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第6話 敵襲

 バーベキューは無事に終わり、俺は早々にベッドに潜り込んでいた。

 毎日のように野山を駆け回り、騒いでご飯を食べていたら、そりゃあくたくたになる。

 王宮とは違う疲れだ。でも、こっちの疲労感の方が気持ちいいよねと、俺はぼろい布団に丸まりながら思った。

「明日も忙しいんだろうな」

 そう呟いた頃には、すやすやと寝息を立ててしまっている。

 だが、そうやって眠りに落ちる瞬間を狙っていた者たちがいた。

 屋根からロープでするすると二階の俺の部屋に降りてくる奴ら。そう、宰相・ラオドールが手配したレンジャー部隊だ。

「――」

 音もなく窓を開けて、俺のベッドに近づいてくる。しかし、俺は疲れてくたくたなので、そんな危機が迫っているなんて気づくはずもなく、ぐうぐうと寝てしまっている。

 寝ている間に死んでしまうのか。

 レンジャーたちが簡単な仕事だったなと、にやりと笑って剣を振り上げた時――

「そこまでだよ」

 ばんっと廊下側のドアが開いた。開けたのはアンドレだ。

「王子様が生きていると気づけば暗殺者がやって来るとは思っていたけど、早かったねえ」

 そのアンドレは緊張感なくレンジャーに向けて言った。レンジャーたちはそれでも気を取り直すと、騒ぎが起こっているというのに寝ている俺に向けて剣を振り下ろそうとした。

「させるか!」

 と、そこに大声と轟音が響く。

 ここでさすがに疲れてくたくただった俺も目を覚ました。

「ぬがっ。うわっ」

 起きたら見知らぬ連中がわんさか、壁には大穴が開き、アンドレが剣を構えているという状況に驚いてしまう。

「王子様。呑気すぎ!」

「レオ、大丈夫かよ。殺気くらい解れよ!」

 そんな寝起きの俺に、アンドレと、大穴を開けた張本人、ピーターから苦情が飛んでくる。

「ええっと」

「早く殺せ!」

 戸惑う俺に、まだ隙だらけだとレンジャーたちが飛びかかってくる。それを俺は慌てて布団を投げつけて防ぐ。

「なっ」

 布団が飛んできて慌てている隙に、俺は逃げようとしたが、精鋭部隊であるレンジャーたちがそう簡単に見逃してくれるはずはない。脇腹目がけて剣が飛んでくる。

「ぬおっ」

 それを間一髪で避ける俺。

 反射神経があってよかったぜ。

「レオ、伏せて!」

 と、そこにマリナの声がしたと思うと、火炎放射器のごとき炎が飛んでくる。

「ぐおっ」

「怖っ」

 それに巻き込まれて二人アウト。俺はその様子にビビってしまう。

 魔法使いって凄え。

 しかし、それで諦めてくれるレンジャーではない。敵が増えようとも俺ばかりを狙ってくる。

「くそっ」

 ベッドから飛び退くと、俺は火炎放射で持ち手がいなくなった剣を拾い上げ反撃に移る。

「はっ!」

 俺は剣で手前にいた男を一突きする。

「おおっ」

「意外と強い」

「煩い!」

 それに感心するアンドレとピーターに向って怒鳴りつつ、俺はあっという間に残り五人となったレンジャーたちを斬り伏せた。

「さすが」

 それにマリナはぱちぱちと手を叩く。

 しかし、上手く撃退出来たのはいいが、大問題が発生したのは間違いない。

「シャルルは俺が生きていることに気づき、殺そうとしたんだな」

 俺が確認すると、アンドレはそうだと頷く。

「レンジャーを出してくるなんて、相当本気で殺そうとしてるよ」

「拙いな」

 せっかく村で快適スローライフと思っていたのに。

 俺は斬り伏せた奴らを見下ろし、どうしたものかと悩む。

「逃げるの?」

 マリナはここで待ち構えるのもいいんじゃないと訊いてくるが、それではいずれ、村ごと滅ぼされかねない。俺は首を横に振った。

「朝になったら出立する。アンドレ、お前は」

「付いて行くよ」

「じゃあ、私たちも」

「ずるい、私たちも行くわ」

 アンドレだけでなく、マリナにピーター、いつの間にかやって来ていたシュリやキキも付いて行くと主張する。

「お前ら」

「山で生活するなら俺も頼りになるぜ」

 さらにシモンまで名乗りを上げて、俺は新たに出来た仲間たちに感謝するしかないのだった。




 こうしてせっかく直した城館を去ることになった俺だ。レンジャーたちの死体を城館の裏に埋めて、さっさと村を立ち去ることになる。そうしないと、次の部隊が送り込まれてくるかもしれないからだ。

 夜明けとともにピーターに開けてもらった穴に死体を放り込み、俺はせっせと土をかけた。

 あと何度、こんなことがあるのだろう。

 生きていれば、ずっと命を狙われる。その度に俺は国王に仕える軍の連中を殺し続けるのだろうか。何の罪もない兵の命を奪ってまで、俺に生き続ける価値はあるのだろうか。

 めちゃくちゃ悩んでしまう。

「荷物、まとまったよ」

「こっちもオッケーよ」

 と、そこに出立の準備を終えたアンドレとマリナがやって来た。

 外での生活に慣れている二人に俺の分の荷物の準備も託していたから、呼びに来てくれたのだ。

「おう。村のみんなに挨拶はしたのか」

 俺が訊くと

「他の村のみんなも逃げるからいいのよ。国王軍が、それも精鋭のレンジャー部隊がここまで来たんだもの。安心できないでしょ」

 マリナは馬鹿ねと肩を竦めた。

「ま、マジで」

「マジよ。みんな国の目を逃れて生きている連中だもの。まあ、ここは快適だったけど、もともと十年以上定住している人もいないし、解散! って感じ」

「はあ」

 逞しいな、異能力者。俺は十年以上の定住者がいないという事実にびっくりしてしまう。

「王子様も自分を殺そうとした奴らを丁寧に葬っている場合じゃないよ」

 アンドレは適当でいいんだよと、半分以上埋もれた死体を見て言う。

「まあ、うん。そうだけど」

 俺が死んでいれば、こんな任務を受けることもなく、こんな場所で無駄死にすることもなかった連中だ。出来ることはしてやりたいと思ってしまう。

「優しすぎだよ。これからドンパチやるのに」

「いや、ドンパチはしないだろう」

「ふうん」

 俺は逃げるだけだよという態度だが、アンドレは何を言っているのという感じで見てくる。横にいるマリナも、大丈夫かという目で見てくるが、廃嫡されて居場所のない俺は逃げる以外にすることはない。

「さあ、行こう。ともかく山の中に逃げて落ち着ける場所を探そう」

 シャルルに対して反撃するべきじゃないか。そんな二人の視線から逃れるように、俺は先にその場を離れたのだった。


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