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第四話 うつけの息子


 話は少し遡る。帰蝶は光秀や徳川家臣団と別れ、家康と忠勝と一緒に堺へとやって来た。家康が堺を脱出した話は、織田勢や秀吉の耳にも届いている頃だ。家臣一人と信長の妻を連れて、再び堺の港にいるなど思いもよらない事だろう。


 帰蝶の影護衛には蘭丸こと森成利と、帰蝶の弟の斎藤利治がついている。二人ともそれぞれの主従を失い、後を追いたがっていたが帰蝶に止められた。信長、信忠親子の無念を果たした後、腹を切りたければ好きにせよ──そう告げられたのだ。すでに死んだと思われている身のため、帰蝶の護衛を任された。


 堺の港では遠征のための戦船をはじめ、食糧や武器弾薬を積むための商船や、漁師の船がいくつも集められている。大軍派遣前だった海上は、いまだにごった返していた。負け戦を演出するという策が失敗に終われば、今度こそ光秀とはお別れになるというのに⋯⋯帰蝶は久方ぶりの船旅にはしゃいでいた。


「────まるでわしらが帰蝶様の側仕えのようだな」


「殿が傅役の爺で、俺が護衛ですか」


「ぬかせ。わしも腕は磨いておるわ。それにしても光秀殿は信長様がいてもいなくても、苦労が絶えないお方だな」


 呉服屋の四郎次郎の用意した衣服のせいもあって、守るべき対象の家康は帰蝶の爺やのように見える。戯れに揶揄したものの、忠勝は逆に安心した。帰蝶が明るく振る舞うことで、家康への注目が減るからだ。何より主君家康の緊張が取れたのも大きい。


 信長公が去って、誰よりも不安だったのは我が殿だと忠勝は感じていた。良くも悪くも先例を築いてくれるのが織田信長という存在だった。今川時代も雪斎和尚や今川御大将と立て続けに亡くなり、学べる大きな背中がなくなった時があった。忠勝は家康の苛立つ事が増えていたのを思い出す。盟友に近い光秀に、尊敬し頼りにしてきた帰蝶の存在が味方について側にいるのは、とくにありがたいと思う。帰蝶に対しては崇拝に近く、恋慕の情はないようだ。忠勝も便乗して家康への警護を配慮しつつ、帰蝶のお付きのフリに徹する。堅物なようで忠勝の思考は柔軟なのだ。


 ◇


 光秀や家臣達と別れた家康達は、帰蝶の誘導のもとに動くことにした。拍子抜けするくらい簡単に混乱する中央を脱して、伊勢の洋上へ船を廻す事が出来た。


「伊賀越えの襲撃も、家康殿不在にすぐに気づくはずよ。行方が知れる頃には二人共三河についているわね」


 徳川家臣団と勢いで京へ向かったのも功を奏していたが、機運というのがどれだけ大事か知り、家康も忠勝も顔を見合わせた。


 帰蝶に振り回されながらやって来たのが信雄の居城────松ヶ島城。かつての居城は田丸城だったが、家臣の不始末のどさくさで燃やされて、新しく移って来たのだ。敵もなしに居城を落とされたようなものだ。配下一人まともに取り扱えないうつけの若大将と、織田家中の笑い話になっていたという。築城が盛んに行われていた時期でもあり、道楽息子だけあって自分も作りたくなったのだとか、岐阜に移る話の出始めた信孝に嫉妬して、新しい城を欲しがったとも言われていた。


 そんな信雄だったが、本能寺における父の凶報を聞くとすぐに陣触れを発して、仇敵を討つため急ぎ軍を整えさせていた。帰蝶と家康達が松ヶ島城ついたときには、城下は騒がしく臨戦態勢が取られていて、すぐにでも出陣する気配が漂っていた。


「⋯⋯都での訃報が信雄の下にも届いたようね」


「それにしては軍備を整えるのが早いような⋯⋯」


「信雄の用意周到ぶりは、家康殿なら知っているのでしょう」


 正信がいれば兵の動きから出陣状況や兵の数まで正確に割り出してくれただろう。見つけたとわかると、あてにしてしまうのは良くない。帰蝶の案内で、賑やかな城下を見渡せる所まで移動する。


「殿。弥八郎が戻ったからと早速あてにしようとしても、ここには来ていないのですぞ」


「わかっておるわい。帰蝶様、信雄殿の動き⋯⋯どう見てるのですかな」


 家康のぼやきは言葉になっていなかったはずだが、忠勝が咎めた。わかっている事を忠勝に指摘されて、家康はむくれる。そして気持ちを誤魔化すように、帰蝶に尋ねた。正信をあてにはしたが、家康も戦国の将。数くらい多少は数えられる。家康の目算では、城下に集う荷駄の数や人夫の様子から、三千はすぐに動かせるように見えた。いまから急行すれば、秀吉より先に光秀を討つのも可能だろう。


「兵の数は⋯⋯五千くらいね。信雄は兄、信忠の人の良さと諦めの良さを一番心配していたのよ。それに宗易殿との関わりから秀吉謀反の可能性についてもね。だからこの数は、都へ進軍するつもりの動き」


 事態の急変に対応出来るように、信雄はかねてから備えていたのだと帰蝶は言った。父⋯⋯信長は、義父の道三の危機に駆けつけた。しかし────救出は間に合わなかった。帰蝶は信雄にせがまれて、その話を何度もさせられた覚えがあった。口には出さなかったが、信雄は信長の窮地にいつでも駆けつけられるように準備をしていたのだ。


「悔しくて心のうちで泣いていそうね」


 帰蝶がクスッと笑う。世の中における織田信雄という人物の評価は低い。しかし彼の才能を一番近くで育て成長を見てきた帰蝶は、信長の子の中で一番高く信雄の能力を買っていた。


「謀反の可能性を考えて、伊賀に進軍して失敗したのよね。夫の信長には大人しくしているように叱られてたわ」


 帰蝶の言葉が本当ならば────信雄と言う男はとんでもない才覚の持ち主であると家康は驚く。謀反を計画した秀吉陣営の首脳以外、誰も事の状況を掴めていないというのに。残念な事に織田家で信雄の言葉を信じるものは少なく、信長存命中に知らせた所で、先に消されていたのは信雄だったかもしれない。


「それに⋯⋯信雄殿が羽柴側と通じあっているやもしれないですな」


 忠勝は織田家同様に信雄をそこまで評価しておらず、浮かぶ疑問を帰蝶に告げた。


「その可能性はなくはないわ。でも⋯⋯どうかしらね。秀吉は利のない金子撒きはしない男。信雄が田丸城を焼いた時に、見舞い金を出してくれたのは────家康殿と信忠くらいのはずよ」


 まるで信雄の先見性を見て主君が見舞い金を出したように言われて、忠勝は恥ずかしくなった。秀吉が利己的な反面、主の家康は気前が良いみたいに取られても困るのだ。人質生活の反動もあって、徳川家中は全体として吝嗇を好む傾向にある。


「⋯⋯わしは田丸船に関して、交友があっただけで、正直見縊っておりましたよ」


 家康も照れながら正直な気持ちを述べた。信長との同盟関係上、家康が西へ出るには海上しかない。うつけの信雄を手懐けておけば、後々何かと役に立つ⋯⋯そんな算段があった。露骨には言わなかったが、謀反はともかく信長自身の身に何か起こるかもしれないと考えて、信雄のように家康も備えていた。


「最悪の事態に備えて出来る事はしておくのは正しきことよ。それが戦国の習い。むしろ信雄とは気が合うでしょうね」

 

「母上──あまり私を賢きもののように吹聴するのはおやめ下さい」


 帰蝶の声が大きかったのは、近づいて聞き耳を立てる男に気づいていたからだった。木陰で潜むものだから、帰蝶がいたずらしたのだと家康と忠勝が呆れる。信雄が帰蝶たちの前に出てくるまで、褒め生やし続けていただろう。家康は驚いていたが、忠勝は気配に気づいていたのだろう。帰蝶が目配せしたので、素知らぬ顔で警戒だけしていたようだ。

 

「信雄殿、どうして城下に?」


 出陣の触れが出ているため、松ヶ島城は準備に何かと忙しい。号令を出した殿様が、呑気に城下で立ち話をしている場合ではないのだ。


「出陣の前だろうと、見慣れぬ船、怪しげな旅人の報告を受ければ確認くらいするだろうさ。やって来てみると、九鬼の船に、母上は私にわかりやすいよう、蝶の染物の着物を着てらっしゃる」


 普段からの心がけと、それだけの情報で城下にやってくる勘働き。示し合わせていたわけではなさそうだと家康と忠勝は思った。おそらく用心深いのだ。信雄は確かに噂以上の非凡の才を感じた。


「母上、家康殿に忠勝殿、ここでは目立つ。我が城へ案内いたそう」


 信雄の案内で帰蝶達は松ヶ島城内へ入った。家中の者達は信雄の奇行に慣れているようだ。出陣の触れを出しておきながら、客人を招いて茶会を開こうと気に留める様子はなかった。信雄は手ずから茶を立てる。あまり作法は気にしない様子だ。茶筅丸などと名付けられた男だから、茶を立てるのが恥ずかしいのかというと、そうでもない。徳川領に茶の産地があるのを知っているので、用意されてるお茶では満足出来ないと理解しているだけなのだ。


「それで信雄。あなた五千で秀吉の連合軍五万に勝つ気なの?」


 帰蝶は信雄の欲しい情報を軽くまとめて与える。敵は秀吉である事、最低五万の軍に膨れ上がる事を、だ。


「光秀の手勢を逃がすのを助けるだけならば、五千もあれば充分ですよ。それに万の軍は動きが鈍る。補給さえ気にかけなければ事足ります」


 羽柴軍の実働兵数は二万足らず。明智軍は一万五千くらいと信雄は読んでいた。そのうちの一万二千は寝返りが決まっている。丹羽と信孝の軍が合流したのなら確かに五万以上の軍に膨れ上がる。信雄一人加勢に向かった所で都が火に包まれる前に鎮圧されるだろう。


「それがわかっていても行くのね」


「母上⋯⋯家康殿と結ばせるために知恵を試すような真似は良くないですぞ」


 信雄は嫌そうに帰蝶の楽しそうな顔を見た。あまり才覚をひけらかすと、後に警戒される。うつけを都合良く使って家康の理と利を誘導するつもりが台無しになった。


「だから貴方の性根を知るのは、家康殿と忠勝の二人だけにしたのですよ」


 帰蝶の洞察眼に家康と忠勝が目を見開く。家康の家中は結束が強いようで自負心が強くまとまりがない。猜疑と嫉妬の強さで、実際に身を滅ぼした。いまはマシになった方なのだが、大身になればどうなるかわからない。


 徳川に限らず、織田家でもそうした空気は少なからずある。織田家の版図を広げた信長自身もそれで苦労して来た。もっと協力的に動いてくれていたのなら、乱世の終結は十年早まっていたかもしれない。


「人の本質はそうそう変わらぬよ、家康殿。利が絡むと悪くなるばかりだ。私も兄上の立場になっていれば、秀吉より先に父を廃していただろう」


 自虐的に信雄が笑った。逆にそんな心配などいらないように思わせる、ふてぶてしい心を感じた。帰蝶が実力を買うはずだった。家康はこの男を斬らずに使う事を強いられたに等しい。だが、頼もしく思った。


「母上こそ──貴女と光秀の考えを、家康殿には適当にしか伝えていないのであろう。私の動きにも関わりあること。存念をお聞かせいただくとしようか」


 家康の不安を取り除くように信雄は帰蝶に問いただした。信雄の言う事には一理ある。噂だけで動くよりも、見聞した生の情報は知っておきたいものだ。帰蝶に遠慮して、家康からは聞けなかった事を、信雄はお返しとばかり、ニヤついて尋ねたのだ。 


「ずるいわねぇ信雄。まあいいわ。光秀の計画は──死んでから始まるわ」


「察してはいたが⋯⋯そのような事が可能なのか?」


「えぇ。そのために信頼出来る兵達を都じゅうに伏せたわ」


「なるほど⋯⋯逃げに徹して伏勢に殺させるのだな」


「性格悪いわね、信雄は。あちらが勝手に死体を用意するに決まっているでしょう。落ち武者狩りにでも捕まったことにして」


「なるほど⋯⋯あくまで偽者を使いつづけるわけだ」


「戦う気のない兵をあえて戦わせるためとはいえ、大胆な采配ですな」


 帰蝶の言葉に信雄と家康がそれぞれ感心する。簡単に行かなくともあちらが始末に困るだけなので開き直っているようにも見えた。


「そうなると⋯⋯光秀の目的は家臣達の縁者の逃亡先か。そうか、それで家康殿か」


「どういうことだ、信雄殿?」


「三条西家に預けたい所だが、秀吉が力を増した時に危うい。正信を使って派手に伊賀路をゆけば、家臣団共々家康殿が匿ったと見るだろう」


 公には出来ない大集団が家康に扮する正信達一行に加わることになる。先の戦いで被害の大きい伊賀者たちも、事を構えるよりは、家康へ恩の一つでも売り、次の天下人の動静を伺いたいはず。


 家康は確認するように帰蝶を見る。いたずらが見つかってもへこたれない童子のように帰蝶は笑う。家康は自分達を助けるためと言いつつ、都合良く利用されたことに気がついた。誰がどの時点でそのやり取りや方針を決めたのだろう。家康に光秀の家臣団が加わったと見せて、手強さをあげる助けにする。しかし実際は⋯⋯。


「武田の旧臣を受け入れている家康殿だから、どのみち疑いの目がゆくはずよ。偽装には偽装ってわけ」


「⋯⋯なるほど。三条西家と、わしに目を向けさせて、実際は信雄殿に全て預けると」


「信雄の事だから、焼け落ちた田丸城跡を密かに再建しているわね。そこに集落を築き、情勢を見て三条西家や家康殿のもとへ逃がせばいいわ」


「はぁ⋯⋯秘密裏に行っていた事を、よくご存知ですな、母上は」


「嘉隆が白状したのよ。信雄がおかしな事をしているって」


 織田家海軍の大将、九鬼嘉隆は焼け落ちたはずの田丸城跡へ人手が向かうのを海上から見たようだ。利便性の高い土地に新しい城を築いたのに、わざわざ不便な焼け跡に住むはずがない。


「家康殿との中継地にするにはちょうど良い場所さ。それに万一の抑えとしてもね。嘉隆のように独自で開発した天眼鏡を使って覗こうなどと思わぬ限り、海上から見つかることはないからな」


 九鬼嘉隆は信長の意を汲んで動いていた。海賊も陸地へ逃げ出すような面構えのくせに、熱心に研究を行っている。


「見慣れぬ船もそれでか。嘉隆は秀吉も欲していように」


「あれは研究馬鹿よ。古の鳥船を造って献上したいそうよ。それには金払いの良い秀吉は都合良いのよ」


 信雄の家臣につけられてはいたが、九鬼嘉隆は自由にさせている。頼りにもなるが、扱いづらい人物でもあった。その理由の一端が帰蝶のせいだと知り信雄はため息をついた。


「まあ表立って戦いになっても、あれは義理を通す男。母上には忠実ならそれでいいさ」


 秀吉につくにしても、必要な事態になれば信雄にも家康にも便宜をはかってくれる。こうした精神は実に自由な海を持ち場にしているものらしい考えだと言えた。家康としても話はつけておき、完全に敵対しないで済めばそれで良かった。


 家康と信雄の盟約は、帰蝶を証人として成立した。表向きは手切れとなって敵対しようとも、腹の知れたいまは、互いに信を置く。九鬼のように、立場を変えて動くことになるだろう。二人を結びつけて帰蝶も満足気だ。家康は自分の今後に、うつけと呼ばれた男が重要になるなど思っていなかった。ただ⋯⋯信雄を隠れ蓑に、力をつけよと帰蝶に発破をかけられているのはわかった。


「もう一つだけ伺っておきたいのですが、よろしいか。何故秀吉は明智殿を密かに手を回し始末しないのでしょうか」


 家康がこの際だからと帰蝶へと尋ねた。念入りに時をかけて、偽装兵の軍団まで用意していた。竹中半兵衛の天下獲りの策略通りにするのならば、光秀の存在は邪魔だ。本物だろうかどうかは結局問題ではない。明智光秀の影武者────つまり偽物を仕立て、華々しい戦場の舞台で織田信長の仇討ちを遂行しても良いのだ。世の人々はそれで納得するのだから。


「言いたい事はわかるわよ、家康殿。半兵衛の策略は、舞を見物するようなもの。光秀を始末出来るのなら、さっさと片付けて舞台で演出すればいいものね」


 本能寺で信長を討てた時点で、機会はいくらでもあった。村井親子を使って信忠まで始末した秀吉が、光秀を殺さない理由はない。半兵衛の策が恐ろしいのは、人心を操る事にある。信長さえ討ってしまえば、光秀の首は飾りでもいい。首を掲げてしまえば、本人が生きていても死人と同じにされてしまうのだ。


 生きて動き回る光秀は目障りだろう。殺せる機会があったのに、生かし、あわよくば仇討ちの名目で雌雄を決さんとする秀吉の心情が、家康には理解出来なかった。


「秀吉の気持ちは、私にもわからないわ。光秀が羨ましかったのかしらね。殺すなら自分の手で戰場で殺したいくらいに」


 秀吉という男が唯一信頼を寄せたのは信長という男だったのかもしれない。何かにつけ光秀をあてにして、頼る信長の姿を見るのが嫌だったのか、頼られる光秀の立場に自分がいたかったのか。


「それを秀吉めの油断とは思わないな。おそらくそうでもせねば、奮い立てぬだけの事なのだろう。父を討たれたのだ、同情はせぬがな」


 父親に認めてもらいたくて仕方なかった信雄には、秀吉という男の誇りが少しはわかるようだ。


「天下を簒奪しようと言うのなば、秀吉個人の感傷など捨てるべきだったのは確かね。光秀憎しのあまり、家康という大敵を野に放ってしまうのだから」


「帰蝶様。わし本人の前で言う言葉ですか」


「事実だもの。半兵衛が生きていたのなら、あなたが秀吉の立場で光秀の首を獲らされていたかもしれないわよ?」


「ご冗談をおっしゃいますな」


 どのみち信長公の死が必須なのには変わりない。ケロッとした顔の帰蝶。しかし半兵衛にブツブツ文句を言っている所を見ると、彼の天才が余計な事をして怒っているようだった。


 秀吉の光秀への執着心は本物のようだ。黒田官兵衛からの進言も聞き入れず、直接会戦にこだわっていた。帰蝶が家康達と別れて都の光秀のもとへ戻っても、光秀の首はまだつながっていたのだから。



 信雄の出陣は、光秀を討つ名目で集められて粛々と動き出す。しかし途中で逃避行中の家康と出会い、その安全を確保する役目を務めることになった。伊賀者の護衛と称した光秀の家臣達の縁者に、信雄軍五千の援護を受けて、家康は無事に三河の地まで戻る事が出来た⋯⋯そんな事実が家康のために神事のように伝えられたという。

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