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第51話 VS宰相

「どうするの?」

「さすがに夢見る廃人にするわけにはいかなくなったよ。こいつにはちゃんと処罰が必要だ」

 王宮に戻ることが確約してしまった以上、俺は次期国王としてシャルルに沙汰を下さなければならないのだ。曖昧なことは出来ない。

「じゃあ」

「シュリ。惑わす術ってのは、記憶を弄ることも可能ってことか?」

 俺の確認に、シュリは躊躇うことなく頷く。

 シュリの異能は幻覚を見せて惑わし、その間に情報や物を盗み取るというものだ。その間の記憶もまた、すり替える事が出来る。

「どういう記憶にしたいの?」

 だからシュリはそう問うだけだ。

「俺に殺されかけて、三週間ほど寝ていたことにしてほしい。その間に、あの城館に運ばれた、ということにしてほしいんだ」

「あっ」

 それは俺が辿った道と同じように見せかけろということだ。ただし、今回は完全に幽閉することを決定した上で、ということになる。

「俺にはこいつに刃を突き立てることは出来ない。廃嫡騒動を起こされて、国を乱した責任は俺にもある。しかし、これだけのことを起こした奴を、なんのお咎めもなしにすることはできない。だから、こいつの命を救う方法は、そういった異能に頼るものしかない。そして、こいつはあの城館に生涯閉じ込める。見張りを付けてな。それしかないんだ」

 俺はまだ控えているパウロに目を向けた。それに、パウロは仕方ないですねという顔をしたものの

「そちらに関しても、手配を終わらせておきます」

 と頷いた。

「シモン」

 そこで俺がシモンに目を向けると

「任せな。シャルルの面倒は俺が見てやるよ」

 とすぐに理解してくれる。

「俺もな。マリナが王宮に行っちまうんだったら、残ってシモンと暮らすしかないし」

 ピーターも任せてよと親指を立てる。それに俺は驚いたものの

「そうか。頼む」

 いつまでもマリナの庇護下にいたくないというピーターの思いを尊重することにした。

「じゃあ、ここから忙しくなるぞ」

 俺は気持ちを切り替えるようにぱんっと手を叩く。それにキキが私はと訊いた。何かやることはないのかというわけだ。

「ああ、そうだった。キキはどうする? 諜報活動をするのに人手が欲しいから、王宮で採用したいんだけど」

 そう俺が言うと

「任せなさい。今回のことで、私、自分の能力の使い方がよく解った気がするから」

 と親指を立てる。

「では、凱旋するぞ。そして」

 ラオドールとの決着を付けるのだ。俺はぐっと拳を握り、まだ遠い王宮の方角を見つめていた。




「ば、馬鹿な」

「馬鹿な、では済まないよな、ラオドール」

 どんっと積まれた書類を前に、まだ言い訳しようとするラオドールを前に、王太子としての衣服に着替えた俺はにやっと笑う。

 ここまでの長い道のりを思うと、もっと演出を派手にしても良かったかもしれないが、俺はこれで十分だと思っていた。

「こんなにも証拠があるのに、お前は王宮神官長に騙されただけだと言うつもりか?」

 どんどんっと書類の束を叩きながら、俺もこんなに出てくるとは思っていなかったけどなと内心呆れている。

 さて、なぜこういう場面になったのかというと、時間は二日ほど戻ることになる。




「不正の証拠がびっくりするくらいあるんだよね」

「え?」

 凱旋前日、俺は王宮前にある宿場町の、それなりに高級な宿屋の中で、パウロが持ってきてくれた服に着替えながら、アンドレの報告を聞いていた。が、びっくりするくらいあるとはどういうことか。

「それも直接解らないようにあれこれ偽装された形で見つかったんだよね。どうする?」

 で、アンドレは騎士団としてのマナーを忘れ、旅をしていた頃の調子でそう訊いてくれる。どうやら、それを片付けなければ王宮には戻れないということらしい。

「最後の課題ってところか」

「うん。ああ、陛下が一応、怪しい一覧は作ってくれていたけど」

「な、何だよ。怪しい一覧って」

 着替えを途中で放り出し、俺はその一覧が書かれた羊皮紙を受け取る。そして、唖然とした。

「ああ。なるほど」

「ね、大変でしょ」

「どうしたの? 明日には王宮に戻るんじゃないの?」

 と、そこに言い合う声を聞きつけたマリナがやって来た。そのマリナにも、怪しい一覧を見せてやる。

「これは、言い逃れされそうな感じね」

 で、マリナもラオドールって馬鹿じゃないのねと顔を顰める。

「馬鹿じゃないよ。宰相なんだから。政治手腕という点では確かだ。少々身に過ぎた野心を持っているってだけでな」

 俺はこのまま戻っても円満解決はしないぞと顎を擦る。

 せっかく髪も髭も整え、服もボロから王族らしいものに着替えたというのに、最後の戻るための鍵がまだない状態だと気づいたのだ。これでは廃嫡を取り消させることが出来ない。

 そう、すでに廃嫡騒動はなかったものとして扱われていようと、最終的に俺がきっちりと決着を付けないことには、廃嫡決定そのものを取り消すことが出来ない。その最終関門がラオドールの不正だ。

 俺がきっちりとそれを暴き、廃嫡はラオドールが自分の利益に起こしたことだと、王宮内部、そして外国に向けて発信する。これが最も重要なことなのである。


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