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第8話 探り

 本日の晩ご飯、イノシシ鍋は豪華なものだった。

 俺がちゃんとイノシシを仕留めたというのもあるが、シュリたち女性陣が山菜やきのこに詳しく、色々と調達してきてくれたこと、シモンが一人で山を下りて村から調味料を調達してくれたおかげだ。

「美味っ。もう最高だよね」

 がぶがぶと鍋を食べつつ、俺は大満足と笑顔だ。

「そいつは良かった。お前がこの生活に馴染まなかったらどうしようかと思ってたが、あっさり馴染んでくれてこっちも助かっている」

 シモンは調味料と一緒に買ってきたワインを飲みつつ、温室育ちの甘ちゃんだったらどうしようかと思ったぜと豪快に笑った。

「くっ。温室育ちってのは否定出来ないところだけど、そこまで甘やかされていないよ。そもそも次の王様になるかもしれない奴が、ぼんくらだったら困るじゃん」

 俺はイノシシ肉を囓りつつ、国民が困るだろとシモンを睨む。

「まあ、そうだな。じゃあ訊くが、お前を追い落としたシャルルは大丈夫なのか? ぼんくらじゃねえのか?」

「えっ」

「王太子として立派に育っていたレオナール様に取って代わっても大丈夫なほど、そいつもちゃんと教育されていたのか?」

「ええっと」

 まさかそんなことを訊かれるとは思っておらず、俺は言葉に詰まってしまう。

 なんで今、そんなことを訊くんだよ。

 確かに次の王位が確定している男子がいる中、シャルルはそれなりに伸び伸びと育っていたはずだ。しかし、いざという時を考え、ぼんやりとは育てられていないはず。

 たぶん、うん。ってか、自分のことで必死なのに知るわけないじゃん!

「レンジャー部隊のことが気になるんだよね、シモンは」

 言葉に詰まってしまった俺に代わり、アンドレがにやりと笑って問い返した。それにシモンは大きく頷く。

「ぶっちゃけ、あの村のことを知らないはずの王宮の連中が、本気の精鋭部隊を送り込んできたってのが気になっているんだよ。お前、廃嫡されたことに関してちゃんと考えているのか」

 シモンはそこまでして確実に殺したいっておかしいだろと指摘する。

 確かにそうだけど、俺はシャルルがそれだけ憎いからだと思っていただけで。

 でもまあ確かに、ほぼ死に体だった俺が短期間で回復出来たのは魔法という特殊な方法があったからで、普通はまだ寝たきりだったはずだ。奇妙と言えば奇妙に思える。

「まあまあ。ご飯中にそんな話題をしなくてもいいじゃない」

 見かねたマリナがそう仲裁に入り、俺にもワインを入れてくれる。

 俺はそれをがぶがぶと飲み干すと

「何もかもがいきなりだったから解らないよ」

 と、ようやく言葉を返せていた。

「ふうん。廃嫡される謂れも無かったってことだよな」

「まあ、それは、たぶん」

 昼間、イノシシを狩りながら考えていたが、俺だって根本的な原因は解らないままだ。

「陰謀の臭いがぷんぷんするんだよなあ。お前、それでも気にならねえの?」

 シモンは今後を考える上で、そろそろ現実に向き合ったらどうだと唆してくる。

 しかし、俺にどうしろというのか。

「今、俺は責任ある立場じゃない。国民のことを考えると、シャルルが次の王になることが最善なのか、それは解らない。でも、廃嫡された事実が覆るわけじゃないんだ。書類は偽造されたものじゃなかったし、みんながそれに賛同した、ということは、俺は王に相応しくない。それだけだよ」

 俺はぷいっと横を向くと、シモンの分の肉も食ってやると、鍋を黙々と食べるのだった。




「急ぎすぎじゃない?」

 その夜遅く、見張りをするアンドレは、同じく火の番をして起きているシモンに非難の目を向けた。

「そうか? レンジャー部隊だぞ。次は何が来るか解らん。そんな時、俺たちはあいつのために戦うんだぜ。ちょっとは嗾けておいても罰は当たらないだろ」

 しかし、シモンはお前だって俺たちと同じ気持ちだろと笑って受け流す。そして

「俺たちの協力を取り付けたお前のことだ。あの王子様の秘密を知っているんだろ?」

 そろそろ白状しろよと、こちらを問い詰めることにした。

 この変な騎士が王子様の傍に残ったのは気まぐれじゃない。

 そう確信しているシモンは、じろりとアンドレを睨む。

「まあ、確かに色々と気づくことがあったから、こっちに残ったんだよね」

 アンドレは明らかにこっちの方が面白いんだよとにやりと笑う。


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