前世の記憶を掠める頭痛
はい。今回も後書きが長いです。
寧ろ、後書きが細かい説明のようになっているので読んでください
《シア…シア…水、持ってきた》
大きなバケツを10匹がかりで持ち、レイシアがいる窓にまで持って来たのは、水の妖精アーシュだ。
バケツをアーシュ達から受け取り、丁重に保管するレイシア。
「いつも御苦労様ね。アーシュ達。でも、どうやって水を運んでるの?この森には泉はないって聞いたけど」
そう、レイシアの言う通り、この森には泉がない。食べ物だって生えてないはず。前々から妖精達が当然の様に持ってくるが、レイシアは疑問に思っていたのだ。
《人の子に与える水なんてない》
水の妖精アーシュは時々、辛辣な言葉を発する。
《でも、シアは特別…》
ほんのり赤く染まるアーシュに、レイシアが「ぁっ…可愛い」なんて言葉を発するわけもなく、アーシュの赤く染まった頬に、デコピンならぬ頬ピンをぶちかます。
「なぁに気持ち悪いこと言ってるのよ」
これがレイシアのいつもの対応だ。
アーシュは頬ピンされた頬を抑え、何だか嬉しそうに口がにやけている。
「マゾかっ!」
そんな辛辣な割にMっ気のあるアーシュに、今度は蝿を叩くかの様に上からペシッと叩くレイシア。
《だから…シアだからだよ》
「はいはい。」
叩かれた頭を撫でながらアーシュの精一杯の言葉にレイシアはまるっきし聞いていなく、適当に相槌を打つ。
「それで、水は何処にあるの?」
《すぐ近くだよ…人の子には見えない様に隠してるんだ。ほら、シア…右を見て、見える?》
レイシアはアーシュの言う通りに右を見ると、あった。本当にあった。
何の穢れもない透明な水がキラキラと光っている。
(何で気付かなかったんだろう…)
「って、私は人の子よ。失礼な言い方ね」
先程のアーシュの物言いは、まるでレイシアが人間ではない様な言い方だった。
《………そうだね。シアは人の子だ》
にへらとアーシュが笑い、レイシアも笑いかけようとした。
だが、突如レイシアの頭を掻き回す様な痛みがレイシアを襲った。
「い"っ…」
レイシアは痛さに耐えられず、そのまま床に倒れ黒髪が床に散りばめられる。
*****
頭が痛い…体の節々が悲鳴をあげている。
「冷!大丈夫か!?」
遠くから私の安否を確認する同僚の声が聞こえた。
雨が土砂降りに降り注いでいる平日の昼だった。
(そうだ…この光景、私、知ってる)
なかなか捕まらないスピード違反の常習犯を今度こそ捕まえれると思い、雨が降りだしても追ったのが原因だった。
自業自得。そんな言葉が今の私に当てはまっていた。
適切な行動を取れなかった自分が悪い。
雨が降ってきだしたのに、尚も抗争した自分が悪いのだ。
スリップして、身体を地面に叩き突かれてしまうのは仕方のない事。
オイルの臭いが鼻を掠め、同僚が遠くから私の安否を確認している。
(ダメだ…来るな。)
打ち所が悪かったのか白バイクから、オイルが漏れている。
いくら土砂降りでも、火の勢いも凄い。火が白バイクまで届いたら…巻き込まれる。
「来るな…来るなぁーーー!!!」
*****
「ハッ!…はー…はー…」
床からガバッと起き上がり、肩で息をするレイシア。外はもう夕方になっていて空一面を茜色に染めていた。
《シア…シア…大丈夫…?》
窓の外からいつもより、か細い声が聞こえ妖精達が心配そうにレイシアを見つめていた。
「……大丈夫。いつもの頭痛で、たまたま嫌な夢だっただけ」
妖精達を片手で宥めながら、まだ痛む頭を押さえレイシアは考えていた。
(今のは、前世の記憶…?)
出てきた妖精の紹介
水の妖精:アーシュ
水色のツンケン頭と羽
目は青
ツンデレ
好きな奴にはデレ&Mっ気
実は結構辛辣で腹黒
シアに叩かれるのは、別に嫌ではないよ。寧ろ触れていられるのが嬉しいんだ。だからってシア以外にされたら、汚い泥水に漬けて下から火を付けるかもしれないな。
シアは特別なんだよ…そう特別。
森の水は人の子には絶対にあげたくない。これ以上、森を穢されると虫酸が湧く。
食べ物だって隠してる。風の妖精が食べ物が無いように見える幻覚を見せてるんだ。本当は食べ物の宝庫のように新鮮な食べ物が沢山あるんだよ。
でも、たまたま人の子がシアのいる塔を見つけちゃった。
シアは優しいから、人の子に水をあげたの。あの泉の水は神水だから一口飲めば、体力なんて直ぐに回復する。大地の妖精と混合した癒し効果のある、神の水だからね。
っとまぁ、キータローがすぐに回復したのはアキーの実のおかげではなく、アーシュ達が持ってきた神水のおかげでした。
神水を惜しみもなくザバァッと毎日、花に水をあげるレイシアに妖精達はいいように捉えています。
またまた長くなってしまいましたかね…
今回は前世を掠めてみました。