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噂は風のように人々の耳に届く

後書き長いです。

でも、読んだ方がわかりやすいかと思います。

街である詩人が言った。


《知ってるかい?黒の天使の話を》


その詩人の話を聞いた街娘が言った。


《ねぇ、知ってる?遥か東の森の奥に塔があるんだって》


街娘の話を聞いた店主が酒場で言った。


《おめぇら、この話を知ってるか?この世界にはいない黒髪をもつ天使の話を》


酒場で店主の話を聞いた一騎士(いちないと)が所属している騎士団の休憩場で言った。


《今、街では結構な噂になってるらしいんだが黒髪をもつ天使の笑顔を見ると、どんなに死にそうな時でも助かるらしいぜ》



黒の天使の噂は人から人へと各国に風のように広まっていった。



此処、西の大国ライワノールという国の城下町でも黒の天使の噂が広がっていた。

そんな噂を聞きつけた側近が、執務で苛々している皇帝に話した。


《最近、街では黒の天使の噂が広がっているらしいですよ》


「黒の天使?」


ライワノールの皇帝が執務中に話してきた側近の顔を見上げた。


「はい。遥か東の森の奥にある、入口のない塔にいる黒髪の女性の事だそうですよ。」

「黒髪…」

「はい。なんでも、塔のある森は迷い込んだら二度と抜け出せない。と言われる魔の森だそうで、実際に迷い込んだ若者がその黒髪の天使に会い、生きて帰ってきたそうですよ」

「フッ、ベタな作り話だな。」


ライワノールの皇帝は執務をしながら鼻で笑う。そんな皇帝を見て、側近は口角を上げた。


「それが、ある詩人からの実話だそうです」

「ある詩人…とは?」

「はい。容姿端麗で旅をしながら詩を作っているらしく、結構有名な方だそうです。」

「有名だから信用もある…ということか。馬鹿馬鹿しい」


ペンに苛立ちを込め、カリカリと執務をこなす。


「黒髪なのですよ、この世では珍しいと思いませんか?」

「だからなんだと言うのだ」


ライワノールの皇帝は側近をギロリと睨み付ける。


「神の送り人…が現れたのかもしれませんよ。」


側近の至って真剣な顔に皇帝は鼻で笑う。


「フッ、では連れて来てみろ。本当にいるのかも分からない黒髪の女を探して、連れて来れるものならな」


ここまで虚勢を張った側近に皇帝は黒髪の女探しを命じた。

(神の送り人なんて、いるはずが無い)

ライワノールの皇帝は出て行く側近の背を見ながら、両手を組み深い息をついた。



大きな扉が閉められ、側近はその扉を背に溜息を吐く。


「ふぅ、私が王に仕えて何年だと思っているのでしょうね…漸く王が待ち続けた、神の送り人が現れたのかもしれないのに」


西の大国ライワノールでは、とある言い伝えがあった。

【在る年、知恵を大きく授かった子が東の国で生を宿す。その子は見たことも無い色を持ち、西の王が持つ闇を全て消し去る存在となるだろう】

今では神の送り人と言われている言い伝えだが、側近は賭けたいと思った。

確証など見たこともないから1mmもない。だが、合点が行く所は幾つかある。

見たこともない“黒髪” “東” そして王が持つ“闇”

もし、言い伝えが本当だとしたら王の闇を消し去る者が現れたと言うこと。

期待は出来る。

側近は至急、旅に出る準備に取り掛かった。



*****



「今日も暇だなぁ。」


当の本人に、全く自覚がない噂が広がりに広がっているのを知らない黒の天使、神の送り人という異名をもつレイシアは何時ものように窓に肘をつき、下を眺めていた。


「それにしても、この世界って何でも有りなのね」


指をゆらゆら揺らし、溜息交じりに羽の生えた人型の小さい物体と戯れる。


「まさか、妖精まで存在するなんて。」


ファンタジーものはあまり信じて無かったレイシアだが、こうも目の前に現れたら信じるしか無い。

集まってくる妖精を左手で頬杖をつきながら右手で遊んでやる。

そんなレイシアの目の前に右の羽に傷を付けた妖精が現れた。


《シア…シア…怪我しちゃった》


怪我をした妖精は涙目でレイシアに助けを請う。


「どうして皆、私の所に来るかなぁ。」


レイシアは溜息交じりに答えた。


「そんな傷は舐めとけば治るのよ」


見た所、大した傷でも無いのでと言うか、レイシアがただ単に面倒臭かっただけなのだが、レイシアの言う通りに舐めた妖精はすぐに治った。


《本当だ、シア…ありがと》


別に感謝されることを何もしてないけど、取り敢えずシアは「どういたしまして」と答えた。


「ん?ちょっと待って」


シアは何か思い付いたのか、本棚から妖精の本を取り出した。


「あったあった。これよこれ。貴方、ジェミーでしょ?」


先程まで傷を負っていた妖精に問う。


《シア…シア、すごいね。どうして分かったの?》

(いや、普通に書いてあるし)

「ジェミーは大地の妖精なんでしょ。だから癒しの力を持ってたのよ」

《そう…ジェミーは大地の妖精。でもでも、そんな力があるなんて知らなかった》


ジェミーの言葉にレイシアは名案が(ひらめ)いた。


「でもこれで分かったでしょう。癒しの力があるジェミー、今度から貴方が怪我をした妖精を治してあげるのよ」

《そっか、この力は皆の為になる力だもんね。うん。ジェミー、ちゃんと皆の力になれるように頑張る》


ふわふわと回っているジェミーを見ながらレイシアは口角を上げた。


(よし、これで面倒臭いことが減った)


レイシアは後ろを向き、小さくガッツポーズをした。


《シア…シア。遊んでよ》


窓の外にいる妖精達がレイシアを呼ぶ。


「はいはい」


レイシアは知らなかった。

後々あんな面倒臭いことになるなんて。


レイシアは妖精にシアという愛称で呼ばれています。

キータローと話した男は詩人でした。

1番噂になりやすいように美形にしました。いつか、詩人とレイシアの絡みがあるといいな、と考えてます。


ここで、出てきた妖精の紹介


大地の妖精:ジェミー

黄緑色の羽

白いふわふわ髪

黄緑色の垂れ目

癒しの力を持っている

馬鹿正直、お人好し

シアを何故か信頼している


シアはね、尊敬できる人の子なんだ。

ジェミー達が大切にしているお花に、いつもいつもたっくさんのお水をあげてくれる優しい人の子なんだ。

前も死にそうな人の子に水と食べ物をあげて微笑んでいて、ジェミーもシアみたいな優しい子になれたらいいなって思ってるの!

それに、何故かシアにはジェミー達が見えて、遊んでくれるの!

ジェミー達は人には普通、見えなくて、ここ数百年とーっても暇だったんだけど、数十年前にシアが来てね!

この森に何かが変わったんだぁ。毎日が楽しいの!

ジェミーは生まれて初めて楽しいって感情を手にいれたよ!だから、こんな感情をくれたシアに何か恩返しが出来たらいいなぁって思ってる!

これは皆が思ってることだと思うの!

とっても物知りで、まるでお母さんみたいな存在だからついつい甘えちゃう。えへへ、内緒だよ?


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