第14話「大胆カットで大変身!?」[12]
「ごめん、待たせちゃった?」
当日、新しいヘアスタイルのピクシーカットと、デコルテや首筋、美脚を生かしたおしゃれな服装で待ち合わせ場所に現れた優里は、周りから注目を浴びる存在になっていた。
彼女はオフショルダーのパステルピンクのブラウスに、ハイウエストの黒いミニスカートを合わせていた。
優里の足元には、ゴールドのストラップが煌めくオープントゥのハイヒールがあり、スタイルの良さを一層引き立てていた。
また、腕には細めのゴールドのバングルが華奢に光り、さらには耳元の葵にもらった花のシルバーイヤリングが全体のコーディネートを引き締める役割を果たしていた。
―――梓と美咲は驚きのあまり声が出なかった。
結衣が目を丸くして叫んだ。
「優里ちゃん、すごくかわいい!変わったね!」
優里は照れ笑いを浮かべながら言った。
「そうかな……」
結衣は優里のコーディネートに目を細めながら言った。
「このオフショルダーのブラウスとミニスカートの組み合わせも素敵だし、足元のハイヒールとバングルまでバッチリ決まってるよ!」
優里は自分のコーディネートを改めて見ると、結衣の言葉に頷いた。
「うん、髪を切ってくれた美容師さんのアドバイスもあって、自分でも思ってた以上におしゃれになれたかも」
結衣はにっこり笑って返事をした。
「うわぁ、優里ちゃん!その髪型めっちゃ似合ってる!あの長かった髪がこんなに短くなるなんて、びっくりしたけど、すごく可愛いよ!」
「あ、ありがとう……嬉しい」と、頬を赤らめる優里。
この大変身を素直に褒めてくれる友人の存在がとてもかけがえのないものだと感じた。
結衣は優里の変化に感慨深げに言った。「その美容師さんはすごいね。優里ちゃんがこんなに変わるなんて思ってもみなかった。」
優里は「うん」とうなずいて、
「(そうね、葵さんには感謝してもしきれない)」
と思い、心の中で葵に感謝の念を抱いた。
彼女の変身は、自分自身に自信を持って自分らしく輝くことの大切さを教えてくれた。
その思いを胸に、優里は結衣と一緒にファッションショーの会場へと向かっていった。
美咲は梓に話しかけた。
「ねぇ、梓…」
「なによ…」
梓は無表情で答える。
優里と結衣が会場に向かうのを横目に見ながら、美咲はつぶやいた。
「あの子、めっちゃ可愛かったんだね…」
梓はふてくされた顔をしながらも、ちらりと優里の後ろ姿を見つめていた。
その小さな背中が、まるで光をまとっているように見えたのは気のせいだろうか。
「フン、さっさと私たちも行くよ、美咲。」
彼女の声には、どこか苛立ちと焦りが混じっていた。
―――負けた気がする。
梓はその感情を認めたくなかった。
「私だって、もっと頑張れば……いや、次は絶対に見返してやる。」
そう心の中で繰り返しながらも、どこか自分への苛立ちが残っていた。
美咲がため息をつきながらも微笑む横で、梓は無言のまま前を向き、優里の後ろ姿を心に焼き付けていた。
美咲はそっとため息をつきながらも、視線は優里に釘付けだった。
「ホント、梓も素直じゃないよね……アンタも可愛いのにさ」
その言葉とは裏腹に、美咲の胸には複雑な感情が渦巻いていた。
優里がこんなに魅力的に変わるなんて―――正直、羨ましい。
けれど、それ以上に素直に努力を重ねた彼女を尊敬する気持ちもあった。
美咲はそんな自分の気持ちを悟られまいと、軽く梓の肩を叩いて笑った。
「でもさ、梓、悔しいでしょ?優里、すっごく変わったよね。」
彼女の言葉には、少しだけ挑発的な響きも含まれていた。
「あんたも行ってみたら?ハピネスカットってヘアサロンにさ」
梓はちらりと美咲を見たが、気まずそうに目をそらして言った。
「別に、変わる必要なんてないし……」
その言葉の裏にある葛藤を、美咲は感じ取っていたが、あえてそれ以上は何も言わなかった。
「ま、どうせまた意地張ってるだけでしょ?あーあ、私も行ってみようかな?ハピネスカット」
軽い口調でそう言いながら、美咲は梓の肩を軽く叩いて先に歩いて行った。
梓は優里を見つめるうちに、どことなく羨ましさのようなものを感じていたが、それを素直に言えなかった。
美咲は梓の心情に気づきながらも、彼女の負けず嫌いな性格に呆れたように笑っていた。




