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with coffee break

hope-red-goldfish@xxxx

作者: 人儚

 あなたは赤い金魚って知ってますか?

 そうです。そうです。あの金魚。でも、実はこのお話の金魚、空を飛ぶんです。

 なんで空を?それはですね。秘密です。なんたって金魚ですから。何してもおかしくないですよ。

 それで、今回は金魚。縁日でとれるやつよりは少し高いやつですね。たぶん。たぶんですからわからないですけど。

 今から始まるお話は、空を飛ぶ金魚の話。

 主人公の子がいます。金魚じゃないですけど。

 女の子、歳はそうですね。10歳ぐらいでしょうか。12歳だった気もします。まぁ、それは置いといて。まぁ、そんな女の子の話。

 私は少し、重たい病気にかかっているみたい。と言ってもお母さんと病院の先生が話してることだからよくわからない。でも、なんだか助からないような、そんな感じ。こんなに開き直るのにはもう後がないってことがわかっているからなのかもしれない。

 私には好きなものがあった。それが金魚。殺風景な病院の部屋には赤い金魚がよく映える。私はそう思っていた。小さな水槽とも呼べないガラス器の中で優雅に泳ぐ姿はとてもきれいだった。何より見てても飽きない。

 私の目標でもあった。病院の個室という小さな器の中で優雅に泳ぐことである。

「お前は何も知らないんだぞ?井の中の蛙大海を知らずってゆーやつだな」

 そう遠くから金魚に話しかける。

 悲しくなんかない。学校にもロクに行けていない私には金魚がいる。

 学校に行っていないことに何一つ悲しさを覚えなかった。何しろほとんど記憶がない。気づいたらずっとベッドの上だったから。そんな私には憧れがある。それはそう。外の世界。

 母親が買ってくれた世界遺産の本だ。世界遺産は素敵だと思う。昔の人はこんな素敵なものを残してくれたのかと思う。これを見に行くために私は病気の治療を続けてきた。

 でも、もう無理だと思う。こんな幼い年の私にでももうわかってしまうくらい最後が近い。

「こんなことなら、無理してでも海外行けばよかった・・・。」

 そう私は一人で天井に向かってつぶやいた。

「何言ってるの?」

 そういって入ってきたのは仲のいい看護師さんだ。

 私のお姉さんみたいなもの。それくらいここには入院している。

「そっか。世界遺産好きだもんね。」

 さすがお姉さん。わかってる。「うん。」とつぶやいて世界遺産のページをめくる。

 アンコールワット、ギザの三大ピラミッド。いろいろ見たかった。

 そんなときに看護師さんは魅力的な提案。

「ねぇ、代わりに行ってきてあげるけどどう?」

 看護師さんにしてみればしぶしぶの提案だったのだろう。なんせ代わりになどおかしいからである。それでも私は「お願いします。」と言っていた。私は動けないし、どうせあと少しだから。

「わかった。」

 看護師さんはそういってくれた。ついでにわがままを頼む。

「金魚を。連れて行ってください。私の代わりに。」

 精一杯のお願いだった。私の代わりに旅をしてきてほしい。金魚に私を託した。

 看護師さんは金魚を連れて旅立った。もちろん、飛行機に乗るときに当然拒否させる。しかし、必死の説明もあって乗せてもらえたという。

 看護師さんからはアンコールワットの素敵な写真が届いた。

 それは看護師さんが作ってくれた特別なメールアドレス。

 hope-red-goldfish@xxxx

 金魚も元気そうに写真に写っていた。

 女の子はその次の日、最善を尽くしたが亡くなった。アンコールワットを見た彼女は泣いていたという。

 看護師さんとこの子の母親はこの子の供養のために金魚を世界遺産に届けて写真を撮るということをしている。

 企画内容は空港などで世界遺産に行く人に金魚を預け、写真を撮ってもらう。

 それをメールアドレスに送ってもらうというもの。

 今もまだ、毎日、写真が届くという。金魚もまだまだ元気に泳ぐ。まるであの女の子と同じように優雅に泳ぐ。

 あなたも海外に行ったときに空飛ぶ金魚に巡り合うかもしれませんね。


二作目です。

どうでしたか?

シリーズの繁栄を祈ります。(笑)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 感動する作品ですね。 [気になる点] 1話目と少し話が似ている気がします。
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