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ハピネスカット-葵-  作者: えんびあゆ
佐々木美樹編

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第20話「双子のアイデンティティ[5]

葵さんがボクの髪を触る感覚が、なんだか心地よく感じられる。

まるで、自分でも知らなかった何かを見つけ出してくれそうな――そんな予感がした。


「それでは、美樹さん。まずはお母さまのご希望通り、髪を鎖骨くらいまで整えていきますね」

葵さんの声は穏やかで、でもその裏には不思議な芯の強さがあった。


「はい……」

小さく頷くしかなかったボクに、美香がちらりと視線を向ける。


「美樹、大丈夫?」

「……うん、大丈夫。」

言葉にしてはみたものの、本当にこれで良いのだろうか。

胸の中にはまだモヤモヤが渦巻いていた。


葵さんのカットはとても丁寧でボクのと同時に美香のヘアカットも同時進行していた。

ボクの髪をカットしたら次に美香の髪も同じようにカット。

この人のカット技術はスピーディーだけど丁寧でそれは小学生のボクから見ても明らかだった。


カットが進む中、葵さんは少しずつボクに話しかけてきた。


「美樹さんは、普段どんな服装が好きですか?」

「え……ボクは……」

言葉を詰まらせながらも、なんとか答える。

「動きやすくて、スポーティーな服とかが好きです。あんまりフリルとかは……。」


「そうなんですね。美香さんはどうですか?」

美香は少し驚いたように目を丸くしながらも、にっこりと笑う。

「私は可愛い服が好き。フリルとか、リボンとかがあると嬉しくなっちゃう。」


「なるほど」

葵さんは微笑みながら2人の髪を見比べる。


「カットが終わりました。どうでしょう?」

鏡に映るボクと美香の髪型は鎖骨付近で綺麗に切りそろえられたストレートのセミロング。

その姿は隣の美香と瓜二つでそのことがボクの心により大きな重圧を与えてくる。

そんなボクを見た葵さんはより確信を得たかのように一言を添える。


「お二人とも、お揃いの髪型もとても可愛いですが、それぞれの個性を少し引き出すヘアアレンジも素敵だと思いますよ」


その言葉にボクは思わず息を飲んだ。


「髪型をお揃いにするのは、お母さまの愛情の表現だと思います。でも、それぞれの個性を活かしながらも、双子らしさを残す方法もあります」

葵さんがそう言いながら、手を止めてママに視線を向けた。


「お母さま、髪型を揃えながらも、お二人の魅力を引き出す方法をご提案してもよろしいでしょうか?」

ママは少し戸惑いながらも、うなずく。

「もちろん。あなたがそうおっしゃるなら提案を聞きたいわ」

それを聞いた葵さんはニコッと笑いママに対して軽く会釈をしていた。


「それでは、ここからは、ヘアアレンジでそれぞれの個性を出してみましょう」

葵さんの手が動き始める。


葵さんがボクの髪を高い位置でひとつにまとめ始めると、自然と鏡に映る自分の姿に目を向けた。

「美樹さんはスポーティーな服装がお好きなんですよね?」

「う、うん!」

ボクは目を輝かせながら、ゴムで結ばれる髪の動きをじっと見つめる。

「毛先を少し引き出して、動きをつけてみましょうね」

葵さんの手がスムーズに動き、ゴムでしっかりとポニーテールを結びながら、毛束を少し引き出して動きをつけていき、跳ねる毛先がさらに元気な印象を与える。

「こうすることで、ただのポニーテールでも立体感が出て、元気な印象になりますよ。」


鏡に映るポニーテールは、これまでの「ただ揃えた髪」とは全く違う。

毛先が跳ねていて、なんだかボクの気持ちまで軽くなるようだった。

「これなら走ったり跳ねたりしても全然邪魔にならなそう!」

ボクの言葉に、隣の席に座る美香がくすりと笑った。


次に美香の番になると、葵さんは手際よく前髪を取り、編み込みを始めた。

「すごい……葵さん、指が早いですね」

美香は驚いたように目を丸くしながら、頭の横で進む編み込みの動きをじっと追いかけた。

「美香さんはリボンがお好きと伺いましたので、編み込みにアクセントとして使いますね」

「は、はい!」

手元からサテンのリボンを取り出し、美香の髪に織り交ぜるように結び目を作る。

「どうですか?これで、可愛らしさがぐっと増しましたよ」


「こんなに可愛い髪型、初めてかも……!」

頬をほんのり染めながら、美香は鏡越しに自分の姿を見て笑った。

鏡越しに笑顔を浮かべる美香の姿は、まるでお姫様みたいだ。


美香が自分の髪に編み込まれるリボンを見て、嬉しそうに頬を染める横で、ボクもポニーテールの軽やかさを感じながら少しだけ笑ってしまった。

なんと、葵さんはヘアアレンジ用のブラシや細いゴム、光沢のあるリボンなどを器用に使いながら、ボクたちの髪に命を吹き込んでくれたのだ。


―――あなたの魅力、引き出しました!

先ほどまでの落ち着いた声だった葵さんがいきなり大声を上げて驚いたけどすぐに元の落ち着いた声に戻る。


「これで、お揃いの髪型から一歩進んで、お二人の個性を取り入れたスタイルになりました」

葵さんはそう言って、2人の仕上がりを確認するように微笑んだ。

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