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第9話 秘密

「どういうことだ?」

「まず、廃嫡に関して動いていたのは宰相だ。シャルルは乗っただけだね。まあ、シャルルにすれば自分に王位が転がり込んでくるわけだから、兄を追放することにはあっさり同意するよね」

「とんでもねえ話だけどな」

 権力が絡むと、人間はとんでもない発想をするよなとシモンは苦笑いだ。

「まあね。ドワーフの末裔の貴方には理解でいないでしょうよ」

「貴様っ」

 その秘密をなぜ知っていると、シモンは目を剥いた。

「まあまあ。ここで睨み合いはなしで」

「いや、そもそもお前は何者だ。レオの護衛として来たのは、その隠している本性のせいか」

「シモンは気づいていると思ってたんだけどなあ」

 自分の正体はばれていなかったのかと、アンドレはくくっと笑う。

「異能者だろうってことは解ってたが、何者だ?」

 そんなアンドレに、あの村に人がいると確信していた時点で、こいつは同じ側の人間だと思っていたが、予想よりもややこしそうだ。

「そんなに睨まないでよ。王宮に潜り込める時点で、俺の能力はたかが知れているって解るだろ。ただ、人よりよく見えるってだけ」

「千里眼か」

「そう。だから、俺に隠し事は不可能ってこと。と、互いの正体が解ったところで続けるよ。今回の件の主導者はあくまで宰相だ。奴は王様の落馬事故にも絡んでいる」

「ははあ。急にレオが政務を執るようになったっていうきっかけね」

 シモンは腕を組み、いきなり自分が国王として生きなければならなくなるって、どういう感じなのだろうと悩む。が、まったく想像出来なかった。

「普通ならば、わたわたして宰相に泣きつくだろうさ。なんせ、いくら教育を受けているとはいえ、政治は素人なんだから。でも、王子様は完璧にこなしてしまった。そこで宰相は次の手を打った」

「なるほど。構造としては簡単なんだな。宰相が全権を手に入れたい。そのためにあれこれやってる」

「そういうこと」

 アンドレはにこっと笑い、でも、ここからがポイントと指を立てる。

「レオナールが完璧に政治を出来たことも不思議だけど、ここまで生き残れたのも不思議だ。そして反射神経は単に訓練していただけとは思えない速さ。狩猟能力も完璧。ここまでくるとはっきりするのは」

「レオも異能力者だってことか」

「そう。だからレオナールには異能力者の扱いが隠されていたんだと思う。異能の存在を知ることで覚醒しちゃう人、いるからね」

「ははあ」

 それで宰相の企みは悉く頓挫しているのかとシモンは頷いた。しかし、王族が異能力者だと。これは納得出来ないことだ。

「いや、この国は他の国に比べて異能力者に寛大だろ。それって、たぶん、どこかで異能力者の血が混じったからじゃないかな。他の国から怪しまれないように、異能力者の身分を一段下にしているけど、殺されることはまずないだろ。どうしてそんな措置なのかといえば、どこかの時点で王族と異能力者が交わり、王族の中にも異能を発揮する人がいるからじゃないかな」

「なっ」

 それはとんでもない秘密じゃないかとシモンは驚く。だが、そう考えると、王子様の意外なタフさも納得できる。

「レオナールは色んな秘密を抱えているんだよ。本人が知らないうちにね」

 アンドレはだからこっちに残ったんだよと、楽しそうに笑うのだった。




 さて、夜中にとんでもない話題が交されていたなんて知る由もない俺は、キャンプ生活を満喫すべく、朝からきびきびと働いていた。

 寝袋を木に掛けて干し、テントの中に溜まったゴミを掃き出す。次に汚れた服を持って近くの川へ。そしてじゃぶじゃぶと洗い始める。

 追放されて村にやって来た身の俺は、もとより服を持っていなかった。だから今洗っているのはピーターのお下がりだ。他のやつはアンドレが調達したもの。数も少ないから、丁寧に使わなければならない。

「おはよう」

「ああ、おはよう」

 そうしているとマリナも洗濯物を持ってやって来た。基本、山でも修道女姿の彼女の洗濯物は、やっぱり修道女服だ。何着か替えを持っているらしい。

「なあ。その格好って動きにくくないのか?」

 洗濯の手を止めることなく、俺はふと疑問に思って訊ねた。すると、マリナはにやっと笑うと、スカートをたくし上げてみせる。

「うわっ。って、スリット?」

「ええ」

 大胆な行動にもマリナの生足にも驚いた俺だが、スカートはいくつもスリットが入っていて、足の動きを邪魔しない構造になっていた。さらに、下には目立たないように短めのズボンとがっちりした革靴を履いている。

「普通にしているとただのスカートに見えるでしょ。これがポイントなのよ」

「ははあ」

 少し顔を赤くしつつ、なるほど、動きやすさはすでに追求済みだったかと納得する。やはり放浪生活の年期が違う。

 って、放浪していても修道女ってのはどうなのだろう。巡礼という体裁を取るためだろうか。


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