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2.健全なる学問部の発足

 この学生問題研究部。略して学問部が正式に作られたのは今から一週間前のことだ。

 顧問もいるし、部室もある。

 そんな俺達に不満だったのが・・・


「それにしても、なんで私たちは貴重な時間を削ってここにいるんだろうな」

「さぁね。学問部なんていまどき需要無いでしょ」

「悩みなんて自分で解決するのが筋だろうに・・・おこがましいことだね」

「くだらん凡愚の戯言に何故俺が付き合わなければならない?」


 そう、学問部の活動内容についてだ。


 教師から説明を受けたときに俺はめまいがした。

 他の奴らだってそうだ、俺と同じくこめかみを押さえていた。でもそれも仕方がないと思う。


 活動内容が、『学生達の悩みを解決する』などというふざけた説明を受ければ誰だってそうなる。


 学問部というのは二十年ほど前からあったらしい。当時はけっこう活動が盛んだったらしいが、ここ数年間は部員がいないわけで、完全に廃部扱いだった。

 そんな中に、部活に入ろうともしない「異端者」達が四人現れて、教師達が出した苦肉の策というのがこの措置ということなのだろう。

 だが納得できない。これならば文化祭でステージの上でダンスを踊っていたほうがマシだった。


「でもさー、ラクでいいと思わない?あたし達学問部って、できて一週間程度だけどいまだに依頼が一件も来ないしさ」

「ならば私は帰りたい」

「そういうわけにはいかないよ柊さん。活動は6時までさ」


 俺は柊に心から同意した。

 この学問部で腹が立つところは、依頼が来てもめんどくさいし、依頼が来ないで6時まで部室でだらだら無駄に過ごすのも暇で仕方がない。

 本当に無意味だ・・・。


「どうしたのさシュート。そんなにこの部が不満かい?」

「愚問だな。こんなふざけた部に囚われるのがそんなに楽しいのか?」

「私も坂井と同じだ。意味も無い活動をやる意味はないと思う」

「まぁ、そういうことになるわね・・。やっぱり先生に抗議しに行かない?」


 む、まだ諦めないというのか上原よ。

 その精神は嫌いじゃない、ネバーギブアップというアレだな。


「よく言ったぞ上原よ。俺も行こう」

「ちょ、シュート・・・本気かい?」

「何を言う翔太。当然だろう、柊、貴様も来い」

「坂井に言われるまでもない。一週間も我慢してやったんだ、もういいだろう」

「柊さんまで?!」


 さっきから翔太の様子が変だ。

 こんな部さっさと潰してやったほうがいいというのに、こいつは何を考えているのだろうか。


「翔太。貴様はまさかこの部が気に入っているわけじゃないだろうな?」

「そんなわけないじゃん、だけどさすがに抗議までしに行くのは面倒かなーって・・・」

「ならいい、私と菜月と坂井で行く。渡辺はそこで待っていればいい」


 柊がそういった後翔太はしばし考えて、答えを出した。

「そんなー、仲間はずれにしないでよ。僕も行くって」


 どうやら仲間はずれなのは嫌みたいだ。


「決まりね。それじゃいきましょう」


 上原が先頭に立って部室である空き教室を出ようとしたときだった。


「あ・・・・」

「え・・・?」


 引き戸の向こうには同じ星谷高校の制服を着た女子生徒が立っていた。


◇◇◇・・・・◇◇◇


「あの・・・学問部は・・ここで合ってます・・よね?」

「え?・・・・ええ、まぁ・・・」


 引き戸の向こうに立っている女生徒。

 目が泳いで、なんだか泣きそうな雰囲気がある。

 しばらく見ていると、突然その横から意外な人物が飛び出してきた。


「おうお前ら。しっかりいるじゃないか」

「た・・・田中先生?!」


 何を隠そう俺達学問部の顧問である、田中太郎(国語科)教諭が立っていた。

 今俺達が抗議しに行く相手もこいつで・・・それでいきなり現れたのもこいつで・・・え?

 何で出てきたのあんた?テレパシーですか?


「田中先生・・・なぜ先生がここに?」


 たまらず翔太が聞いた。

 もっともな疑問だ。この教師は顧問でありながら一度も部室に来ていないという人間なのに・・・。


「そりゃ依頼が来たからに決まっているじゃないか。この生徒は職員室に『学問部はどこですか?』って来たからわざわざ案内してあげたんだよ」

「それはそれはご苦労様です。私たちはこれから田中先生の元へ抗議しに行くところでしたよ。」

「抗議だって?そりゃ残念。俺は受け付けないぞ」

「先生、依頼が来たからといって俺達に何が出来るというのです?俺達が勝手に介入してその依頼を解決しろとおっしゃるのですか?」


 俺も今まで言いたかったことをこの場で吐き出した。

 この部の活動についての根本からの疑問である。


「そうだ、よくわかっているじゃないか」

「本気で言っているのですか・・?」

「確認してなかったか?なら、いい機会だから確認させてやる。君もそこに立ってないで中に入りなさい」

「あ・・・はい・・・」


 田中はテーブルの周りにあった椅子に適当に腰掛け、俺達にも座るよう促した。

 俺達は指示に従い、椅子に座る。


「まず、この部は依頼人からの依頼を受けて活動する。まぁ、主に恋愛相談とか色々ケースはあるが・・・。この際注意しておくことは、依頼内容を絶対に外部に漏らさないことだ。依頼人は、それを納得した上で依頼に来るからな。そして、色々なものを駆使して見事解決していくっていうのが学問部だ。簡単だろう?」


 ・・・色々ツッコミたい部分はあるのだが・・・・。

 まぁ奴らに任せても大丈夫だろう。


「質問です。依頼内容漏らしたらどうなりますか?」

「さぁな。過去にそんな奴は一人もいないが・・・まぁ処分はでかいだろうな。代わりにお前の個人情報がばらされるとかじゃないか?」


 それは嫌だな・・・。ばらした所で誰もメリットはないだろうけど。

 翔太もなぜそんなことを聞くんだ。ばらしたいのか貴様は。


「依頼というのは色々なケースがありますが、どんな依頼なら受けて、どんな依頼なら断るのかそこの線引きはされているのですか?」

「そこは基本的にお前らの判断に任せる。自分達の手に負えないようなら断ればいいし、できるようなら頑張ってやればいい」


 この質問はだいぶ有意義だな、さすがは柊。

 要するに俺達が勝手に判断していいってことか。

 と、言うことならば・・・・。


「聞きたいんですけどー、色々なものってどんなものを使うんですか?その際経費とかはどうなるんですかー?」

「まぁ色々なものは色々なものだ。コネとかいろいろ使えばいい。金は部に当てられている予算内で何とかしてくれ。超えた場合は自腹だ」

「うへぇ・・」


 上原にしてはまともな質問だ。俺もそれを聞きたかった。

 金の面はいろいろあるだろうけど、まぁ部の予算で賄えるのならそれでもいいだろう。

 しかし、3人とも根幹部分を聞いていない。

 ・・・しかたない、俺の出番か。


「もう質問はないかー?」

「・・・先生。一つ聞きたいのですが、これらをやる意味はなんでしょうかね?特に俺達にメリットがあるわけでもありません。先ほど先生が判断は俺らに任せるといいましたよね?ならば当然俺達は全ての依頼を断りますよ。当然でしょう、メリットがないのだから」


 こんなの誰だってわかる。俺達は別にお人よしでも何でもない。

 やらなくていいことを誰が好き好んでやるというのだ、ましてやメリットもないのに。

 いわゆるボランティアというようなものだろう。俺がこの世で一番嫌いな活動だ。

 何故魔王である俺が無償で働かねばならん。身の程を知れと言ってやりたい。


「坂井の考え方はもっともだな。だけどもったいないなぁ」

「何故です?」

「余った予算はお前らの好きにしていいんだぞ?まぁお前らの活動状況にもよるがな。」

「つまり、俺達が依頼を受けずにだらだらしていては予算はもらえない・・ということですか?」

「そういうことだ。記録は残るから誤魔化しはできない。要するに、しっかり真面目に依頼を解決していれば、ご褒美はちゃんとあるってことだ。」


 ここで教養の低い奴らは皆大喜びするだろう。

 しかし、俺はまだできない。これが罠という可能性もあるからだ。


「では先生。部の予算を見せてくださいよ。」

「いいぞ。ほら。」


 テーブルの上に広げられた部の予算が書かれたプリントを、四人は確認した。

 奴らの目の色が変わっていくのがわかる・・・かくいう俺もだが。

 この予算なら四人で分けても誰一人文句は言いまい。

 こんな額を見せられたので、終了後の予算の皮算用が勝手に脳内でスタートしてしまった。

 ・・・・いかんいかん、顔が緩みすぎてる。だけど直そうとは思わない。


「学問部は伝統ある部でなぁ。校長も張り切って予算を回してたよ」

「「「「・・・ごくり」」」」

「四人で山分けかぁ、羨ましいのぉ・・・」

「「「「くくくく・・・・」」」」


 人間ってつくづく金に弱いなと心から思った。

 そんなの当然だという奴らも多いだろう。俺だって知ってたさ。

 だけど・・・目の前でその現象が起きればだれだって確認したくなる。

 俺達の汚れきった瞳を見れば、そう思わざるを得ないだろう。


「これで僕の計画がまた・・・へへへへ」

「あたしの夢が・・・お菓子の家が・・・うしししし」

「わ、私は・・・だが・・・悪くは・・ないな・・ふふふ」

「魔王城の建設予算に当てさせてもらおう。ふははははは!!」


「そういうわけで、しっかり頑張れよお前ら。」

「「「「はーい!!!」」」」


 健全な高校生達の声が空き教室に響き渡った。


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