自分にはこれでよかったと思っています。


最後に、

読んでくださった皆様。本当に、本当に有難うございます。


次は思いついたことを吐き出すだけじゃなくて、

少しは設定やらを凝らして書いていけたらいいなと思っています。

よろしかったら次回作もチラ見してみてください。


初めての作品一応の終わりを迎えられて一安心と、

感謝の気持ちでいっぱいです。


ありがとうございました。

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