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ハピネスカット-葵-  作者: えんびあゆ
増毛輝太郎編

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26/76

第26話「ハゲ・コンプレックス!!」[3]

「ふむ、今日も看板の角度は完璧だ……」

輝太郎はゴミ箱の陰からそっと顔を覗かせ、葵の動きを目で追っていた。

しかし、その日の「葵チェック」には予期せぬ訪問者が現れる――。


「ちょっと、何やってるんですか?」

突然、背後から冷たい声が響いた。


「ひぃっ!」と驚いて振り返ると、そこには小学生らしき女子の姿があった。

鎖骨あたりで切り揃えられた、ほんの少しクセのある柔らかな茶色の髪。その髪をポニーテールにまとめた姿は、活発で小気味よい印象を与える。

動きやすそうなハーフパンツとシンプルなTシャツ、そして肩に羽織った白黒のストライプ柄のカジュアルなパーカー。その無駄のない格好が、彼女の行動力の高さを物語っていた。


その少女は俺にキツイ一言をお見舞いしてきた。


「何、この怪しい行動。もしかしてストーカー?」

少女は堂々と腕を組み、ジロリと輝太郎を睨む。


「ち、違います!これは、その……調査です!」

「調査?」

「えっと、美容室の動線を分析していて……マーケティングの一環で!」


輝太郎は焦りながらも、なんとか適当な理由をでっち上げた。

必死に取り繕う輝太郎だが、少女は眉をひそめたまま、怪訝そうな表情で輝太郎を見つめ続けた。

だが、しばらく考えた後、ふっと肩をすくめて、「ふーん、まあ、いいけど」と呟いた。

その口元には、不敵な笑みが浮かんでいる。


「でも、あの人に迷惑かけたらボクが許さないからね」


その一言が鋭い矢のように輝太郎の胸を刺す。

「迷惑……いや、そんなつもりは!」

と反論したい気持ちを飲み込む間もなく、少女は振り返り、「ハピネスカット」に向かって颯爽と歩き出した。


「あーおいっ!遊びに来たよ!」

「この前教えてくれたポニーテールのアレンジ、やっぱり友達に好評だった!だから今日はもっとすごいアレンジ教えてよ~!」

外にも響くその声を聞いて、俺の背筋が凍る。

彼女と葵が知り合いであることが明白だったからだ。


店内から、葵の穏やかな声が聞こえてくる。

「美樹さん、また来たのですね。じゃあ今日は、少し違った感じのアレンジを教えますね」


遂に「葵チェック」が第3者にバレた。しかも、それを告げ口されるかもしれない危険な相手「美樹」に。

「(まさかこんな形で第3者にバレるなんて……こんなところで天使を観察する怪しい男。端から見ればストーカー。それを小学生に見られるなんて……俺の人生オワタ……?)」

俺はただただ冷や汗をかき続けるだけだった。



アーメン。


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