02_回想
午前11時。
旅から帰った報告をするために王城の謁見の間に行った。
謁見の間には一緒に旅をしてくれた剣士と魔法使いも着いてきてくれたんだよね。
謁見の間に入ると、すでに王様率いる見た目キラッキラしていたり、
厳かな雰囲気を醸し出している仰々しいメンバーが勢ぞろい。
王様の前まで歩み出て膝を着く。
・・・初めて王様に会った時にどうしたらいいか分からなくて突っ立っていたら
衛兵に思いっきり張り倒されたことも今ではいい思い出・・・でもないな。うん。
「よくぞ戻った、異世界からの来訪者よ!」
そう。この王様の言葉で分るとおり、俺はこの世界の人間じゃない。
普通に中学2年生で、友達とふざけたりなんだかんだしていた普通の人間。
よくゲームであるようなハイスペック野郎でもなんでもない。
そんな俺が学校の授業中に居眠りしてたらいつの間にかココにいた。
最初は手の込んだビックリだなー。
とか思ってたけど、スパルタ式の訓練が始まった時にはマジで異世界なんだって思った。
生ぬるく生きてきたんで危機感ないんですよ。本当に。
異世界に召喚され、スパルタ特訓後に監視(キモチワルイ目みたいな変なヤツ)付きで城をほっぽり出され、
どうにかこの世界の人たちの言う危険な存在"魔人"を封印できた(俺なんにも出来なかったけど)
「噂にも聞いておる。無事に魔人を封印したそうだな。」
「は・・・はい。みんなのおかげです。」
「いや、そなたも骨を折ったろう。謙遜するでない。」
返事をしなくても衛兵に殴られ、
変な返答をしても衛兵に殴られるからあんまり安易に言葉を発せられない。
でも、これだけは・・・!
「魔人を封印する事が出来たので、約束どおりに・・・!」
「うむ、我が娘。第2王女であるカトリーナとそなたの式を挙げようぞ!」
「・・・・え?」
しきってなに?
指先の感覚が無くなっていく。だけど聞かなければ。
「陛下、申し訳ありません。"しき"とは一体・・・?」
「何をいっておる!そなたと王女の結婚式ではないか!」
周りの仰々しいメンバーも当然っていう顔をしている。
いつの間にそんな話になったの?
俺、魔人を封印したら元の世界に、家に帰してもらえるって。
旅に出る前に謁見の間<ココ>で王様に会った時も、
「無事に魔人を封印したら元の世界に戻してやる」って言ってたのに!
「っ・・・!そんな話」
聞いてない!って叫ぼうとしたら背後から耳を劈く爆音と、一瞬遅れて室内に土煙が舞った。
反射的に床に伏せて、パラパラと頭上から落ちてくる何かから頭を守る。
恐る恐る目を開けると、先ほどまで綺麗な絨毯がひかれていた床は無残にも汚れていて、
その床に仰々しいメンバーが倒れているのが分った。
何が起こったのかと床に伏せたまま後ろを振り返る。
舞っていた土煙もひと段落していたようで、何が起きたのか、何が居るのか分った。
謁見の間の壁は突き破られ、外からの光が差し込んでいた。
その突き破られた壁に見える一つの影。
大人4人を積み上げた程の体躯、鋭い鉤爪、艶やかな緑色に煌めくウロコ、背中の1対の羽。
それはどこからどう見ても、
「ミドリ・・・ちゃん?」
俺の大事な相棒であり、初めてこの世界で出来た俺の仲間のドラゴンだった。
城をほっぽり出されてすぐ、街道で魔獣に襲われた時に迷い込んだ森でであったドラゴンがミドリちゃん。
魔獣に追いかけられ(このとき、監視でついてきたキモチワルイ目みたいな変なヤツは魔獣に喰われた)、
一生懸命逃げている時に小さいドラゴンがピーピーか細く鳴いているのを見つけたんだよね。
このままじゃこの小さいのも食べられちゃう!って思わず抱きしめて森の中を逃げ惑った。
結局、追いかけてきた魔獣は撒けたけど、俺たちは少し深い斜面みたいなところで足を滑らせて一緒に落ちた。
俺、ズタボロ。小さいドラゴン無事。
なんていう情けない状態で、俺って本当にツイてない。でも小さいのが無事でいいか。
とか考えていると、小さいドラゴンがズタボロの俺の傷を治してくれた。
魔法が使えるなんて、なんというハイスペック。
動けるようになって礼を言うと旅を続けようとしたらこの小さいドラゴンが着いて来るようになった。
追い払っても着いて来る。
正座して真剣に「危険な旅になりそうだからお家(?)に帰りなさい。」と言ってもまったく意に返さず着いて来る。
最終的にはウロコの色から「ミドリちゃん」っていう名前を付けていっしょに旅をすることになった。
後日、喋れることようになったミドリちゃんと色々話をした。
元の世界のこと、ここに召喚されたこと、魔人を倒さないと家に帰れないことなど、
俺の事でミドリちゃんが知らない事なんて無いんじゃないのかってぐらい、話した。
優しいこのドラゴンは俺の話を良く聞いてくれたし、何か助言が欲しい時には的確な返答をしてくれる。
そんな俺の1番信頼の置けるドラゴンはこの城の前で別れたはず。
門番その他もろもろに「ドラゴンの城への立ち入りは許可されません。」って言われて。
なのに、どうしてここに居る?
『我と主を物理的距離でもって引き離したのはまだ耐えられよう』
不思議な声が耳に届く。
ミドリちゃんの声は脳に直接響くような不思議な声をしている。
いつもだったら歌うように綺麗な音を響かせるのに、今日はおどろおどろしい音である。
初めて聞いたその音に思わず背筋に冷たいものが走る。
『しかし、我らの絆を断ち切ろうなどと笑止!』
「・・・・そのような子供より、優秀な騎士や魔道士を宛がってやろうというに。何が気に入らない。」
いつの間にか王様が俺への対応をしていた時のように玉座に座っている。
王様の言葉にフンッと嘲るように鼻を鳴らす。
『愚かしい。貴様ら如きのもとに下ると思うておるのか。』
「そうか。ならば害悪の芽は取り払うべきであろう。」
王様のその言葉が引き金となった様に、既に立ち上っていた衛兵たちがミドリちゃんに飛び掛った。
鋭い鉤爪と強靭な尻尾で飛び掛った衛兵たちを床に沈めたミドリちゃんの口の横が光るのが分った。
ドラゴンのブレス。
正直、ここでブレスなんてやられたらヤバイ。
もう本気で ヤ バ イ 。
「ちょ・・・ミドリちゃんストップ!ヤバイ!まじヤバイから!
室内でブレスなんてしうぇぇええぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇぇええええええ!!!!」
ブレスを止めようとミドリちゃんの側まで俺史上最速ダッシュ。
そしたらなんとミドリちゃんの前足にガッシリ掴まれて、そのまま壁の穴から一緒に空飛びました。
雲ひとつ無い空って綺麗ねー。あははー。うふふー。じゃないっっっ!
「ミドリちゃぁぁぁぁああぁぁん!なに!?どうなってるの!?」
『逃げよう、マサト。あと、喋らない方がいいよ。』
「みふぇっっ」
ミドリちゃん、なんで?って言おうとしたら思いっきり舌を噛んだのは言うまでも無い。
そのままミドリちゃんに掴まれたまま、幾つかの山越え谷越え。
そして今に至るというわけだったりする。
森の泉の側にミドリちゃんと降りた時、俺はふらふらとした足取りで泉へ向かい、緊張で乾いた喉を潤した。
謁見の間であった事と、ミドリちゃんに掴まれて空を飛んだ事のダブルパンチで喉が大変なことになってた。
若干咽ながら喉を潤すと、今度は現金な事に腹の虫が鳴った。
どんな時でも、お腹は空くんです。
『何か食べれる物があるか見てくるね。ここから動いちゃダメだよ。』
「あ・・・ミドリちゃん・・・」
ミドリちゃんは俺のために食べ物を探しに飛び立ってしまった。
ミドリちゃんは優しいなぁ。なんて思いながら泉の傍らで体育座りをして待つことにした。




