豪華? 北海道ローカル魔法少女とインドの映画の2本立て
私はアニメと洋画が好きだ。普段は地上波テレビで放送されているアニメをサブスクでよく見る。それは出勤前と通勤時の3時間程度だ。帰宅後と休みの日は洋画をよく見る。
「さて、ポイントが1800はある。たまには課金してインドのホラー映画を見よう」
200ポイントだけチャージして海外映画を選択し、怖そうなサムネイルとタイトルを見つけた。
『きょうふのインドカレー☆はぬーんの悲劇んぐ』
サムネイルはターバンを巻いた地位の高そうな人が叫んでいる画像だ。タイトルが怖そうなのは、この翻訳をした日本人がいることが怖かった。
作品のアプリ内評価は星4と高い。課金しないとインドの映画は見れないことが多い。
ふと脳内に『アメリカ』という言葉がよぎった。
そう、私の家の近くにはラッキーアメリカというDVDレンタルショップがある。サブスク全盛期になって、スマホ1つでなんでも視聴できる時代にそういう大手どころか個人経営のレンタルショップが残っているのはコアなファンがいるのだろう。かくいう私も今入っているサブスクに入る前は店主と雑談するレベルで入り浸っていた。
「懐かしいな」
会員カードを探して財布を見れば大事そうにメイン財布に入っていた。そのカードは入会と同時にラミネート加工をし店主が直々にはさみで切ってくれたので端っこがガタガタだ。
「有効期限はっと……」
今月末だ。2026年7月31日。
……ほっといても来月になればサブスクには2000ポイントが補充される。変なサブスクで月々の消費税を除く金額相当はポイント還元してくれるのだ。
それでもラッキーアメリカの店主の人の良さそうなニコニコ笑顔が脳裏によぎっている。
「えぇい、あの映画がないかだけ見に行ってやる!」
徒歩でラッキーアメリカに向かった。住宅街にポツンと急に緑のラッキーアメリカという看板がある。ガラガラと扉を開けると、爺さんがいる。
「お久しぶりです」
「好きにみていけ、どうせ儂の趣味のもんしかおいとらん」
ほんとに言葉の通りで日本の任侠物や刑事物、アメリカのB級映画にフランスの美人特集ドキュメンタリーが多い。ポツンとピンクにもピンクなケースがある。そのピンクピンクなケースを手に取った。
『ターンオーバー魔法少女』
休みの日の朝に北海道のとある地方のローカルテレビ局が子ども向けに作ったローカル魔法少女アニメだ。かなり有名だが、北海道のそのローカルテレビ局内の売店でしか円盤が売られず、オンラインでは販売されない上にサブスクも配信しないと徹底ぷりのローカルアニメだ。内容は誰も語らないのでわからない。いや、違う、語った人はネットから必ず消えている。そして、語った内容も跡形無く消えている。ダークウェブの過去の書き込みでも何でも見れるサイトすら閲覧不可のある意味ホラー現象だ。
「ん? ホラー……?」
ターンオーバー魔法少女を見つけたことに舞い上がり、目的を忘れていた。そう、インドのホラー映画だ。
ターンオーバー魔法少女の横に黄ばみに黄ばんだパッケージがある。手に取れば『きょうふのインドカレー☆はぬーんの悲劇んぐ』だ。
会員カードの規約には1回につき20本まで借りていいとのことだ。迷わずターンオーバー魔法少女を手に取った。よく見ればインドのホラー映画までの間にターンオーバー魔法少女が12巻まである。
「1年ものかよ」
店主にツッコミが聞こえたようだ。
「あーそのターンオーバー魔法少女が気になるか?」
「えぇ、まぁ」
その後、内容には触れずに、作品のよさを店主が語っていた。
「あと、横のインドの映画じゃが、うん、まぁ、レンタル落ちでいいならレンタル料金に100円足してくれれば売ってやる。ターンオーバー魔法少女は、10倍の値段渡されても落とさんからな!?」
「あっ、じゃ、映画はレンタル落ちで買います。魔法少女ものは全巻かりますね、店主の話が面白かったので」
「魔法少女ものというな!」
魔法少女ものと言ったことで店主は不機嫌になったが、ぶつくさ言いながらレンタル手続きをしてくれた。
「いつまで借りる? うちは最大4週間だ。ただし、ターンオーバー魔法少女は通常の倍の値段はとる!」
「では、最大で」
店主がそこまでターンオーバー魔法少女のことを気に入ってるのかはわからない。あと、入手方法も。
帰宅後、4週間あるとは言っても、普段は仕事がある。隣の県まで毎日通勤の時間を考えるとターンオーバー魔法少女を優先的に見た方がいい。通常の値段の倍も取られて全巻借りたのだ。
「それでも5000円か」
部屋にあるプレイヤーとテレビをつなぎディスクを入れた。そこら辺の中学生が木彫りの熊の妖精から力を貰い、北海道を守るという趣旨のアニメだ。何から北海道を守っているかはよくわからない。それが1巻の計4話の感想だ。この子達が何と戦っているかがよくわからない。それでも話のテンポが良すぎて気づけば、ロシア人とのハーフの追加魔法少女も出てきていた。
そして、最終巻になった。
「今の時間は!?」
ハッと我に返った。朝だ。なんなら全国展開の魔法少女アニメも放送が終わってその流れで男の子の特撮ドラマの2本目が終わりかけの時間だ。
「しまった、特撮の新作今日からだったのに1話リアタイ忘れた。いや、ターンオーバー魔法少女優先だ!」
ディスクを12巻に交換した。話はあと、4話だ。敵に内通している魔法少女がわかって木彫りの熊の妖精が闇落ちしているので誰も変身できなくなったところで11巻が終わった。
12巻は怒涛の展開で、結末としてが悲惨でよくこれを北海道ローカルテレビ局が流したというレベルだ。
「ウップ、気持ちが重い」
そう。あまりに話が重く気持ちが悪い。いや、普段は23時には寝る私がオールをしたからかもしれない。
「少し寝よう」
夢にターンオーバー魔法少女の主人公と闇落ちした状態の木彫りの熊の妖精が出てきた。あと、なぜか、妖精はレンタルショップの店主の声だ。
『インドの映画は特典から見ろ』
その後の夢は記憶にない。いや、あってたまるか。
起きると日曜日の夕方の人々を鬱にするアニメが終わっていた。
「鬱……か」
体が重いのは事実だ。それは鬱とかではなく、オールしたしんどさだ。
デリバリーで大手ハンバーガーショップのセットを頼んだ。朝昼食べていないので空腹にもほどがある。
デリバリーセットは1500円以上頼まねばならないのだが、空腹のあまり最強セットというデリバリー限定の1500円メニューにした。内容は具体的には書いていない。
ボサボサ歯を磨いて、洗顔など朝に行うことをした。
少しだけ地上波ニュースを流すと地元が特集されていた。ラッキーアメリカにリポーターが入っていき、インタビューし始めたところでデリバリーが届いた。
最強セットは最大サイズのポテトとナゲットが3つにグランドバーガーにキングドリンクの1500円以上のメニューだった。袋も多く玄関からリビングに何往復もした。
「全部は無理だな」
クソでかいバーガーとドリンクだけをリビングに起きサイドメニューはキッチンで完全に冷えてからゆっくり少しずつ食べよう。
そして、まだうっすらと眠気のある目をこすって『きょうふのインドカレー☆はぬーんの悲劇んぐ』をプレイヤーにセットした。
大量のインド人が踊るオープニングが終わり……違う、カレーに吸われていっている。
何を見せられてるかわからない。ただ、なんだろう、日本のホラーとは違うホラーだ。幽霊や妖怪でなく……日本で言うなら付喪神が怖いのような話だ。
とは言っても付喪神ではない、カレーランプ……?
あ、私がこの俳優演技上手くて好きだと思ってた人がカレーに吸い込まれていった。
急にこの世界が終わるのではないかと思いはじめた。
「少しトイレに行きたいな」
一時停止してトイレに向かった。
「さっきまでの映画の内容を考えていたら、あれ、夢オチの可能性ないか!?」
それなら話の整合性が合う点が多々ある。トイレを流して洗面台に手を洗いに行き、るんるん気分でリビングに戻った。
少しだけ早戻しをして再生した。結局、夢オチではなく、とあるインドの実業家がこういう映画を作りたいから銀行に融資をしてくれ! という『うーん』と思うエンドだった。
バーガーとドリンクを忘れていてそのまま映像特典が流れてる間に食べ始めた。映像特典はよくわからない点を俳優たちが語っていた。
映像特典が終わると、思わず2周目をしたくなった。
「わかる、わかるぞ、この話が!!」




