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40章 破竹

 「ウーニャ任せた!」


 タカシが3体のゴーレムの攻撃を捌きながら残る2体のゴーレムをウーニャにカバーしてもらうつもりだった。


 「私もやる」


 サオリは魔法を詠唱すると向かってくるゴーレムに向って放った。


 「インフェルノ!」


 豪炎がゴーレムを包みあっという間に消し炭にしてしまった。

 残る一体もウーニャのもうすでに分身攻撃と言ってもいい連続攻撃で破壊されていた。

 サオリの魔法が炸裂したのと同時にタカシもその刀をもって3体のゴーレムを一閃のもとに切り裂いていた。


 「サオリも凄いんだな!!」


 「これでも一線で戦い続けていたから少しは戦える。だからちょっとは戦わせてね。」


 「うんうん!」


 ゴーレムもサオリの護衛として立派に戦っており、パーティプレイとして理想的なメンツと言ってもいいと思う。


 「やっぱ、パーティで戦うって楽しいね。」


 「楽しいのニャ!」


 塔も40階になるとタカシが全員を一撃で倒すこともなくなり、

 多少のパーティっぽい動きが必要になってきた。

 それでも圧倒的な2体がいるために緻密な作戦などは必要なかったが、

 それでもタカシには新しい戦い方が楽しくてしょうがなかった。


 そして、とうとうタカシと打合える敵も現れ始めた。

 50階のボス 聖王 アーサーペンドラゴン

 そもそもここまで来られるパーティ6人で勝てるかどうかというバランスのボスに、たった一人で打合えるってだけで異常すぎることなんだが、

 もうタカシに慣れたサオリもなんとも思わなくなっていた。


 「大剣をまともに受けると刀は不利だなぁ……」


 「ウーニャも爪がなければあの剣は受けられないニャ」


 ウーニャも今は武器を装備している、よだれがつくという理由で爪装備、

 竜王爪ドラゴンクロウ、バハムートのドロップアイテムだ。

 攻撃時その軌跡に薄緑の美しい残光を出すため、高速立体機動戦闘は大層美しい戦いになる。ウーニャもサオリもタカシもお気に入りの武器だった。

 性能も爪系装備最上位、特に対竜戦においては比類なき性能だった。


 「スキルによる剣技の補助は凄いな」


 アーサーからの目にも留まらぬ超絶剣技を受けながらもその全てを刀で捌きながら会話をするあんたのほうがすげーよと、心の声が出そうなサオリであった。


 アーサー王の武器は聖剣 エクスカリバー、最も有名な剣と言ってもいい、

 タカシの持つマサムネでなければ受けた刀ごと破壊されてしまうだろう。

 タカシは正面から剣を受けずに少し角度をずらして捌く形でその剣技を防いでいた。そんなことは普通の人間には不可能だがシステムに寄る補助、彼自身のステータス、そして高速思考などのスキルによってそれを可能にしていた。

 それでもアーサー王の攻撃は苛烈を極めなかなか攻撃に転じることが出来なかった。


 「タカシ、そろそろいい?」


 「ああ、うん。強いね、おねがいします。」


 サオリたちはタカシがある程度満足しただろうと行動の許可をもらった。

 タカシは“楽しいから”という理由で支援を受けないでしかも一人で戦闘をしていたのだ。


 【祝福ブレス】【加速ヘイスト】【防御プロテス】etc.


 次々と補助を流れるようにかけていく、

 同時にウーニャも攻撃に参加する。

 補助だけでも攻撃に転じるに十分だったが、ウーニャの参戦で完全に一方的な攻撃になってしまった。

 支援をかけ終えたサオリが参戦することで、あっという間に決着を迎えてしまった。


 「そろそろゴリ押しはおしまいにしましょう。」


 「そうだね、十分楽しんだし、本格的に攻略をしよう!」


 「そうと決まれば一気に攻略ニャ!!」


 「今日はもうおしまい、もう7時になるし、今日はここまでにしましょう。」


 「おお、いつの間に! 楽しいと時間がすぎるのが早いね。」


 50階というキリがいいこともあり、この日は友人たちと夕食を共にすることにしてそれぞれ準備で一旦家へ帰ることになった。


 俺もシャワーを浴びてさっぱりしてからみんなのまつ獅子軒へ向かう。

 獅子軒は大衆居酒屋のようなお店で和洋折衷いろんな肴を出してお酒が飲める。料理も美味しいのでお酒が飲めなくても楽しめるお店だ。

 

 「タカシ君たちの50階突破を記念して、かんぱーい!」


 「「「「「カンパーイ!!」」」」」


 なんか飲み会も恒例になってきている。


 「しかし、もう50階か、うちのギルドもやっと6個目のダンジョン制覇したんだが、とてもじゃないが追いつかないな。」


 「大手ギルドの精鋭でそのスピードなのに、タカシ君とウーニャちゃんはほんとに凄いねぇ~」


 もうこういった会話にも慣れっこである。

 サオリは香川さんと情報を交換していた。交換と言ってもこっちが手に入れたモンスター情報や装備の内容。スキルツリーの構造などを真面目に話している。

 攻略班の主軸であったってのも頷ける。


 「ところでタカシ君や、サオリ嬢とは、その、どうなんだい?」


 悪い顔をしたトシアキさんとダイチさんなどの男性陣に囲まれていた。

 

 「こないだのサオリちゃんの感じだとキスは余裕っぽいから~~」


 「サオリちゃんスタイルいいよね~、成長したらどうなるか……」


 男が集まると碌な話にはならないのである。

 タカシは苦笑いを浮かべながらいやいや、全然とごまかしていた。


 「男ってほんとサイテー」


 「あのスケベ野郎は帰ったらおしおきだな。」


 少し離れたところでヒマワリとアンリは騒がしい一団に冷たい目線を浴びせていた。


 「でも、タカシくん硬派だからなんもしてなさそうよね」


 「あんなプロポーズしちゃってサオリちゃんも気が気でないのにね、

 こないだもどうすればいいかーって質問されちゃった。」


 「なになに? 面白そう! 何の話?」


 女性も集まればこういう話は盛り上がるのである。


 会議が終わったサオリや幹部たちも混ざってその日は夜遅くまで盛り上がった。

 タカシは男性陣にもう一度ちゃんと思いを伝えろ、という至極当然で意外にも大人な意見を受けた。青臭いタカシを応援したいおっさんたちも結構多かったのだ。

 サオリはもうちょっと仕掛けてみなよ、という。こちらはあまりお上品じゃないアドバイスをもらっていた。



 飲み会が一応締めとなり、それぞれまだ飲む人、家に帰る人、皆それぞれに別れて行く。

 サオリとタカシは領土へ向かい歩いている。


 「サオリ、ちょっと家に寄って行かない? 話したいこともあるんだ。」


 「う、うん。」


 「ウーニャは兄弟のところで寝るニャ! お休みなのニャ!」


 「うん、おやすみ。」


 「おやすみ、ウーニャちゃん」


 ウーニャは気が使える猫であった。


 

 

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