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第0話 私の世界 

想像上の世界だと思いきった行動ができる。

ゲームみたいな。

実際に行動を起こしているのは自分じゃなくて自分に似せただけのものだから思いきった事ができる。

だってそれは自分ではないから。人なんて所詮自分を優先させるもの。

だから人のことなんてどうでもいい。


私は思う。もしも私が死んだら誰か悲しむのだろうか。

悲しむとしてもそれは上部だけのものであって本当は「めんどくさいことに巻き込みやがって」何て風に思われるだけなのだろう。


そんなことを思えばこそ死ぬ気もやる気も何も起きない。


明日の放課後の三者面談。

これで進路を完全に決めなければならない。

「めんどくさい」

......本当はわかっている。

めんどくさいんじゃない。

決めたくないんだ。

この選択で人生は大きく変わる。

全く別物になるんだ。

1年、2年と、まだ猶予があると言い逃れて何も考えてこなかった。

今だって何も考えたくない。

怖い。

今の自分の選択で自分を滅ぼすことになるのが。

誰のせいにもできない。

悪い結果を招くのも自分。悪い結果を受けるのも自分。




現実から逃げたい。




そんなことを考えながら窓の向こう側を見つめていた。

「おい!おいってば!」

隣の生徒が小声で話しかけてきた。

「ん?なに...」

よくみるとクラスのほとんどが私に注目していた。

うわ、最悪。

ええい、当てずっぽだ。

「え、え?っと~......2πX」

「バカ、今は日本史だぞ」

もしも自分がいじられるようなキャラならここでクラスは大爆笑なのだろう。

あいにく私はそういうキャラじゃない。

教室は静寂に包まれた。

廊下に立たされたりする方がましだ。

先生は私を注意してそのまま授業を続けた。

皆の注目が外れたあと私はこっそり本を取り出して読んでいた。



「きょうつけ、れ~い。」

「ありがとうございました~。」

憂鬱な授業が終わった。

「今日購買いく?」

「ん~、行こっか。」



「いや~笑った笑った。伊能忠敬ってとこを2πXって言うんだもん。」

机をバンバン叩きながら笑っている。どんだけウケてんの。

「明日、三者面談があるじゃん。それで憂鬱だったっていうか何て言うか......」

「あ~わかる!だって進路決めなきゃならないんでしょ?くぅ~!」

「うん、そうだね。」

「うわ~他人事!この娘完全に他人事だよ!」

「何になりたいとかそんなの全然ないし。そういう松海(まつみ)は?」

「私はね、私は...あ、ちょいまち。ゴ、ゴホン。」

あ、くる。

「ドゥルルルルルルルルルルルル」

うっわ~、でたドラムロール。

「あの~ちょっといい?」

「ルルルr..なんだね。」

「唾飛んでるよ」

「え?うそ!あっははははははははは」

そこ笑うとこなのかなぁ....

「あはははははhごっめんごめん、あ~お腹いた。」

「で、松海の将来の夢ってなんなの?」

「あ~えっとね」

「うん。」

「ドゥルルルルルルルルルルルルルルルルルル」

結局やるんかい!

あぁっ!よく見たら唾の出る量が抑えられている!

侮りがたし....

「決まってないです!」

さんざん引っ張ってそれ!?

「強いて言うなら?」

「う~ん、納豆」

「真面目な方で」

「まぁざっくりとしたものでいいんだったら看護師とかかな。」

それまでのチャラけた表情が一瞬だけ真剣なものとなった。

「あるじゃん具体的な夢。尊敬する。」

そっか、決まってないの自分だけなんだ。

みんな何もしてないようで何かしている。

そう思うと危機感に押し潰されそうになった。

「ありがと、参考にさせてもらう。」

「うむ、参考にしたまえ。」

松海とは昔からの腐れ縁なのだが昔からどこか抜けているというか楽観的なところがあった。だから今回も何も考えていないものだとばかり思っていた。

すごいな、松海は。

「あ!チャイムだ。5限目始まる!ダルス!目が~目が目が目が~!」

「うん、行こっか。」



5限目は体育。外でサッカー。

の予定だったのだが雨で中止、代わりにバスケになった。

サボっているように見えない程度にサボり5限目が無事に終わり、6限目もダイジェストでお送りする価値すらないくらい普通に終わった。



さぁ下校。いざ下校。

部活は入っていたがもう引退している。

帰っても勉強するだけなんだけどね。

明日の三者面談。それまでに何か。

何か悔いの残らないファイナルアンサーを出さないと。

考えれば考えるほどわからなく臆病に慎重になってしまう。

「むずかしいなぁ...」

傘を持っている手が痛い。手に意識をとられていたその時。

「あっ!」

水溜まりに足を突っ込んでしまった。

最悪。最っ悪。最悪最悪。最悪。最悪。最悪。最悪、最悪。

リアルすぎる毎日と衝突を繰り返す日常。

もしも私の人生をジャンル分けするならば

「日常もの」

「青春もの」

そういったくさいものだろう。

嫌だ。

もう嫌だ。

雨は次第に強くなり、遠くの方で雷が鳴っている。

もう...嫌になっちゃうな...いっそ死にたい。

自暴自棄ってやつ。

「あ、いた。」

突然声をかけられた。

ふとそちらに目をやるとそこには

「私、久留米彩菜(くるめさいな).......って言わなくてもわかるよね?」

私がいた。

「なななななんで私が?」

「世の中には同じ時間を似たように送っている平行世界があるってのはベタな話じゃん?」

「う、うん。」

「私は[平行世界もの]のジャンルの世界から来た久留米彩菜。[現実的日常もの]の世界の久留米彩菜である君に会いに来たってわけ。」

平凡な日常を送っていた私には到底信じることができない話だが、現実から逃げたい一心で私は彼女の話を信じることにした。

「ってことはあなたの概念では他にも色々な世界があるってことだよね?」

「うん、あるよ。でもこれらの色々な世界があるっていう認識を持ててるのは私の世界だけだけどね、たぶん。」

「...あのさ、私が他の世界に行くことって可能なの?」

もしかしたらこの現実から逃げられるのかもしれない。

そんな期待が高まっていた。

「う~ん、まぁこの世界の私ならそんなこと言い出してもおかしくないよね。いいけど条件があるよ。」

「うん、どんな条件でものむ。」

「一度別の世界に行けばもう二度とこの世界に戻ってこれない。具体的にいうと本当のあなたを知った松海や家族には一生会えない。」

「いいよ。」

「いいんだ。」

「どうせ人のことなんてろくに考えたことないんだし。」

「家族や親友でも?」

「うん。」

「そっか...後悔は無いんだね。」

「ない。」

「じゃあいくよ。ついてきて。」

いつの間にか雨は止んでいた。

「ついたよ。」

そこには古い井戸があった。

「近所にこんなとこがあったんだ。」

知らなかった。

「今はもう使われていないみたいだし知らなくてもおかしくはないよ。さぁ。行こっか。」

そういうと彼女は井戸に飛び込んでいった。

うわ...想像以上にエグいな......

この世界での私は井戸転落自殺っていう認識にされるのだろうか。

まぁいい。どうせこの世界には戻ってこないんだ。

私はなんのためらいもなく井戸に飛び込んだ。












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